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新規コロナの感染者数が大幅に減少しています。その増え方と減り方のグラフは正規分布に近く見えます。しかも、これは日本だけの現象ではなく、インドでもほぼ同じです。
急激に感染者が減少している現状に、感染が増え続ける予測グラフを出してきた専門家たちは一様に首を傾げています。「まったく不思議だ」「理由がわからない」と、首をヒネっています。

後付けの説明で、若者の人流や夜中の外出の数字を持ち出す人もいれば、やや科学的に見えるウィルス自己崩壊説や、感染するタイプが限られる集団免疫説なども語られています。ただ、まだ説得力のある理由はあげられていません。
少し乱暴に言えば、「頭でっかちな人間の予測は、ウィルスにまたしてやられた」ということになります。

同じことは地震予知についても言えます。
京都大学の環境学研究科の鎌田浩毅教授は、YouTubeに最近上がったNewsPicksの動画の中で「地球科学の黄昏」と名付けていましたが、「地震の予測はできない」と断言しています。
アメリカの地質調査所(USGS)も、公式な立場として「地震は予測(prediction)できない」と断言しています。そのメンバーの一人 スーザン・ハフ博士も次のように言っています。
「昔から何も変わっていない。だいたい10年ごとに『画期的な方法』が見つかって、それが10年後に間違いだったとわかる。その繰り返しなの。ありもしない聖杯を追いかけるようなことはもうやめた方がいい」(「シグナル&ノイズ」ネイト・シルバー著より)

所詮人間ごときが、神の自然現象をどうにかできるわけがない、と言われているようです。でも一方で、天気予報は台風の予測を含めて、予測精度がどんどん上がっています。
本質的な問題は、元になる過去データが少なく、変異などのランダムな変数の影響が大きい場合です。限定的な教師データで、初期値や影響の大きい変数が変わると、結果が全然変わってしまうので、結局やっても無駄ということになってしまうのです。

しかし、予測(prediction) はできなくても、予想(forecast)は、ある程度ガイドできます。
予測はいつ、どこで、どうなるか、という推定で、予想は長期間に渡る事象や最悪のケースなど、確率的に推定することです。
この予想もやっかいで、35年に一度 M8規模の地震が起きるといっても、35年周期で起こるわけでもなければ、たまに40年になっても誰も文句を言えないのが現実です。

私たちにできることは、信じたくなる「予測の聖杯」を無駄に求めないこと。
そして、これは今後の私たちの人生の10年にとても重要だと思います。
感染症や地震、気候変動といった、いつ起こるか明確でない予想をもとに、一人一人が備えをしておくことが重要になります。ただ、これは個人が頑張るという話でなく、国や自治体に働きかけたり、場合によっては、国や自治体を自分で選ぶことが重要になってくると考えています。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
『ケイキ君と一緒!: 幕末 最後の将軍 徳川慶喜「もしも」の物語』
幕末沼 徳川慶喜よくある質問

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