コラムバックナンバー

マーケティングの現場で、BigQueryに挑戦する非エンジニアの方が、少しずつ増えています。
BigQueryには優れた点がいくつもあります。
エクセルでは難しい大量のデータをフリーズせずに数秒で処理できてしまう。GA4のデータを保持期限を超えてローデータで蓄積できる。広告やCRMのデータを統合できる。よく語られるのは、こうしたメリットです。
でも今回お伝えしたいのは、機能の話ではありません。BigQueryを使いはじめると「マーケターとデータの関係」が根本から変わる、という話です。

とはいえ「難しそう」「費用が心配」と感じる方も多いでしょう。この不安は「心理面」と「経済面」の2つの壁に集約されます。そしてどちらの壁も、実はもう崩れはじめています。その話は後半でするとして、まずは「データとの関係が変わる」という話から始めます。

他人のレポートから、自分の手元のデータへ

GA4のレポート画面で分析をしているときと、同じGA4のデータをBigQuery上で分析しているときとでは、分析する人の意識が自ずと変わってくる、と私は考えています。

GA4のレポート画面のきれいなグラフを眺めている間、私たちは他人が作った完成品のレポートを受け取る側にいます。
データをうまく自分ごとにできず、改善の施策が生まれにくかったのは、「他人が用意した既製品」を眺めるだけだったからかもしれません。

データがBigQueryに、つまり自分の手元に降りてきた瞬間、主客が逆転します。「このWeb行動ログと、あの店舗イベントの記録や会員データを掛け合わせたらどうなる?」という発想が、自然と湧いてきます。データをどう組み合わせ、何を確かめるかを決めるのは、レポートの提供者ではなく自分自身になるのです。

データを貯めることは、AIへの「スキル伝授」

GeminiやChatGPTでデータ分析の質問をして、もっともらしいけれど自社では使えない回答にがっかりした経験はないでしょうか。
生成AIがどれだけ優秀になっても、自社ならではのデータがなければ、本当に役に立つインサイトや予測は生まれてこないのです。

最近は「スキル」という言葉が盛んに使われていますが、ClaudeやNotebookLMに自社の経験や資料をアップロードした瞬間、回答の解像度が一変した。そんな体験をした方も多いはずです。
AIの力を引き出すのは一般知識ではなく、あなたの会社の独自の文脈です。
BigQueryにデータを貯めることは、単なる記録ではありません。未来の相棒であるAIに、自社のビジネスの戦い方を教え込むプレイブック(対応の指針)づくりなのです。

実際の企業に生まれた成果

海外の大手タイヤメーカーは、何百万地点もの気象データと自社のスタッドレスタイヤ販売データをBigQuery上で掛け合わせました。
この規模のデータを日次で継続的に処理するのは、自前のシステムでは現実的ではありません。この分析の結果、スタッドレスタイヤの年間販売の88%は「実際の降雪」ではなく「初雪の予報が出た瞬間」に集中する、という行動の傾向が見つかりました。今では初雪予報が出た地域に、マーケティング活動を自動で集中させているそうです。

国内ではホームセンター大手のカインズの事例があります。同社では需要予測の精度は上がったものの、その後の工程で190万行のデータを複数のファイルに分割し、VLOOKUP関数などを駆使して手作業で処理していました。この作業に2~3日かかっていたそうです。
データをBigQueryに統合してからは、担当者が「この条件でデータを抽出してほしい」とAIエージェントに日本語で指示するだけで、必要なデータを取り出せるようになりました。酒類の発注業務では、トラックの積載量と在庫のバランスを最適化する複雑な計算まで自動化されています。

貯めたデータが厚いほど、AIの予測や提案の精度は上がります。そして生成AIとBigQueryの組み合わせで、こうした分析は特別な企業だけのものではなくなりつつあります。

「難しそう」「費用が心配」の壁を乗り越える方法

冒頭で予告した、2つの壁の話をします。
ひとつめは心理面の壁、「SQLなんて書けない」という不安です。今は日本語で頼めば、生成AIがSQLを代わりに書いてくれます。
ふたつめは経済面の壁、「設定ミスで高額請求が来たら」という不安です。実際には1日の利用量に上限を設定でき、そこで確実に止められます。

この2つの不安を解消して最初の一歩を踏み出す具体的な方法は、木田和廣さん(株式会社プリンシプル)が7月15日(水)開催のa2iセミナーで解説してくれます。日本語の対話だけでAIと進める最新の分析手法と、課金を抑える具体的な設定を、デモを交えて学べます。

「はじめてのBigQuery生成AI分析 ― 費用と難しさへの不安を解消して、まず動かしてみよう」
※7月15日 午後2時まで申込可能
※a2i有料会員には、後日アーカイブが公開されます。

最初の一歩は、今日踏み出せる

ひとつだけ、注意したいことがあります。GA4のBigQueryエクスポートは、設定した日からしかデータが貯まりません。過去に遡ってデータを貯めることは、AIがどれだけ進化してもできないのです。
もし設定がまだであれば、まずはエクスポートを開始してみることをご検討ください。
もし一人で進めるのが不安であれば、事業会社向けのデータ・AI基盤構築を支援するサービスやコンサルティングも増えつつあります。

未来のAI分析の精度は、今日、データを貯めはじめるかどうかで決まります。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

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