コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2024年4月10日号より
前回は「広告予算再考」と題して「どんぶり勘定のススメ」について書きました。ただ、状況が悪化しているとはいえ、それでも広告は各プラットフォームにとって要の事業です。AIを駆使してある程度の数値を出してくれます。
【コラム】広告予算再考 どんぶり勘定と顧客理解による深化
問題はサイト改善です。
国産解析ツール QAアナリティクスを開発する株式会社ウェブジョブズ 丸山 耕二さんが、「データ分析難民」という言葉を使いました。
GA4の利用は広がっていますが、様々な理由から、サイト改善には不向きです。詳しい説明は割愛しますが、私も何度かトライして、ほぼ討ち死にしています。
【コラム】データ分析難民を救いたい。日本製のアクセス解析ツールを作り続ける理由
生成系AIの方も、残念ながらはかばかしい成果は得られていません。
GA4のデータを(加工した上で)ChatGPTに喰わせ、分析を試みていますが、さすがにサイト改善まで行き着く分析結果は得られず、こちらも討ち死にしています。
仮に生成系AIが異常にかしこくなり、かつGA4などに組み込まれたとしても、最後のサイト改善への取り組みは、人間が中心になって遂行する必要があります。
では、サイト改善に取り組むには、どうしたらよいでしょうか?
チーム作りという視点で、改めてこのプロセスを考えてみたいと思います。
アプリがビジネスの中心の会社であれば、専任チームを組むこともできます。日々改善を繰り返すグロースハックと呼ばれるチームですね。
ただ、多くの会社で専任チームは無理筋です。
サイト改善の頻度はそこまで高くないでしょう。私の関わったお客様の場合、大幅なサイト改善に取り組むのは、数年に一回というサイクルでした。
制作会社に丸投げする安易な選択を取る会社もあるでしょうが、それはお勧めできません。デジタルの接点は、もうどんな事業体でも接客の中心です。
ユーザーにどんな経験価値を提供するのか、その判断は事業側が持つ必要があります。
時限的なプロジェクトですから、サイト改善のために、社外と社内のスキルを結集した効果的なタスクチームを組む必要があります。
このリーダーを誰がつとめるか、タスクチームの布陣がうまく組めるか、そこがまさに本丸だと考えます。
答えは企業ごとに違います。正解のない世界ですが、最近の私の経験も踏まえ、こんなチームが組めるとうまくいくかも、というのを考えてみました。
A) 事業責任を持つリーダー
B) ユーザーの声を知る人(カスタマーサポートなど)
C) 商品サービスや販売営業に詳しい人
D) データ分析やユーザーテストができる人
E) UXのモックアップを作る人
Dのデータ分析人材は、ヒートマップやレコーディングツールなど、ユーザー行動を可視化できるツールを時間をかけて見てくれる人材です。
EのUXのモックアップを作る人は、本格的なデザイナーでなくて大丈夫です。部品をうまく並べながら、ワイヤーフレームを繰り返し作り直してくれる人です。
最低でもAからCまでは社内メンバーで手配します。
理想を言えば、DやEまで社内人材で行えれば言うことはありません。
DやEが社外だとしても、普段から接点がある会社の事業を理解している人が参加してもらえれば、よりうまく回るでしょう。
このチームが核となって試行錯誤をしながらモックアップを作成できたら、そこからはデザインやフロントエンド開発を行う制作会社にスムーズに発注できます。
そして、こうしたチームが、Zoomではなく、会議室に車座になってリアルに集まり、話し合える環境は重要です。
全部の会議を車座で行う必要はありません。ただ、コアな1−2回のミーティングを車座で行うことを強くお勧めします。昭和な発想かもしれませんが、実際にやってみると、出てくるプロトタイプの質が違ってきます。
注意点としてリーダーの資質があります。
ユーザー理解が乏しく、声の大きいリーダーだと、何もかもがうまくいきません。
リーダーがユーザー中心の発想に立ち、他のメンバーと円滑にコミュニケーションできる聞く力を備えていることがとても重要です。
アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
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