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今回はQAアナリティクスの丸山 耕二さんに、年明けの話題の記事についてインタビューしました。
アクセス解析の終焉と新時代の幕開け。2025年のWebデータ活用予測

――丸山さん、今年はじめ、「アクセス解析の終焉」というショッキングな題名の記事をお出しになっていましたね。
X(Twitter)などでも話題でした。題名だけ見て「GA4のサービスが終わる」「GA4のデータが取れなくなる」と受け止めた方もいたようです。

丸山:私はあの記事で、GA4そのものが無くなるとまでは予測していません。
ひと言で言えば「もうみんなアクセス解析を活用しなくなる」、あるいはそこに予算や労力をかけなくなってしまう、とその点を訴えたつもりです。
もし、このままだったらという前提ですが、アクセス解析のビジネスがかなり縮小してしまうのではないか、そういう危機感を記事にしたつもりです。

記事では、こんな文章を太字で書いています。
「多くの企業はアクセス解析自体に価値を感じなくなり、リソースを割くのをやめ、定型レポートで状況を把握するだけになる」

――つまりアクセス解析用のタグは貼っているけど、そのデータをビジネス改善に使わなくなるということでしょうか? それだって深刻な状況じゃないですか?

丸山:はい、私もかなり困った状況だと思っていますし、なんとかしなければと思っています。

今、私がお話をお伺いしているお客様の状況は、だいたい以下の3点に集約されます。
1) ユーザー行動のデータが把握しづらい
2) 深掘り分析がしづらい
3) そのため、アクセス解析のツールや業務に予算と時間をかけられない

一番使われているGoogle アナリティクスは、基本的に無料で使えるサービスです。
無料で活用できたので、これまでは担当者が積極的に活用していました。
ところがGA4になりツールの使い勝手が大きく変わって、さらにプライバシー規制が厳しくなったことで、状況が一気に悪化したように思います。

――もう少し具体的なケースでお話しいただけますか?

丸山:はい、あるお客様は、なかなかアクセスデータが使いこなせない中、GA4のデータを専門家に見てもらいました。
そうすると、どうもいろいろGTMの設定を変えなければいけないとか、BigQeuryでデータ分析をやらないとダメだとか、そういうことを言われます。
じゃあ、追加の予算をかけて、外部のスペシャリストに導入コンサルや分析コンサルを発注するかというと、そこはどうしても躊躇して、前に進めなくなっています。
特にCookieバナーを入れたお客様はGA4の数値が激減しています。GTMの同意モードを設定して推測値を出す手段もありますが、果たして追加予算を投じて、結果につながるデータが得られるのだろうか?
どうしてもそんな疑心暗鬼が消えないのです。
本当なら自分たちで継続的に取り組んでいきたいのですが、その自信が持てない、という声を聞きます。

――確かに昔よりハードルが上がっています

丸山:アクセス解析ビジネスは、これから、二極化が進むと予測しています。
二極化の一方はちゃんとできているお客様です。予算と人を投じて、本当にデータが使えるようにしています。このタイプのお客様はツールよりもデータを中心に考えています。
二極化のもう片方は、無料のGA4ありきでなんとかしようともがいて、でも思った成果が得られずあきらめてしまうお客様です。このタイプのお客様相手のアクセス解析ビジネスは、予算が縮小していき、長期的にはなくなるような危ない状況にあると思っています。

――特に海外のアクセスデータがある場合、より深刻な状況なのですね?

丸山:はい、海外からのアクセスを想定しているお客様が一番深刻です。
欧米のプライバシー保護規制は、日本よりずっと厳しいです。GDPRなどの影響で、匿名アクセスデータが全然取れなくなってしまっています。
キャンペーンなどで、何か施策に取り組んでも、その効果を計測しようがない。これではどうしようもない、という状況です。

日本でも、今後プライバシー保護規則は、欧米並みに厳しくなっていくと、多くの方が予想しています。
ツールが今の状況のままそんな事態になったら、本当にアクセス解析はどうしようもない状態になってしまうと思います。誰もここに予算と労力を投じなくなる。

――丸山さんは「QA ZEROを通じて、アクセス解析難民を救いたい」とおっしゃってましたね

丸山:はい、QA ZEROで一番真剣なお問い合わせは、GDPRの影響でデータが取れなくなったお客様です。
QAアナリティクスは、「Cookieレス」で匿名ユーザーが計測できますので、そこはとても喜んでいただいています。

それともう一つは、国内国外関係なく、分析から改善までの手間が大変で、難民化しているケースを救いたいと思っています。
この分析から改善までのコストを思いっきり低くして、改善までもっともっと楽にたどり着けるようにしたいと思っています。

今、QA ZEROで私が取り組んでいるのは、昨年リリースしたAIエージェント「Brains」の拡張です。これは多くの人の叡智と、AI、特に生成系AIの活用を組み合わせることを目的にしています。
お客様がいろいろ設定の手間や分析の手間を投じなくても、改善策を得られるようにしたい。そう思っています。

――つまり、アクセス解析ビジネスを終わらせたくないと

丸山:アクセス解析が好きな人って、実は今までも不遇な思いをしていたと思うのです。あまり投資してもらえず、隠れたデータ分析の苦労も認めてもらえずに格闘してきた。

誤解を恐れずにいえば、GA4が高機能なのに無料だったせいで生まれた状況だとも言えるのです。
比喩で言うと、各サイトオーナーの手元にGA4という宝の地図っぽいものがあるような状況で、オーナー側も「簡単に安く読み解いてもらえるはず」と、期待しています。
しかし、その期待値が崩れ、「思っていた宝の地図はなかった」という反応です。投資する前から、投資する発想がない状況になっています。

実はアクセス解析に本気で取り組んできた人の本音は、「ツールはなんでもよいが、データ活用には投資の価値がある」だと思うのです。

私はここが正念場だと思っていますし、むしろ今はチャンスだと考えています。
これからのアクセス解析の二極化時代に、あらためてデータの価値に気づいてほしい。
「GA4は宝の地図ではなかった。でもデータ活用には投資の価値がある」
現状の限られたデータ環境でもビジネス改善ができると、そんな気づきが得られるように、QA ZEROの進化に取り組んでいます。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

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