コラムバックナンバー

新型コロナCOVID-19、国内最初の感染発生が1月16日ですので4ヶ月近くが経ちました。
いまだにこの感染症には不明な点が多く正確な実態が掴めていません。毎日のように感染者数や分析レポートが報告されていながら、実はいまだに正確な感染者数すらわからず、したがって致死率もわからないという状況です。
テレビやソーシャルで交わされる議論もずっと同じところを行ったり来たりしている印象です。特にソーシャルでは「検査」を増やすかどうかの論点だけでも、対立する立場同士が宗教戦争をずっと続けている状態です。

私個人として注目しているのは、日本の人口当たりの死亡率が各国に比べて低い点です。しかし、この問いにも様々な説明が続けられていますが、どれも相関や消去法、感覚的な説明の域を出ません。BCG仮説も、免疫の自己マーカーであるHLAを根拠にした仮説も、科学的なようで、否定派も肯定派も繰り返し出てきている段階です。
そうなる要因はいろいろあるのでしょう。ウィルス感染の計測方法や精度に限界があり、A/Bテストができる実験室ができないため、突っ込みどころも満載です。結局は信じる人は信じ、その他の人々は首を傾げています。

考えてみれば、私たちが取り組んでいるウェブやアプリ、O2Oなどのデータ分析とビジネス判断も似たような状況です。分析により結論にたどり着いたとしても、環境は変化し続けます。選択した期間やセグメントでも分析結果は違ってきます。A/Bテストの結果を見ても、影響を与える要因はさまざま考えられるため、「確信」や「証明」にはいたりません。得られたデータの範囲内で判断をし、改善施策をトライし、また次へ進むことを繰り返すしかありません。

新型コロナの感染がいったんは弱まり、経済活動が徐々に正常化しても、経済的な影響が本格化するのはこれからです。新しい状況の中、決断に迷う状況が続くでしょう。例えば、広告の投資を減らすべきか、積極的に打ってでるべきか? セールのキャンペーンを展開すべきかどうか? どのビジネスリーダーにとっても大きな試練の時期がやってきます。この危機的な時期に、私には何がアドバイスできるでしょうか?

少し大きな話をします。

過去、日本の重大な危機、幕末や第二次世界大戦の敗戦などの時期、失敗の原因として共通するのは、データや分析結果と向き合わなかったこと、そして合議を重ね非決断のまま無謀な方向に進んでしまったことです。
幕末ではペリーの来航の前から、外国船が日本を繰り返し訪れていました。黒船来航の50年前にはイギリス戦の軍事脅威(フェートン号事件)を認識しながら、新たな貿易は拒否し、無謀な外国船打ち払い令を出しただけです。十分な時間があったのに、幕府も主要な藩も、佐賀藩をのぞき、沿岸の軍事力増強を50年以上放棄し続けました。
第二次世界大戦、日本が米国開戦を決断した時も、敗戦予測分析のレポートが真剣に議論されることはなく、本音では天皇、政府、海軍、陸軍省すべてが対米戦に及び腰な中、会議を重ねてできた空気で、無謀な戦争に突入していきました。

ビジネスの決断をするリーダーにアドバイスするとしたら何か? 今は二つのことを考えています。
一つは自分たちのデータと顧客の声と向き合い、今までと違う不都合なデータにも耳を傾けて欲しいということです。業界ごと、ブランドごとに違う状況が生じていますので、周囲の成功事例や空気に流されず、新しい状況のデータと真剣に向き合い、自分自身の判断で決断をしていくことです。

もう一つは、日本人が陥ってきた合議と両論併記のまま非決断を重ねることは避けて欲しい、ということです。データの助けがあっても、反対意見はいくらでも生じます。しかし、その中で落とし所を見つけたり、先送りをすれば、状況はさらに悪くなるでしょう。
たとえ不確実でも、限られたデータと向き合い、決断をして進んで行きましょう。私自身もそういったリーダーの方々の判断を助ける支援ができれば、と考えています。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

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