コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2026年5月20日号より
GoogleがAIに選ばれるコンテンツのベストプラクティスを公開しました。
「ついにGoogleが公式な指針を出したのか!」と、生成AI最適化(GEO)への注目が改めて高まっています。
しかし、このベストプラクティスを読み解くと、Googleの言いたいことは極めてシンプルです。
雑に言えば、「生成AIのためだけの小手先の施策はやめてね」という真っ当な立場表明です。
SEOには、技術的なサイト基盤、コンテンツ、リンク、そしてサイト外の評判という階層があります。SEOやGEOの注目は、真ん中のコンテンツやリンクの議論に集中しがちです。
このコラムでは、あえてGoogleのベストプラクティスから読み解く「一番下」と「一番上」、SEOから一番遠い両端の2点にフォーカスを当ててみたいと考えています。
サイトの技術基盤と、サイト外でのブランド評判、いわば「キバン」と「ヒョーバン」です。
ひとつ目は、技術基盤について、以下の一節を引用します。
To maximize your site’s visibility in generative AI search features, ensure your content is crawlable.
「生成AI検索機能においてサイトの露出を最大化するには、コンテンツがクロール可能であることを確認してください」
“Optimizing your website for generative AI features on Google Search” Google
ふたつ目は、サイト外の評判についての一節です。
Just like the rest of Google Search, our generative AI features can show what’s being said about products and services across the web, including in blogs, videos, and forum discussions.
「Google検索の他の機能と同様、当社の生成AI機能では、ブログ、動画、フォーラムの議論など、ウェブ上のあらゆる場所で商品やサービスについてどのような言及がなされているかを表示することができます」
“Optimizing your website for generative AI features on Google Search” Google
それぞれ、順番に見ていきます。
検索エンジンのクローラーに認識されなければなりません。これはSEOの基本中の基本です。
それでもSEOというと、コンテンツとリンクに目が行き、足元のサイト基盤は意外と置き去りになります。基本のキにもかかわらず、まだまだ多くのサイトで目が行き届いていません。
生成AI時代になって、このクローラー、そしてページを読み取るレンダリングの問題はより深刻になっています。ここでは便宜的に、レンダリングまで含めた広い意味で「クローラー」と呼びます。
私たちが意識すべきクローラーは、もはやGoogleだけではありません。しかも、ChatGPTや他の生成AIのクローラーは、Googleと比べるとかなり「劣化版」なのです。たとえばGoogleのクローラーは、JavaScriptによってレンダリングされる要素も読み取ることができますが、他のクローラーは必ずしもそうではありません。SPAなどクライアントサイドでレンダリングされる情報を、ChatGPTは認識できないはずです。
最初のページが読めない上に、そこから辿っていく下位ページの情報も取得できないのです。
劣化版のクローラーを前提に、よりシンプルなサイトとページ構造を心がけることが必要です。生成AI時代は、足元の「キバン」に考え直すべきポイントがあります。
次の話は、もう少し込み入っていて、私の解釈も入ります。
Googleのベストプラクティスでは、このサイト外の評判について、「やってはいけないAI最適化」のリストのひとつとして触れています。Googleが評判を参照しているからこそ、「偽の評判を広めてはいけない」という文脈で警告しているのです。
ここで文中に明記された「商品とサービス」に注目します。
商品やサービス、店名、人名、スポット名など、市場で選ばれてほしい固有名に対して、Googleに限らず生成AIは外部の評判(メンション)を重視しています。
サイトの外側でブランドの良い評判を生み出すこと。これもSEOの一部だと言えますが、一般にはSEOチーム以外、ソーシャル、広告、PRのチームが担当する領域です。
生成AIは検索エンジンではなく、アンサーエンジンだと、初期の頃に言われました。「検索」する時のユーザー行動と、AIに「アンサー」を求める時のユーザー行動は、背景にある心理も、使う場面も違ってきます。
若い世代が商品を選ぶ時、ビジネスでサービスを選ぶ時、人々は必ずしもGoogleやGeminiを使うわけではありません。
日本では、若い世代を中心にChatGPTを「チャッピー」と呼ぶような動きもあります。ニュースが枕ことばのように「ChatGPTなどの生成AI」と繰り返す中、ユーザーが実際にアンサーを求めるシーンでは、どのプラットフォームが選ばれているのでしょうか。この視点は見逃せないポイントです。
Googleの検索シェアが落ちていない、ChatGPTのシェアはまだGoogleに比べて小さい、と大きな調査数値だけで捉えるわけにはいきません。あなたが選ばれる側の商品やサービスを提供しているなら、生成AIがどうブランドを選ぶかを、よく知っておく必要があります。
「偽の評判を作ったり広めたりしてはいけません」
Googleの言っていることはもっともです。でも、偽でない評判を生成AIに知ってもらうにはどうすれば良いのでしょうか?
ここで興味深いのは、生成AIの回答の大規模調査結果です。
米SparkToro社が公開した大規模調査によれば、生成AIの回答は一貫していません。生成AIに同じ質問を繰り返しても、推薦される商品やサービスはばらつくことが多いというのです。
この一貫性のなさは、生成AIが進化の途上だという側面と、生成AIの仕組みが「確率」で動いている側面と、その両方が作用していると考えています。
ところが、同じ調査ではもうひとつ興味深い結果が報告されています。同じ質問を100回繰り返した時、揺らぎはあっても、高い頻度で繰り返し登場するブランドが確かに存在するというのです。
これは、ブランド想起の話そのものです。100人に「好きなカレーは?」と聞いて挙がる名前は、結局のところ上位の2つ、3つのブランドに集中します。市場で実際に選ばれているのも、同じ上位ブランドです。
より多くの人があなたのブランドを良いイメージで想起すれば、ネット上でもより多く言及されるはずです。
「次に買う洗濯機は何がいい?」と生成AIに聞いた時、7割、8割の確率で登場するブランドになるには、何をすれば良いのでしょうか?
それは、より多くの人に知ってもらい、良いイメージで想起してもらうことではないでしょうか。
これはもはやSEOの施策ではありません。広告、動画、ソーシャル、PRなど、あらゆる媒体を駆使してブランド認知を印象づける仕事 ── つまり、純粋なマーケティングです。
あらためて整理します。私がここで取り上げたいのは、階層の「一番下」のクロール基盤と、「一番上」のサイト外評判という両端の話です。
生成AI最適化の議論は、その間のコンテンツやリンクに集中しがちです。けれども、そのコンテンツを読み取ってもらうための基盤を整備し、サイトの外側では多くの人に知ってもらい言及してもらうことが大切です。
生成AI時代になって、このふたつの重要性がより高まっている、というのが私の見方です。
そして「キバン」「ヒョーバン」のどちらも、もはやSEOチームだけで完結する仕事ではありません。下はサイト全体の設計やエンジニアリングと密接に絡みますし、上はPR、ソーシャル、広告、つまり王道のマーケティング活動そのものです。
GoogleのAI最適化ベストプラクティスの全体的なメッセージは、「結局、SEOの基本をしっかりやっていれば良い」というところでしょうか。
それは正しいでしょう。
ただ、その「基本」を丁寧に読み解いて広げて見ると、生成AI時代の本当の戦場はSEOの真ん中ではなく、むしろ両端「キバン」と「ヒョーバン」にあるのではないかと私は考えます。
生成AIに「8割の確率で選ばれる商品やサービス、ブランド」になるには?
こうした視点で捉え直すと、王道マーケティングの方へ思考を広げるきっかけになるのではないでしょうか。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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