コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2024年1月10日号より
「2001年宇宙の旅」や漫画「AKIRA」の年号をとうに通り過ぎ、気がつくと21世紀の最初の四半世紀(2001年-2025年)の終わりが近づいています。いや、ここ数年の変化はいくらなんでも速すぎますよね。
さて、私は2024年を「顧客理解の再定義」の年と位置付けて進んでいく所存です。
この年初のコラムでは、私なりに全体像を書き出してみたいと思います。やや大仰になりますが、今年2024年は、この次の四半世紀の大変革に向けた準備の年になりそうです。
デジタルマーケティング業界において、相当大きなゲームチェンジがもうすでに進んでいます。
ただ、最初に言いたいのは、慌てて駆け出す必要はない、という点です。
今年、「生成AI時代」や「ポストクッキー時代」といった「キーワード」を見出しにして、変革の時期という記事がたくさん出てくると思います。それは正しいです。正しいのですが、すぐに駆け出さず、少し早足程度で着実に進んでいけば、まだ十分間に合います。
まず簡単に大掴みで背景を整理します。
デジタルマーケティングが始まった当初、ネット上の見えないユーザー、見えない顧客を理解するため、Googleアナリティクスや広告データをはじめとして、さまざまな「顧客行動データ」が顧客理解の助けになりました。
サイト改善、SEOや広告の施策を実行すれば、確実に成果が数字として見えました。それらのデータをもとにある程度予算立てすることもできたのです。
いつかすべての行動データが可視化できるぞ、という意気込みでデジマに取り組んできたはずですが……。
残念ながら、そんな時代は終わりを迎えようとしています。
ユーザーとの接触場所は、どんどん多様化し分散化しています。ゼロクリックの接触が増え、GAなどのサイト訪問データだけでは不十分です。
極めて厄介なのは、決して全部が見えなくなったわけではないことです。
部分的に怪しい割合が増え続けています。一方で計測できないけれど、効果があるエリアもどんどん増えています。
この現実を見ないふりもできます。今まで通りCPAなどのコンバージョンまでつながったKPIで、進み続けることも、見かけ上はできてしまいます。厄介ですね。
私たちは以下の5つの論点で、発想の転換と再定義をする必要が出てきています。
1) 顧客行動データの再定義と断捨離
2) 計測ツールの見直しとデータ基盤の再構築
3) 広告、SEOなど投資エリアと根拠の見直し
4) 代理店やコンサルとの関係の見直し
5) 生成AIや推測データを使いこなせるチームになる
ひとつひとつ深く掘り下げるべき要素なので、今回のコラムはまずは頭出しで、全体像の共有までとさせてください。
今年一年、a2iのセミナーを通じて、こうしたテーマを深めていきたいと考えています。また、次回以降の私のコラムでも、できる限り個々のテーマを掘り下げていきたいと考えています。
繰り返しますが、慌てて走り出す必要はありません。ゆっくり深呼吸をして、まず発想を転換する必要があると感じています。
デジマ施策についてCPAなどのコンバージョンデータだけで、代理店やコンサルに丸投げしているとしたら、そうした姿勢は見直しが必要です。
その逆に、新たな手法に、闇雲に飛びつくことも危険です。
さらに言えば、「もうデータは信頼できない」とすべてのデータを捨てるのも禁物です。
自分たちの顧客理解が、どこまでデータで見えていて、どのエリアが見えていないのか?
まずは自社の顧客理解そのものを整理する必要があります。それを行った上で、ツールを見直して、データを新たに取得する必要があれば、そこからは早足で進んでいくことです。
先が見えない変化の時代と言われていますが、見える場所と見えない場所をその都度しっかりと確認して進んでいく必要があります。今年一年、a2iのセミナーを通じ、できるだけ皆さんの「顧客理解の再定義」が進むよう取り組んでいきたいと考えています。
アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
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