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20年以上前、私は一冊の黄色いどぎつい色の表紙の書籍を手に取りました。セス・ゴーディン著「パーミッション・マーケティング」。確認すると初版は1999年、創業したサービスが米Yahoo!に買収され、出版当時は米Yahoo!の副社長(VP)だった人です。

1999年って、まだGoogleはよちよち歩きで、Google AdWordsも開始されていません(2000年から)。iPhoneなんてまだ遠い未来です(第1世代は2007年)。

今は2021年ですよね?

プライバシー保護の意識が高まり、3rd Party Cookieが終焉を迎え、ユーザーが不快に感じるリターゲティング広告ができなくなっています。アプリのIDFAはじめユーザーの行動データを取るなら事前に許可を取る。そんなルールが浸透した今、改めてこの本を手に取ってみると、この「パーミッション」という言葉が、時を超えて響いてきます。静かな「Back to the Future」感覚があり、不思議な感じがします。

「企業が一方通行で展開する販促、ユーザー体験を阻害する広告や通知はやめよう。ユーザーの許可と信頼を得てコミュニケーションをしよう」という1行がこの本の趣旨でした。この書籍では、従来のマーケティングを「土足マーケティング(interruption marketing)」と呼び、それ対して、ユーザーの同意と信頼を得て展開するマーケティングを「パーミッション・マーケティング(Permission Marketing)」と名付けました。

ユーザーが自発的に許可、信頼したキャンペーンは、コンバージョン率も高く、長期的なLTVも向上します。よりパーソナライズしたメッセージも盛り込んでいけば、満足度と評判を高め、その輪を広げていくことができます。

セス・ゴーディンの最新刊は昨年発売された「THIS IS MARKETING」ですが、読んでみると、言っていることは基本的に「パーミッション・マーケティング」とまったく変わっていませんでした。
サービスや商品を手にするユーザーの思いと行動を理解し、信頼してくれるユーザーに応えるマーケティングをしていこう。小手先のスパム的な販売促進ではなく、本質的で不変の取り組みです。

昨年と今年、AppleのITPにはじまって、Google アナリティクスがGA4になり、新たなツールの導入設定や、細かな技術やデータ不具合の背景のロジックなどに時間がとられています。
私自身、新しいことに取り組むのは好きなのですが、それにしても時間を無駄使いしすぎています。
今年もGW間近になり、気がついて見ると、本質的なユーザーと向き合う分析が全然できていないじゃないか、なんじゃこりゃ、と血だらけの手のひらを見た松田優作状態で、愕然としています。

タグの張り替え作業から離れて、もう一度、自社のサービスを利用し、ファンになってくれているユーザー行動と向き合う。そのために何ができるか?

GWは本質的なマーケティングについて考えるため、本棚でホコリをかぶっている古い本と、電子書籍で読む新しい本を、並行して読んでみようかと考えています。
みなさまも、このおやすみ期間に、よい読書時間が持てますように。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

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