コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2023年1月11日号より
2022年末から2023年始にかけて、デジタルマーケティング業界の、予測記事を何本か読みました。
ChatGPTなど生成系AIの台頭、SNSの多様化、オーガニック検索の地殻変動、GA4への移行、プライバシー保護対策のさらなる強化、うんぬんかんぬん。
一連の記事を読みながら、いったい自分たちはデータをどう見ればいいのか、そしてそのデータから、どうビジネス改善につなげていけばいいのか? を考えていました。
足りない脳みそを、珍しく頭痛がするくらいフル回転させて考えたところ、どうやら測れないユーザー行動がどんどん増えていきそうだな、ということに行き着きました。
「コンバージョンを見て最適化するやり方って、もう終わってる?」と、思わずつぶやいていました。
自分自身で簡単な対話をしてみました。
「最近、ネットで何してる?」
「最近はYouTube見たり、音声コンテンツ聞いたり、Twitterとかソーシャルを適当に見てることが増えましたね。テキストをじっくり読むことはめっきり減りました」
「それって、GA4とか広告計測のデータに出てこないよね?」
「え?」
「コンバージョンってどうやって数えてるんだっけ?」
「計測タグの発行するCookieでしたっけ。ユーザーがリンクをクリックして訪問してからコンバージョンまでをできるだけつなげることで、ユーザー行動とコンバージョンを可視化しています」
「そもそも動画とかソーシャルからクリックして買い物してないし、Cookieって、もうあなたの行動をつなげてないよね」
振り返って見ると、この年末から正月も、
「サイトの文章を読んで、リンクをクリックしてサイトを訪問して買い物をして」
という計測タグで追える行動をほぼしていません。
もしその世界が広がっていくのに、変わらずに広告の計測データをコンバージョン率で最適化したり、参照元とCVだけを見て最適化していたら、いったいどうなるのでしょう?
検索広告は、どんどんブランド名検索や、商品サービス名検索に、偏っていってしまいます。
反対にソーシャルや動画サイトなどの取り組みや広告は、CVまで計測できないので、投資を控えるようになっていきます。
でも、それは私の(多分あなたの)ネットの行動とは、どんどん真逆に進んでいくことになってしまいます。
私たちの見ている計測データが、買うきっかけになったユーザー行動からコンバージョンまでつながっている、と想定することが、いよいよ難しくなってきたと思います。
では、どうすればいいのか?
私も明確な回答はありませんし、迷っているままです。今時点での中途半端な方向性は以下の3点です。
1) CVや売上などの事業と直結するKPI/KGIは計測する
2) タグやCookieで計測できる限界を理解し、限られたセグメントだけユーザー行動は引き続き計測する
3) 上記の限界を認識し、それ以外のメディアについて、個別にユーザー最適化を積み重ねていく。こちらの世界(行動を追えない世界)の方が増えていく。
3)については、動画サイトなら動画サイト内、ソーシャルならソーシャル内、その中で得られるデータを見ながら、同時にユーザー行動を観察するユーザーテストなどを重ねながら、ユーザーにとって最適なクリエイティブ作り、コンテンツ作りをしていくことです。
データ分析からCVに直結していない、と安易に判断せず、CVと行動の紐付けそのものに限界がある、という前提に立つ。
でも、少なくとも自社サイト内だけは、CVをもとに最適化するべきではないのか?
そんな疑問も出てきます。これは提供する商品やサービスで変わってきます。少なくともCVまで一定期間、複数回の訪問があるようなサービスの場合、CV最適化には限界がある、と認識して、CV最適化に固執せず、ユーザー行動を最適化するように、分析改善していくべきです。
決して、アクセス解析や広告の計測をやめろ、と言っているわけではありません。CVの値も大切です。ただ、改善後、広告実施後の成果を、CVまでつなげた値に固執せずに見ていこうという話です。取り組むのは、ユーザー行動への最適化です。
改善を重ねた先に、その積み重ねた波が、総合的にCVを上げると信じて、こつこつとユーザー行動最適化を積み重ねていく。多分、現実問題、それしか方法がないと考えています。
この傾向は、何も今年からの話ではなく、ここ数年で徐々に顕著になり、2023年からの今後3年間で、急激に進んでいくと思います。
具体的にどう進めたらいいのか、今年、このテーマを試行錯誤しながら追求していきたいと考えています。
アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
『ケイキ君と一緒!: 幕末 最後の将軍 徳川慶喜「もしも」の物語』
幕末沼 徳川慶喜よくある質問
2023/09/12(火)
オンラインセミナー「世界最先端のCRMを活用したマーケティングとは?」|2023/9/12(火)
マルチチャネルのデータをリアルタイムで活用することで何ができるのか具体的な事例と併せて解説し、世界最先端のCRMの現在地を把握することで今後 …
2023/08/23(水)
オンラインセミナー「ヒートマップ分析によるUX改善で叶えるSEO/CRO」|2023/8/23(水)
近年、WebページのUXはユーザビリティ・CVR改善の観点だけでなく、SEOにとっても重要なファクターであるとの認知が広がっています。本セミ …
2023/07/25(火)
オンラインセミナー「GA4のビジネス活用基礎とQ&A 」|2023/7/25(火)
GA4の導入が進みいよいよ本格的な活用フェーズに突入します。そこでGoogle GMPチーム 中島弘樹氏から、GA4の基本的な活用法をご案内 …
私はアウトプットするのが怖い、アウトプット恐怖症があるというコラムを前回書きました。そんな恐怖症を抱えてるのに、なぜアウトプットするのか?と …
【コラム】アウトプットを続けるデメリットと克服の考え方について
アナリティクスアソシエーション 大内 範行今日は「学びのアウトプット」について、メリットではなくデメリットについて書いてみたいと思います。 本を読む、動画を見るなどのインプットだけで …
はじめまして、2023年7月20日に三作目になる『LTVの罠(日経BP・2023/7/20)』を出版しました。書籍の帯にある「ゴールド会員な …