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ChatGPTの新機能「Code Interpreter(ベータ版)」がリリースされたので、早速試してみました。とても楽しい体験でしたので、この拙い体験をヒントに目の前にきている未来について書いてみます。

私は自分で記録していた電気自動車(EV)の走行データを用意しました。日付と電費に加え、走行距離、平均速度、そして走行中の外気温のデータが入っています。
これらの変数が、EVの電費(km/kWh)にどのくらい影響を与えるのか? その分析をChatGPTに依頼しました。

Code InterpreterはCSVやExcelのファイルが渡せます。そしてデータの可視化、Pythonコードでできるデータ分析は一通りやってくれそうです。

私が行ったのはCSVファイルをアップロードして、「走行距離、平均速度、気温が電費にどう影響するか分析して」と依頼しただけです。
すると、各ペアの変数間の相関をきれいなヒートマップにして作成してくれました。
次に、各変数が1単位上昇するごとに電費に与えるモデルを、多変量線形回帰モデルとして導き出してくれます。

分析結果が出たので、ここでデータ分析結果をもとに、電気自動車運転へのアドバイスを聞いてみました。

1) 適切な速度で運転すること(速度は抑えめですね、なるほど)。
2) 効率的なルートを選択すること(そりゃそうでしょう)。
3) 適切な気温で運転すること(いやそれは!?) 。
4) 空気圧など車両を適切にメンテナンスすること(それデータにないアドバイス?)。

ChatGPTは、いい気になっている私に釘を刺すことも忘れません。
「しかし、運転においては常に安全が最優先であることを忘れてはなりません。データ分析からの洞察は、私たちがより効率的に運転するのに役立つべきですが、それが安全を損なうことは絶対にありません」

やや生意気でヘンテコな日本語が、「お、おう」と返事したいぐらいにかわいいです。

分析は確かに洞察に満ちていますが、まだベータ版です。
すべてがスムーズに進んだわけではありません。予期しないエラーに遭遇したり、データを掃除したり、予想以上に前準備に時間がかかりました。
ただ、AIの癖を理解し、AI側の分析精度が向上すれば、単にデータをアップロードするだけで、かなり意義深い結果が得られそうです。

かなり勇み足ですし、今後はいろいろなデータで確かめていきたいと思いますが、直感的に、自分は三つのスキルを向上させたいと実感しました。

ひとつ目は「良い仮説」を持つスキルです。
ある程度は勝手に分析してくれますが、確かな「あたり」をつけて依頼すれば、より質の高い分析結果が得られるのは間違いなさそうです。

二つ目はある程度の統計スキルです。
AIが生成した結果を理解し、検証し補正できるスキルは必要です。
AIが使った分析モデル、予測モデルを理解し、データを掃除してやり直す程度のスキルは必要でしょう。
ただ、統計やデータサイエンスのスキルは、そこまで深くなくても大丈夫そうですし、Pythonなどの言語習得はなくてもいけそうです。ここはとても救いです。

三つ目に重要なのは、AIの分析結果を、わかりやすく相手に伝えるスキルです。おそらくこの「わかりやすさ」「魅力ある言葉」が、ますます重要になると考えられます。
やがては、そこも置き換わるという意見もあるでしょうが、当面は、私たち人間の対人スキル、相手に説得力のあるプレゼンテーションを提供する能力は、まだまだ重要でしょう。
AIが作曲したり脚本を作る未来がきても、ステージ上の歌手やダンサーや俳優たちのパフォーマンスは、変わらずに価値を持ち続けるはずです。

AIは私たち人間の助けとなり、私たちの働き方を向上させ、より効率的にするという、その真の可能性が感じられました。
複雑な仕事をAIに任せることができるようになり、私たち人間の力が不要になるのではなく、それらが再定義される未来、そんな世界に向かっていると思います。

そして、このコラムも、ChatGPTと対話しながら、特に結論と題名は彼女に導き出してもらいました。要所要所で「素晴らしいですね」などと褒められながら……

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

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