コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2025年9月10日号より
少し前、空気清浄機を買うのに、生成AIに頼ってみました。
おすすめ候補をリストアップしてもらい、機能やスペックを比較し、こだわっているポイントに合った商品を選んでくれて、価格比較もやってくれます。
最近はアマゾンのレビューも当てにならない印象があり、意外にも快適でした。
ただ、このプロセスで、Google検索や広告をクリックしなかったわけではありません。生成AIと検索エンジンを行き来しながら、アマゾンやヨドバシなど買い慣れたところで買うという流れでした。
まだ、生成AIに全幅の信頼はおけません。今回はあまり思い入れのない商品だったので、入り口の候補出しに使った感じです。
いずれにしろ、さらに詳しく確認するため、製品名やメーカー名でGoogle検索やアマゾンの検索を使います。指名検索は、慣れている分楽なのです。
これは小さな例ですが、「商品選びの入り口に生成AIが関わってくる」というのは、避けられない流れであり、意外に大事件なのではないかと考えています。
そして、純粋な意味でのGoogle検索は、製品名やメーカー名など、少し後のファネルで指名検索で使われ、その役割が変わっていく、とも考えました。
データで補足してみましょう。
米国では、40%の消費者がオンラインショッピングでAIを利用しているという調査結果も出ています。
かと言ってGoogle検索が減る兆候は見られません。
Google CEOのピチャイは、具体的な数値は示さないものの、生成AI(AI Overview)の利用で、Googleの検索面における全体的なクエリは増加していると語っています。
こうしたデータは、生成AIが使われている一方で、Google検索の利用も活発だということを示しています。
指名検索が増えている、という点も確認してみます。
Google検索全体の半分近くが、特定のブランド名や製品名を含む「指名検索」である、という調査データも出ています。おそらく生成AIの前から、この偏り傾向は強くなっていて、生成AIがさらに加速させる、という流れでしょう。
ずっと前から商品によっては、インスタグラムやティックトックなど、検索以外で意思決定をするユーザーは増えています。
さらにここに生成AIという、信頼できる(かもしれない)パートナーが出てきました。
Google検索は、かつて「ロングテール」という言葉を生みました。個人的には好きなマーケティング用語でしたが、今やロングテールは風前の灯火なのでしょう。
上位1万語が検索全体の46%、半分近くを占めていて、キーワードの74%は月に10回も検索されていません。ブランドキーワードに偏る傾向が見えます。
Googleは、AI Overviewのリンクをクリックしたトラフィックは、滞在時間が長い質の高いものだと主張しています。
それはとりも直さず、事前の下調べが終わっているからとも言えます。
私たちがよく知る検索が、新たな出会いと発見の扉になっていた時代は終わりつつあります。マーケティングファネルの最初にいたはずの検索が、いつの間にか列の後ろ、すでに買うものが決まった最後に利用されるツールになるのでしょう。
純粋な検索の「最初の出会い」や「比較検討」のトラフィックは減っています。新たなお客様との出会いを検索に求めるのは、どんどん難しくなっているのです。
検索にAI Overviewを出したGoogle は、AIモードをいよいよ日本でもリリースするようです。あらためて、私の空気清浄機の買い物を振り返ると、生成AIと検索を行き来していた行動が、つなぎめなくまとまるなら、それは賢い戦略だと感じます。
一方で、ショッピングのユーザー行動は、サイト訪問者の参照元データで判断するのが、難しい時代になります。
サイトによっては、参照元としてのGoogleからのコンバージョンは減らず、むしろコンバージョン率は高くなるかもしれません。でも「新しいユーザーとの出会い」は、そのトラフィックにはありません。改善のヒントになる「分析しがいのある新規ユーザーの行動」も限られてきます。
だって、すでに比較検討段階は、生成AIと話がついているのですから。
参照元Googleは、もう私たちがよく知るGoogleではないのです。これから、その役割と意味をどんどん変えていきます。
ラストクリックの分析からヒントを得るのが難しくなりますが、私はデータ分析の新しいチャレンジだと考えています。
▽Almost Half of Google Searches Are Branded. Here’s Why That Matters (ahrefs blog 2025年5月30日)
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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