コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2022年4月27日号より
早稲田大学の社会人向け「デジタル時代の総合マーケティング講座」で、吉野家の講師に差別的な発言があった、というニュースが私たちの関心を奪いました。
このコラムで、この事件そのものを深掘りはしません。それを見て実感したことから、「学び」のあり方と、懸念について考えてみます。
私は、最初このニュースが、Twitterでバズって広がったと思っていました。けれども、もともとは受講者のFacebookでの発言がきっかけだったようです。発言そのものの「いいね」数は千ぐらいで、そこまで多いとは言えませんでした。これをJ-CASTやYahoo!ニュースなどのメディアが、いち早く取り上げて、Twitter上で広がり、NHKなども追随しました。
まだSNSではそこまで炎上していない段階から、メディアが「SNS」での広がりを予測し、素早く取り上げた印象を持っています。同時に吉野家、早稲田大学側の反応も有無を言わせない速さでした。
私はこの動きを見て、「ニュース」の世界が、権威を持つ新聞やテレビのフィルタから、発信者主導のフィルタの世界に、完全に置き換わったんだ、と改めて実感しました。
これはあらゆるところで起こっていて、例えばテレビ番組の編成にも感じられます。
今クールのドラマはどれも力が入っています。これはNetflixなどに奪われた時間を取り戻そうとした新しい動きだと見ています。ドラマをSNSで反響させネットで再生してもらう。かつて「番組表」と「視聴率」が主役だった世界は、人々の発信と再生時間に置き換わりつつあるのでしょう。
さて前置きが長くなりましたが「学び」の話です。
特にデータ分析やデジマの世界で顕著ですが、こうした新しい流れは同様です。
SNSで反響した記事や動画は、時には書籍や学校よりも、役立つものになりつつあります(もちろん、書籍や学校が無意味になったと言っているわけではありません)。
この世界では、響く中身が大事で、発信者の所属する会社名やブランドは、徐々に薄くなってきていると思います。
一人ひとりが、所属する会社のブランドに関係なく、自分の学んだことを発信していく。それが、発信者自身と受け手双方の学びを加速させていく流れができていると思います。
特に注目しているのは、最近、大学でデータサイエンスやプログラム開発を学んだ人たちが、かなり増えてきたことです。これから、そうした人たちの発信が増えていくと、遥かに学びのレベルが上がっていくはずです。
学習方法としても、「発信」はもっとも効果の高い、効率の良い手段です。
受け身で講義を聞くだけ、書籍を読むだけより、発信した人たちの方が、さらにレベルが上がります。
あまり世代論は好きではありませんが、もともとの基礎が私たち先輩より明らかに高いので、その人たちが「発信」を加速すれば、レベルはぐんぐん上がっていくでしょう。
最初に触れた早稲田と吉野家の事件に戻ると、こうした学びの良い循環に、負の影響が出ないことを切に願っています。
ややもすると、今回の炎上事件に過剰反応し、社員の発信活動を一切止めてしまう、そういった短絡的な動きをする広報もいると思います。機密保持や差別、バイアスへのガイドラインは必要だとしても、この発信主導の流れそのものを止めてほしくありません。
企業側も、入社まもない社員個人の発信でも、むしろどんどん許容し、もっと言えば推奨してほしいと願っています。それが優秀な社員を育て、ひいてはより多くの受け手が学べる世界になっていくと思います。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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