コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2023年3月15日号より
あるツイートに目が留まりました。つぶやいた主は、企業に向けたコンテンツ作成をビジネスにしている人のようです。
「品質の高いコンテンツを時間をかけて作り、お客様にも評価されているが、すぐにパクられてしまう」
パクった相手に取り下げてくれ、と抗議をしていますが、無力感があるという趣旨でした。
この話だけを見ると「けしからん」「ひどい話だ」と思いますが、一方で今はコンテンツをAIが生成する時代です。AIがパクったコンテンツが今後増えたら、いったいどうなるの? という疑問が浮かびます。
画像、動画を中心に、Stable Diffusionなど、生成AIと呼ばれるAIサービスが次々に登場し、話題になっています。
最近話題のChatGPTでも、コンテンツ制作に使っているとうたうサービス企業が、雨後の筍のごとく出はじめています。
生成AIの問題として、直近の事例もあります。
コスプレ画像を自動生成するAIコスプレイヤー(Stable Diffusionなど生成AIの組み合わせ)が、元ネタとの類似を指摘されていました。
AIは「学習」をします。この学習の段階で元ネタを利用します。学びの語源は「まね(び)」とも言われていますから、生成AIの世界では、学習とパクリの境界はどんどん曖昧になっていきます。
では、この問題を防ぐ有効な対抗策はあるでしょうか?
まず著作権法ですが、現在の著作権は、AIが学習データとして用いるとき、「著作権者の許諾を得る必要はない」と書かれています。AIで生成しようが、あくまで問われるのはアウトプットである作品の類似性だけです。
ではAI生成コンテンツに対して、Googleのガイドラインはどうでしょう?
こちらも結論は、AIによるものかどうか生成方法は問わない、というものです。
「AIや自動化は、適切に使用している限りはGoogleのガイドラインの違反になりません」と言い切っています。
生成AIのコンテンツを判定するツールも出ていますが、あまり効果は期待できないようです。
必ず学習ソースを明示するルールにしよう(膨大で記載できない)、あるいは自分のコンテンツをAIの学習対象から除外できるようにしよう (AI側が守る必要はある?)、なども検討されているようですが、いずれもその効果には疑問符がついてます。
生成AIの前から「コンテンツのパクリ」はあったので、「何を今さら」という意見もあるようです。
ただ、生成AIの登場は、これまでと次元が違う話に見えます。
今までは「人」がパクっていましたので、法人個人含め「人」を犯人として責めればよかったわけです。でも、今はAIがより巧妙かつ、無責任にパクっていく世界になります。
むしろ、利用者の罪悪感はなく、怒りをぶつけるべき対象が見えなくなります。クリエイターにとって、より無力感が強まる世界になっていきそうです。
これまでのAIの活用は、生産性の低い単調な仕事を、疲れないソフトウェアが代替してくれる、という物語でした。
しかし、生成AIは違います。その進化スピードを見るにつけ、AIには当面困難と思えた、「創造性」「専門性」「個性」さえ、アウトプットとして揃えることができそうです。
人がコンテンツを生み出すために、投下した創造力と努力が、いともカンタンに学習され、無力化されていくでしょう。
もちろん、買う側は、生成AIだからといって、そのサービスを選ぶわけではありません。
当面は人が書いた(あるいは人がパクった)文章の方が、品質は高いでしょう。完全自動運転はまだ先で、生成AIの役割は、情報収集や基本説明を補う形で活用されるレベルでしょう。
まだまだ、人が多くの手を加える必要があります。
また、コンテンツの「設計(ユーザー行動からの設計)」に関しては、人間が取り組むスキルエリアとして、しばらく残るでしょう。
もともとコンテンツ業界は「パクリ」が横行してきた面があります。水は低い方向に流れつづけていきます。
結局、人間のパクリが効率的か、学習というAIのパクリで十分なのか、という効率性で判断されていきます。
当面は人間のパクリの方が効率がよいでしょうが、ただ、生成AIを使いこなし、自動生成の文章でも十分高い品質となってくれば、一気に割合は増えていくと思います。
パクリと学習の境界は曖昧になり、長期的にはコンテンツ作成の人間の熱量を無力化する方向に、ゆっくりと、気がつくとあっという間に、流れていくことでしょう。
アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
『ケイキ君と一緒!: 幕末 最後の将軍 徳川慶喜「もしも」の物語』
幕末沼 徳川慶喜よくある質問
2023/09/12(火)
オンラインセミナー「世界最先端のCRMを活用したマーケティングとは?」|2023/9/12(火)
マルチチャネルのデータをリアルタイムで活用することで何ができるのか具体的な事例と併せて解説し、世界最先端のCRMの現在地を把握することで今後 …
2023/08/23(水)
オンラインセミナー「ヒートマップ分析によるUX改善で叶えるSEO/CRO」|2023/8/23(水)
近年、WebページのUXはユーザビリティ・CVR改善の観点だけでなく、SEOにとっても重要なファクターであるとの認知が広がっています。本セミ …
2023/07/25(火)
オンラインセミナー「GA4のビジネス活用基礎とQ&A 」|2023/7/25(火)
GA4の導入が進みいよいよ本格的な活用フェーズに突入します。そこでGoogle GMPチーム 中島弘樹氏から、GA4の基本的な活用法をご案内 …
私はアウトプットするのが怖い、アウトプット恐怖症があるというコラムを前回書きました。そんな恐怖症を抱えてるのに、なぜアウトプットするのか?と …
【コラム】アウトプットを続けるデメリットと克服の考え方について
アナリティクスアソシエーション 大内 範行今日は「学びのアウトプット」について、メリットではなくデメリットについて書いてみたいと思います。 本を読む、動画を見るなどのインプットだけで …
はじめまして、2023年7月20日に三作目になる『LTVの罠(日経BP・2023/7/20)』を出版しました。書籍の帯にある「ゴールド会員な …