活動報告

開催日時 2018/10/18(木)
会場 御茶ノ水 東京

2018年10月18日に、特別セミナー「Google アナリティクスアドバンスド Google アナリティクスとAI」が開催されました。今回のセミナーは株式会社イー・エージェンシー 大西 克明氏が企画しました。セミナーの企画から当日の司会運営まで実施しています

レポート執筆
菊原 晋作(菊原web解析事務所):第2部、第3部  
村松 成樹(株式会社イー・エージェンシー):第1部、スポンサーセッション

オープニング:データのエクスポート機能のおさらい

大内 範行 氏(アナリティクス アソシエーション)

オープニングではa2i代表の大内から、2018年のGoogle アナリティクスの新機能の紹介がありました。
例年に比べて、Google アナリティクスの機能追加は控えめで、大きな機能追加はクロスデバイスレポートと、有料版360のアドバンス分析ぐらいでした。
クロスデバイスレポートは、実際のレポートを見るかぎり、クロスしているデータが少ない状況です。本当にこれが実世界のデータを反映しているかは疑問で、今後十分なデータが取れるまで様子見が必要です。
次はGoogle アナリティクスが持つ、データのエクスポート機能のおさらいです。
最近は、Google アナリティクスからデータを外に出力して、データ統合やAIに活用する事例が増えてきています。レポーティングAPIはバージョンが3から4に上がったことで大幅に機能が拡張されました。
さらにGoogleシートにデータを出力できるアドインも、この新しいバージョンに対応しています。このGoogleシートのアドインを活用することで、プログラミングができない人でも、データ出力機能を活用できます。
2018年Google アナリティクスの進化は控え目でしたが、ひょっとすると大きな進化の夜明け前なのかもしれません。

第一部:どこまでできる?文系のためのAI講座 
~GA・CRM領域でのAI事例と基礎学~

野口 竜司 氏(株式会社イー・エージェンシー)

「文系マーケターこそAI活用の真の司令塔!」だと野口氏は言います。昨今AI活用人材としてデータサイエンティストが注目されていますが、AI活用を担うのはデータサイエンティストだけではありません。AI活用をビジネス視点でプロデュースできるマーケター(文系出身が多い)が不可欠です。そこで期待されるのは、日頃からアクセス解析やCRMなどのデータを取り扱っているデジタルマーケターではないでしょうか。

アクセス解析データは「いちばん早くお客様の反応を知ることができるシグナル」と言えます。その点からも、野口氏はAI活用においてアクセス解析とCRMの統合データ分析を勧めます。人力で分析するには限界を超えつつある統合データですが、AIを基点にすれば、マーケターの理解・判断を待たずにデータの可視化やウェブ接客、広告配信等の最適化など各施策を実行したり、施策をより研ぎ澄ましたりすることができます。

また、漠然としがちなAIの全体像を、人間との比較と機能別に8種類に分類した上で、マーケティングにおける主要なAI活用法として予測モデルの構築を取り上げました。顧客行動の未来予測、時系列による未来予測、異常検知が挙げられます。予測モデルは、顧客体験や売上の向上など攻めの活用にも、コストカットやリスク対策など守りの活用にも効果的です。

さらに、具体的な施策という出口を設けることの重要性を説きます。なぜなら、AI活用といっても、まだまだテスト的にモデルを作って終了ということも多いからです。たとえば顧客行動の予測なら、顧客リストを出力して、メール配信やLINE配信、広告配信、ウェブ接客、パーソナライズなどに落とし込むとよいでしょう。

Google アナリティクスのアクセス解析データとCRMデータによる統合データにもとづいたAI活用の事例もいくつか紹介されました。大手アパレルECでは、1ヶ月後の購入ユーザー予測や、1年後のリピート・離反の予測で精度の高い予測モデルを構築し、顧客行動に先回りした施策を実施しています。

最後に、こうしたAI活用を実現するポイントとして、野口氏は組織づくりの重要性を取り上げました。AI活用には全社的なデータ統合や施策の実施が不可欠となるため、社内横断的なプロジェクトとして取り組むことが可能なチームを立ち上げるのが最善かつ重要になるでしょう。

第二部:Google Analytics と機械学習
– ビジネス ユーザーが知るべき基礎と活用のポイント

古賀 雄高 氏(グーグル合同会社)

続いては、Googleの古賀氏より、ビジネスリーダー向けのAI活用の講演です。
古賀氏は企業のAI活用に対するスタンスとして、「データサイエンティスト的なスキルも重要だが、極論それ自体はアウトソースに頼ることも可能。AI活用を成功させるためには、その全体像を描き、正しくアウトソースできるビジネスリーダー(プロデューサー)が重要である」と語りました。
意外にも非データサイエンティスト・非AIエンジニアという古賀氏らしく、AIを最低限の専門用語で分かり易く、をテーマにお話いただきました。

