コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2023年6月14日号より
今回のコラムはコンテンツの分散化とそれに伴うデータ戦略についてです。
これは前々回の私のコラム「アナリティクスの新時代:データ分析の課題にどう取り組むべきか?」と、前回のコラム「BardとGPTに聞くAI時代のSEO 長尾キーワードが鍵?」の続編です。
そのコラムで、今後はデータがつながらない世界が前提になること、生成AIを搭載した検索エンジンにゼロクリックが増える見通しを書きました。
1. コンテンツ分散化の潮流
LLMなど生成系AIの進化はGoogleやBingなど検索エンジンで、ゼロクリック検索を増やす、という懸念について前回のコラムで書きました。
SNSにも同様の傾向が見られます。長文や動画を掲載できるようになり、TwitterならTwitterのプラットフォーム内でユーザー行動が完結するゼロクリックのトレンドです。
同時に、消費者の情報取得行動が分散し、多様化しています。
消費者はあなたのサイトを訪れる前に、多様なタッチポイントを駆使して情報収集を終えてしまい、買い物や選択の決断を下しています。
企業の側もこうしたトレンドに対応して、複数のプラットフォームに自社の情報やコンテンツを展開する必要が増しています。
自社ドメインのコンテンツだけにこだわっていると、結果的にユーザーとの接点やエンゲージメントを失うことになってしまいます。
自社サイトのコンテンツにまったく価値がない、という極端な話をするつもりはありません。ただ、自社ドメインでコンテンツを用意さえすれば来訪者が増える、という単純な世界は終わりを迎えつつあるということです。
2. GA4″だけ”だと世界が描けない
やっかいなことに、この分散したコンテンツ世界において、データは見えにくく、接点とコンバージョンはつながりません。
そもそもソーシャル内の行動はGAで計測できませんし、直接クリックの来訪が減少すれば、GA4の参照元にも出てきません。
GA4など自社サイトの解析ツールだけでは、世界が描けなくなっています。データ解析基盤のあり方も、分散型に合わせていく必要があるのです。
3. 分散化時代のあるべきデータ基盤
分散するコンテンツに適合したデータ分析基盤が必要になっています。
ただ、これはなかなかにやっかいです。
まず、各プラットフォームごとのデータを活用し、個々のコンテンツのパフォーマンスを評価し、必要な改善に結びつける活動が必要です。ただ、こうした個別最適化のアプローチだけでは「木を見て森を見ず」になってしまいます。
そこで分散しているユーザーデータを集約し、全体を俯瞰し、そのトレンドを見極めるアプローチについても検討する必要があります。
4. 木と森を見る戦略
企業にとって重要なキャンペーンやメッセージは、個別最適化しつつも、適切なタイミングで相互に拡散するなど、全体を見たアプローチも必要です。
また、CVがつながらなくても相関が見えれば、ある程度ビジネスと連動した傾向が見えるかもしれません。
ソーシャルのすべてに対応する余裕がない場合、どこに集中して注力すべきかが見極められる。あるいはソーシャルごとの反応の特性の違いがつかめれば、それぞれに対応した振り分けができるかもしれません。そうした見極めは全体最適化に必要です。
木を見て最適化しつつ、森全体も見極める。全体俯瞰のトレンドデータも、同時に掴む必要があります。
5. 一筋縄ではいかないデータ統合
ただ、たとえばTwitterとTikTokでは、同じリーチやインプレッションでも、その計測方法やアルゴリズムは変わってきます。TikTokの再生数は、かなりインフレ傾向が高いので、単純な「量」の比較に意味はありません。
また、CVや売上とつながらなければ、数値を俯瞰できても、「これだ」というアクションは起こせません。
個別最適化を積み重ねたかなり先に、長期的なトレンドの変化の傾斜がかすかに見れる程度かもしれません。
分散化したデータ分析のあるべき姿は、まだ「こうすべき」と言えるような状態ではありません。
6. 木を見て森を見るデータ基盤
それでも、このコンテンツ分散化への対応は、今後重要になっていくでしょう。
企業は各プラットフォームでのプレゼンスを強化し、より広範囲なユーザーにアプローチすることで、ブランドの認知度を向上させ、ユーザーとの関係を深めることが可能になります。自社サイトを訪問する前の決断に、関与できるようになることはとても重要です。
つながらないユーザー行動データを、個別に最適化しつつ、全体トレンドも俯瞰する。そうしたデータ基盤のアプローチ、つまり木と森を両方見れるデータ基盤の整備について、今後じっくりと試行錯誤していく必要があります。
アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
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