コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2023年11月8日号より
今回は「切り替え」について考えてみたいと思います。
「切り替え」は、「座右の銘」というほどではありませんが、私が大切にしている概念です。
仕事が行き詰まったときや失敗を経験したとき、自信を失ったときなど、自分が挫けそうになったときに、そこから抜け出すための鍵だと考えています。
この「切り替え」を強く意識したきっかけは、サッカー日本代表の「ドーハの悲劇」でした。
ワールドカップ出場という歴史的なチャンスをのがした、ロスタイム直前の悲劇的なコーナーキックは、もうたくさん、と言いたくなるほど繰り返し再生されてきました。
当時、にわかサッカーファンの私は、次の日仕事に行けないほどのショックを受けましたから、ラモスやカズ、中山といった選手たちにとって、想像を超える衝撃だったはずです。
しかし、私にとってより印象的だったのは、その悲劇の瞬間ではなく、帰国後すぐに、いつもと変わらずにボールを蹴る選手たちでした。
「戻ってきてくれた」
やがて、ラモスやカズ、中山といったサッカー選手たちのプレイを見るうち、なにげなく使われる「切り替え」という言葉の重要性に立ち止まりました。それが、よりよく生きていくための鍵なのではないかと思えたのです。
小さなこと、大きなこと、何度か仕事やプライベートでつまづく中で、この「切り替え」を意識するようになりました。
今では改良を依然続けながらですが、自分なりの方法論ができてきました。
切り替えのためのテクニックは、いくつかあります。
小さな切り替えは、前回説明した「小さなアクション」とも重なりますが、デスクを離れて、歩いたり、コーヒーを入れたり、散歩をしたり、といったちょっとした動きをすることが有効です。
仕事のことが頭から離れなければ、週末自転車に乗る、軽い運動をするなど体を動かすことも有効です。
十分な睡眠を取る以上に効果的なことはありませんから、自分が行き詰まったと感じたら、さっさと仕事を切り上げて、寝てしまうのがよいかもしれません。
人それぞれのやり方があるでしょう。
今回私が提案したいのは、他人の話を聴くことです。
本格的に落ち込んだり、失敗の記憶が離れない、どんよりとした落ち込みが取れないといったことがあるかもしれません。
こうしたひどくダウンしてしまったときは、睡眠もうまく取れない場合もあるでしょう。
私の経験では、重い落ち込みのとき、人と対話をすることが有効でした。
自分から相談を持ちかけたり、悩み事を打ち明けるといった方法ではありません。
逆に相手の話をじっくりと聴く。このことが私にとっては効果的に作用しました。
ただ、この説明は誤解を生むでしょう。自分が落ち込んだときに、他人を利用している、という点がひっかかりそうです。
私の方法は、自分の状態に関わらず、普段からできるだけ人の話をじっくり聞く時間を意識して作るということです。
ランチ、1on1、お客様とのカジュアルな場所など、いろいろ考えられると思います。仕事以外も、家族の話を聞く時間を取る、LINEの友人の言葉を拾って会う機会を作るといったことです。
対話の目的や結果を求めず、内なる批判や誘導をせず、自分のことは話さず、相手に関心を集中させ、できれば正面で向き合わずに、相手の言葉を拾うように同意をしていきます。
相手の話を集中して聴くことで、相手をケアし、自分をケアすることもできるようになっていきます。
こうした聞く機会を普段から意識して持つことで、自分の調子が良いときも、悪いときも、常に自分なりの「切り替え」ができていきます。
私たちの内側には、自分のダメさを批判するもう一人の自分がいます。そんな内なる自分が、自分自身を傷つけてしまうことがあります。
内なる批評家は誰にでも存在し、完全に取り除くことは難しいかもしれませんが、「切り替え」の方法論を自分なりに持ち、うまく自分をケアし、自己の成長と幸福を妨げないようにすることが大切です。
アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
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