冒頭は、機械学習とは何かという基礎の内容です。ビジネスユーザーでも最低限覚えるべきポイントに絞って説明がありました。
機械学習は大きく分けて、下記の3つに分類されます(括弧内は活用事例)
① 教師あり学習…機械が参考とするInputとOutputのパターンを予め入れておく方式
 └回帰(トラフィック予測、需要予測、広告予算予測)
 └分類(類似ユーザーターゲティング、コンバージョン見込み)
②教師なし学習
 └クラスタリング(ユーザーセグメント、レコメンド、ソーシャルグラフの分析)
  ※分類と似ているが、分類は教師データを使用するのに対し、こちらは純粋にデータから判断
③強化学習
 └多腕バンディット(ウェブテスト、広告文の自動最適化機能)

さらにセミナー内では、サンプルデータを使いAIを使った予測の工程を実演。
ランダムにプロットされた多数のユーザーが、教師データに従って徐々に●●と●●のグループに自動的に分類されていく様子が公開されました。

後半では、AI活用現場でよくつまずく問題と、それに対してビジネスユーザーがすべきことを解説。
最も頻出する問題が、具体的なビジネス課題を定義できていないケース。例えば「売上を改善したいからAIを活用したい」という相談もあるそうですが、それでは有効なAI活用施策に落とし込めません。
ビジネスユーザーであれば課題の因数分解と原因分析により、「収益低下の主要因である、課金ユーザーの解約を防止する」「新規ユーザーを獲得する」といったレベルまで課題を絞り込むことが求められます。
成功の判断指標についても、「CVRが3%改善した」ではなく「初訪問からNヵ月以内のCVRが+5%した」というレベルまで落とすことで、より正確な検証と健全なPDCAサイクルがまわるといいます。

また、企業のデータ蓄積状況によっても、AI導入が進みにくいケース発生すると古賀氏は言います。例として下記のような状態を挙げました。

  • データがデータになっていない(2018.10.8、2018年10月8)
  • 欠損値 もしくは欠損なのかどうかも分からない(ログインステータス:欠損と非ログインが区別できない)
  • 保有データに偏りがある(若年層獲得が目的だが、保有データは高年齢層が9割)
  • ユーザーIDが一元化されていない(ECと店舗の顧客が一元化できない)
  • そのため、企業はAIで活用することを意識して予めデータを整備しておくことが重要となります。データ粒度やフォーマット、データ形式を整えること、なるべく偏りの少ないデータ収集や偏り状況の把握、目的に対しての教師データが存在していること等は把握しておきましょう。
    Google アナリティクスもAI活用がしやすいデータの1つですが、下記のようなデータ計測ができているか一度チェックしてみてください。

  • 流入元パラメータ設計、タグ付け(utm_source,medium,contentや広告の自動タグ)
  • コンテンツ情報の整理(コンテンツグループ、カスタムディメンション)
  • 外部データとの結合を意識した計測(clientIDの使用、会員ランク等の外部データをカスタムディメンション設定)
  • 最後にAI活用で押さえておくべき、2つのポイントをお話いただきました。

    1つは、AIは万能ではない、ということ。
    例えば機械学習を使ってユーザーを分類するにしても、必ず一定数の不可分(判定できない)ユーザー層が出現します。
    AIを魔法のように勘違いするのではなく、具体的な活用目的と、その中でAIにどこまでの役割を期待するかを冷静に整理することが求められます。

    もう1つは、機械学習の「精度」だけを優先しても、ビジネスの成果は最大化されないという点です。
    データに不可分な数字が残る以上、一定数の取りこぼしや間違いは起こるのが現実です。そして予測精度を優先するほど、取りこぼしの人数は増えていきます。

    ビジネスの観点では、以上を踏まえて全体最適のポイントを探ることが成果最大化のポイントであると締めくくりました。

    スポンサーセッション:最大でCV数10倍を実現したAIアナリストの
    データ分析手法

    垣内 勇威 氏(株式会社WACUL)

    多くの企業にとって、スキルや時間の不足からWebサイトを分析・改善することが難しいという現実もあります。アクセス解析ツールを導入していても放置していたり、分析レポートを作るだけで改善方法がわからなかったり、様々なパターンがあるでしょう。垣内氏が紹介するAIアナリストは、そんな企業のためのクラウドサービスです。

    AIアナリストはGoogle アナリティクスと連携して自動でアクセス解析し、AIによって改善方針を示します。広告やSEOなど流入元からCVに至るフォームまで、サイト内外を網羅した分析が可能です。分析画面も直感的にわかりやすく、改善方針がイメージしにくい場合には簡単な画面案を作成するなどして活用をサポートし、意思決定と実装だけでPDCAサイクルを回せるようにしています。

