コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2024年9月4日号より
皆さんは、最近、検索をどんな感じで使っていますか?
私はGoogleをメインで使いつつ、PerplexityとClaudeという生成系AIを並行して使っています。使い分けをすることもあれば、同じ検索を両方で実行することもあります。
Perplexityは自らを、次の検索、対話型のアンサーエンジンだと宣言しています。探索型の調査には、比較的しっくりした答えを出してくれます。一方で、検索を文章で入れるのは、キーワードを入れるより面倒ですね。
Google検索もAI OverviewというGemini AIと合体させたUIをリリースしはじめていますし、ChatGPTも検索サービスをリリースすると宣言していますので、今年来年にかけてサーチの世界がまた揺れ動きそうです。
ただ、その中でひとつ確かなことは、検索結果を出す裏側が完全にAI-Poweredになったことです。私は検索の裏側がAIで制御されるAI-Poweredの世界を、かなりポジティブに捉えています。
振り返れば、日本のSEOの20年以上の歴史はつい最近まで、外部リンクのスパムや、小手先のテクニックが横行していました。Googleのアップデートと追いかけっこをしながら、テクニックを求めてきた時代が長く続きました。
しかし、今は小手先のテクニックは意味がなくなっています。
Googleの判断は、キーワードという小さな単位では行われなくなり、より広く検索するユーザーの意図を意識した結果になっています。よりコンテンツを重視し、次にUXが重視されるようになり、今は信頼を積み重ねる地道な努力が必要になってきています。一方で、被リンクの価値は、依然あるものの、相対的にかなり下がっています。
最近では検索のエリアによってはPDFが直接リンクされる結果も増え、JavaScriptを駆使したサイトも、かなりきちんとレンダリングされるようになってきました。技術面でも、検索エンジンだけに特化した施策は少なくなっています。
結局、AI-Poweredが進んだことで、小手先のテクニックやユーザーを騙すやり方は姿を消し、本質的な部分が残ったと言えるのではないでしょうか?
私たちの取り組みは、第一にユーザー理解を深めること。サイトやカテゴリの設計をきちんと見直し、ユーザーの意図を汲み取った品質の高いコンテンツを揃え、経験や信頼性などを高める努力を積み重ねることになります。
次にリスティング、検索広告の世界です。
こちらも、GoogleはP-MAXというAIで判断する仕組みに移行を進めています。
コンバージョンという目標にむかって、検索だけでなくマップ、ディスプレイ、YouTube、DiscoverなどGoogleが持つユーザーとの接点のシグナルを基に、リアルタイムで最適化しています。
私はこのP-MAXを「AIのどんぶり勘定」と呼んでいます。
AIのどんぶり勘定の世界が進化していくと、広告運用者の仕事はなくなってしまうのでしょうか? 普通に考えれば、車の自動運転のように、広告運用者のするべきことがどんどん減っていくように思えるかもしれません。
しかし、私はまったく逆の発想に立っています。どんぶり勘定の世界が進化するほど、より広告運用者のやることが増えていくだろうと。
ストレートな言い方をすれば、広告運用者の仕事は、どんぶり勘定をするAIに、できる限り良質なデータの餌を与えることになると考えています。
具体的には、目標の設定をビジネスとユーザーを見てきちんと見直し、広告のクリエイティブの品質を上げ、同時にランディングページのUXや品質を向上させていきます。Merchant Centerなどフィードを活用する場合は、そのフィードのチューニングを行っていきます。
良質な餌をどんどんAIに与えることで、どんぶり勘定の精度が大きく影響され、結果がよくなっていくはずです。
「餌を与える」などと悪い表現を使いましたが、どれもユーザーを見据えた本質的なことばかりです。
SEOも広告運用も、AI-Poweredが進むと、より本質的な仕事になっていく。
この世界に長く関わり、一貫してユーザー中心に発想するべきだと信じて仕事をしてきました。その点で、私はAI-Poweredの世界に、やや楽観的過ぎるかもしれません。現場はそんなにうまくいかないという反論もあるでしょう。
それでも、AIが進化すればするほど、より本質的なユーザー中心の取り組みが求められる。今はそう信じて日々の進化を楽しみにしています。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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