コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2024年2月7日号より
前回書いた年初のコラム「顧客行動の再定義」の続きです。
【コラム】ポストCookie時代、AI時代? その前に、2024年は顧客理解の再定義を
今回は計測ツールの見直しについてです。
これからは、ウェブやアプリ分析において、定量データ分析と定性データ分析の双方を行き来できる手法が大切になってきます。そのための理想のツールについて考えてみます。
GA4は定量データを提供してくれますが、特定コンテンツの課題を見つけ、改善することは難しいと感じています(念のため。GA4使えない、などという趣旨ではないのでくれぐれも誤解なきよう)。
GA4のデータは、多くの訪問者の塊を見せてくれますが、アクセスしたユーザーの目的や迷っている姿など、顧客そのものが見えることはありません。
渋谷のスクランブル交差点を眺めながら、買い物客の改善に取り組むような、無意味な行為なのかもしれません。
結局個人個人の行動を見たり、直接聞いていくしか方法がありません。
観察や聞き取りの場所もスクランブル交差点ではなく、渋谷にでかけるスタート地点か、お店など目的地がよいはずです。
定性データ分析は行動を観察する方法と直接言葉を聞き取る方法があります。具体的には、
1) レコーディング機能やヒートマップ機能で個票分析のツールを使う
2) ユーザーテストで観察を行う
3) アンケートなど調査形式の聞き取りを分析する
の3つぐらいが考えられます。
まずは1)の個票分析ツールについて、その理想形を考えてみましょう。
新たなツール探しの前に、導入済みのGA4で個票分析はできないでしょうか?
GA4にもセグメントやユーザーエクスプローラの機能が備わっています。ただ、個票の行動を細かく見るのには情報が貧弱です。
GA4は個票抽出の前作業には有効ですが、個票そのものの分析にはお勧めできません。
では新たなツールとして何が候補になるでしょうか?
無料で機能豊富なツールとして最近人気なのはMicrosoft Clarityです。私も使っていますし、特にヒートマップやスクロールを可視化する機能は、ページ改善のために有効だと実感しています。
生成AIのCopilotで、個票の行動ステップを文章で実況する機能は秀逸です。
私はツール組み込みAIに、改善点の自動抽出や改善後の効果予測といったものを期待していました。GAのインテリジェンスに似た機能ですね。
しかし、Clarityは、いわば顧客行動翻訳エンジンを搭載したわけで、まさに副操縦士、さすがだと言えます。
ただ、以前は実装されていたGAとの連携機能が昨年末ぐらいから止まってしまっているようです。
GAのセグメントやPlayback URLをカスタムディメンションに実装できる連携機能は、使えないようです。そのため、GAと行き来しながら、個票を絞り込む前作業が難しくなっています。
個票分析の経験では、大きいセグメントより、より絞り込んだセグメントから個票を選ぶ方が有効です。
トップページ訪問者1万人から個票を見ていくより、カートに入れて買わなかった100人ぐらいまでは絞り込みたいです。
別途事前にClarityのカスタムタグを設置して、個票レコードを特定する方法もありますが、やや前準備に手間と時間がかかります。
また、Clarityには詳細データをマスキングする機能もついています。
何も設定していないと、フォームに入力した個人情報もレコーディング画面に出てきます。マスキング機能はうまく使うべきですが、どうも完璧ではありません。ちゃんと設定するには、フォームのCSSを特定してマスキングするなど、こちらも手間がかかります。
そう考えると、理想的なツールは、
1) 定量データと簡単に行き来ができて
2) 外部や画面に個人データが出ないもの
になります。この点で、私もまだこのツールがというお勧めは特定できていませんが、QA Analyticsや、ビービットのUSERGRAM、ミエルカなどいくつかの国産ツールに候補があるように思います。
a2iでは、Microsoft のClarityの有効な使い方と併せて、理想的なツール探しも行っていければと思います。
定性分析の他の方法、ユーザーテストやアンケートなどについて、書こうと考えていましたが、長くなりましたので、また別途扱います。
ただ、言えることはGA4や広告管理画面など、既存測定ツールでコンテンツ改善を進めるのは難しくなっています。
また、今後は個人情報保護や調査統計など、領域をまたがった知識と経験を身に着けていくべきだとも感じています。この点は別途書いてみたいと思います。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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