    WACUL社はもともと成果コミット型のWebコンサルティングを事業としており、その中で「成果の改善にはパターンがあることに気付いた」と垣内氏は言います。改善施策は73%の確率で成果を上げ、そのうち60%で成果の伸び率2倍以上、中には10倍の成果が出た事例もあると言います。事例として、中古品売却サイトで、買取ページの申込のCVRが1.4倍になった実績が紹介されました。

    また、AIアナリストが保有する2万サイト以上のデータと、提案実装後73%で施策が成功したという知見に基づくベンチマークコンサルティングも紹介されました。定義された17種類の勝ちパターンの中から該当するものを選定し、成果に影響するKPIを集計して、類似サイトに劣っているものについて改善提案するというものです。

    事例として、BtoBサイトで、類似サイトと比較してCVRの非常に高いページを発見し、コンテンツを強化することでCV数が1.5倍になった実績が紹介されました。サイト改善をやり尽くした状態で、さらにCV数を増やすため他社比較を実施した結果だそうです。また、BtoCサイトで、同業他社と比較して業界の成功パターンを導き出したことで、納得感が得られて導入されたこともあるそうです。

    第三部:GMP×LTV×機械学習 ~SBI新卒1年目のAIプロジェクト~

    佐藤 市雄 氏(SBIホールディングス株式会社)

    加藤 瑠 氏(SBIホールディングス株式会社)

    第三部は、SBIホールディングスでのAI活用事例のご紹介です。
    前半では、グループ全体のビッグデータ活用をリードしてきた佐藤氏から、AI活用のビジョンとこれまでの過程・知見を発表いただきました。

    まず最初に肝となるビッグデータ活用の組織戦略について、説明がありました。
    ビッグデータ担当は、SBIグループの中心であるSBIホールディングスの社長直下の社長室にあります。主にビッグデータ戦略の立案・遂行をミッションとし、その役割はデータ収集、分析基盤の整備、データの活用の具体案の作成と推進、横断的なツール導入、新規事業など多岐にわたります。

    佐藤氏はビッグデータの活用を推進する組織を具現化させるポイントとして、2点を挙げました。
    1つは意思決定者のすぐ側にいることです。ビッグデータ活用のためには、データ基盤整備やデータ収集ツールの統一などトップダウンでなければ舵を切りづらい経営判断が必要となります。特に200社以上が集まるSBIグループではホールディングスの社長室という位置づけでなければ、このスピードでのビッグデータ活用は実現しなかったと語ります。

    もう1つは、グループ横断でのビッグデータ活用推進です。SBIではグループ各社にビッグデータの担当者を置き、さらに、定期的に各社からホールディングス社長室へ人材を出向させます。また各社の担当者に向けて、分科会(BI、ABテスト、アクセス解析、EFO、機械学習・深層学習)を開催し、具体的な課題解決の支援をしています。現場担当者への啓蒙だけでなく、同時に、グループ各社の代表を集めてグループビッグデータ会議を開くなど、上層部からのデータ活用の浸透も図っています。

    また、データ分析の基盤面としては、SBIグループのプライベートDMPを構築し、データを一か所に蓄積し統合。統合されたデータを分析することでサイト内接客や各プロモーションの最適化を図っています。
    データを収集する際には、広告データについても代理店任せにせず、事業会社側がリードすべきであると佐藤氏は語ります。

    そして今後SBIが見据えるのは、マーケティングの進化です。
    統合されたデータから各ユーザーの将来価値を予測し、パーソナライズした施策を打つことでロイヤル顧客の育成することを目指しています。

    その具体的な施策については、今年の4月に新卒入社された加藤氏にバトンタッチし、LTVベースマーケティングについて、ご説明いただきました。

    LTVベースマーケティングとは、1回の購入だけで費用対効果を判断するのではなく、ユーザーのLTV(生涯顧客価値)を予測し、最大化することを目的とした考え方です。獲得フェーズ・育成フェーズいずれにおいても、LTVが高いと見込まれるリードや顧客に対してコストを優先的に投下することで、全体のLTV上昇を狙います。

    ここではFX事業の事例をご紹介。統合データを使った機械学習でLTV予測モデルを構築し、セグメント化し、セグメントごとに予測LTVに沿った育成施策や、優良顧客類似ユーザーを狙う新規プロモーション施策を展開しています。

    最後に加藤氏から、新卒1年目の目線から組織のデータ活用人材育成に関しての考えを発表いただきました。
    1点目は、インターンシップによる実践教育から採用という流れです。インターンシップを行うメリットとしては、育成時間の確保、人材適正の判断、社員との交流といったことが挙げられます。SBIグループでも短期インターンを導入しており、AIの座学や、プログラミング開発の実践経験を積めるそうです。
    2点目は、データ分析開発を学ぶ環境が挙げられました。システム環境はもちろんのこと、技術指導をしてくれる先輩社員の存在や、新たなことを試せる自由時間の確保等の重要性を説明されました。

    その他、忌憚なきご意見によって和やかな空気の中、セミナーは閉会となりました。

    出演講師

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