コラムバックナンバー

年始なので気楽なコラムからはじめます。TVの視聴率について考えてみました。

年明け、紅白歌合戦の視聴率について娘と会話をしました。2020年の紅白歌合戦の視聴率は40.3%と昨年の37.3%から増加との見出しです(紅白後半の平均世帯視聴率)。
娘の印象では「そんなによくなかったのに結構見たんだね」とのことですが、私は「誤差の範囲じゃない?」と答えました。「どのくらいの誤差があるの?」と聞かれて、「±3%から±5%ぐらいかな」と答えました。ふーんと、それで終わっても良かったのです。でも待てよと。
私の知識が古かったのと、数値の話なので、気になって改めて調べてみました。
視聴率って、ずっと昔のままの視聴率なのか? つまりデジタル化に向けて大きく舵を切っている(ように見える)変化の中でも、やっぱり変わらないのかな、とそんな疑問と合わせて。

視聴率の誤差は?

視聴率は変わっていました。まず計測の方法やサンプル数が2020年3月から変化しています。サンプル数は、以前確か数百だったと記憶していますが、関東関西は2700世帯に増えています。
これによって想定される標本誤差(統計上の誤差)も、±0.8%から±1.9%程度に補正されていました。サンプル数200の場合の誤差(おそらくこれが私の記憶)±3% – ±7%程度からは大きく進化していました。

でも見ているのはお年寄り中心でしょう?

私の記憶の視聴率は世帯視聴率でした。この点でも変化していました。
個人視聴率が取得されていて、テレビを見る個人の年齢/性別/職業等を自動で取得する機械式個人視聴率調査(PM調査)という方法が全国で行われています。
我が家でも紅白は録画で年始に見る形でした。大晦日は、娘と妻は嵐のオンラインライブをキャストで見て、息子はまた別のライブ、私は別の部屋でラジオの特番を聞きながらと、同世帯でもバラバラでした。
2020年の紅白でもはじめて個人視聴率が発表されていて、そこからの推計で全国6579.6万人が見た、ということのようです。
電通やTVISION INSIGHTS社などからも、個人ベースの視聴データや、さらに誰がどのくらい熱心に見ているのかといった視聴の「質」データが提供されています。
CM提供企業も、世帯視聴率とは別に、こちらを参考にする動きも出てきています。若い年齢層など狙っているターゲット層にどれだけ熱心に見られているか、そんなデータが参考にされはじめているようです。
それから放送後7日間で録画を見たタイムシフト視聴も併せて取られていますね。

テレビからネットへの波及効果は計測できるの?

私がGoogleにいた時は、一部のお客様にテレビアトリビューションという分析サービスを提供していました(もう終了していると思います)。
これは本格的に商品化してもよかったんじゃないかと思いますが、CM放送後の一定時間内のGoogle アナリティクスの反応や、あらかじめ選んだ検索キーワードの反応などをレポートするサービスでした。
今、似た仕組みがラクスルから「ノバセル」というサービスとして提供されています。私自身は未体験ですが、Google アナリティクスのAPIで取得したデータとCM放送時間と地域などを連動させたデータでレポートされています。CMのウェブやアプリへのコンバージョンも含めた波及効果を計測するサービスが展開されていますね。
私の古い記憶では、アンケート調査でブランドの印象を聞くなど程度だったと思いますが、やはりアップデートが必要ですね。

テレビで見ているのはテレビなの?

そして人々がテレビで見ているのは、果たしてテレビ番組なのか?という疑問があります。
私も、昨年テレビを買い替えてから、ほぼ1/3ぐらいはYouTubeやNetflixなどのアプリやキャストを見ています。Android TVをプラットフォームとして動いている機器も多いので、アプリ計測の機能を使って、どんな番組やアプリが本当に見られているのか?これも出せるはずです。
そういったデータは、テレビメーカーから、あるいは、セットトップボックスを提供しているケーブルテレビから出ているようです。
当然、広告のあり方、YouTubeの広告なども含めて、大きく変わっていくことでしょう。価格も変化し、利用する企業も広がっていくことでしょう。この動きは止められないのだと思います。

というわけで、娘には、「ごめん、2019年はまだ誤差あったけど、2020年からかなり正確になってきてるわ」と訂正しつつ、テレビという「お茶の間の娯楽ボックス」が、個人ベースのアプリへと変化し、それに応じて計測データとその活用も変わり、つまりはテレビをめぐるビジネスモデルも大きく変わりつつあるんだな、と実感したわけです。

ところで三が日をはずして行った初詣のおみくじは中吉でした。
うちの近所の氷川神社には、まだAIは導入されていませんでしたが、まあ、おみくじは当面このままで。
2021年が、昨年よりは少しでもよい1年になりますように。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
『ケイキ君と一緒!: 幕末 最後の将軍 徳川慶喜「もしも」の物語』
幕末沼 徳川慶喜よくある質問

主な講演

一つ前のページに戻る

a2i セミナー風景イメージ

あなたも参加しませんか?

「アナリティクス アソシエーション」は、アナリティクスに取り組む皆さまの活躍をサポートします。会員登録いただいた方には、セミナー・イベント情報や業界の関連ニュースをいち早くお届けしています。

セミナー・イベント予定

予定一覧へ

コラムバックナンバー

バックナンバー一覧へ