コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2020年3月11日号より
欧州や米国のデジタルマーケターの間では「The Death of Cookie(クッキーの死)」という言葉が日常的に使われています。この言葉が強烈なので、お互いに「Cookieの次」のデータ分析のあり方について議論も活発な印象です。
日本では似た強い言葉がないので、まだ危機感は薄い印象ですが、とはいえ次の分析がどうあるべきか、日本でも議論を深めていく時期に来ていると考えています。
私個人が取り組み始めている一つの方向は、CRMや注文データなどウェブ以外の顧客分析を「主」にして、モバイルやウェブの行動データは「補足」とするやり方です。
今まではWebアナリストの顔で活動をしてましたから、Googleアナリティクスのデータからセグメントを切ってユーザー像を導き出していました。でも、それはもうやめにします。
Googleアナリティクスのデータを分析する前に、まずはCRMがあればそちらを、購買情報があれば、その注文データを徹底的に分析することからはじめます。
実際に買い物をしたり、会員になった顧客のオプトインされたデータを、いろいろな角度から分析し、それをユーザー像の基礎とします。その分類を基礎に、逆引きするように、買う人のウェブ上の行動を「補足」データとして貼り付けて、重ねていきます。訪問した際の参照元や、閲覧したサイトのページ群をシグナルとして顧客セグメントに貼り付けていきます。
そうやってマッピングしていくと、セグメントごとにギャップが出たり、特徴が見えてきて、その顧客セグメントに対してとるべき施策が見えてきます。
でも、CRMの分析は特別なことではなく、ウェブ登場前には散々やられていた顧客分析の手法ですよね。ええ、私もそう思います。でも結果的には今までとは違う分析になると思います。
同じ顧客分析でも、最後の施策を何にするか、あくまで施策と得られる効果を起点にして、逆引きした分析が行われるので、分析の視点が明らかに変わります。
このセグメントには広告を厚めにして、違うセグメントにはソーシャル多めで広告少なめ、一方別のセグメントにはメールやラインで素早くとじっくりを掛け合わせてアプローチ。
そういった視点での顧客分析は、実は退化しつつ新しい分析なのだと考えています。
もう一つ、いわゆる全量データ分析は幻想になると考えています。
モバイルのGoogleアナリティクスの行動データは「The Death of Cookie」で質が劣化していくでしょう。
Cookieに代わって、これから新しく提供される Googleアカウントを元にしたデータも、サンプリングされた眉唾なデータになるでしょう。
オフラインデータの統合も、オフライン側の制約で、きれいに繋がるデータは一部にとどまることになります。
それらを「主」としてデータ分析を深めても、間違ったデータ分析になる可能性が大きいでしょう。しかし、改めて顧客分析に軸足を置き、あくまで参考データとしてモバイルやウェブやオフラインの行動データを使えば、施策につながる効果的な顧客ストーリーが描けると思います。
Googleアナリティクスというツールが提供するデータは、アンケートデータやユーザーテストのデータなどと同じレベルの、顧客像を描き出すための補足データの一つに過ぎないのです。
つまり、大内さんは不確かな質の悪いサンプリングされたデータを使って、顧客のストーリーを作り出すと言っているのでしょうか? それってこれまで求めてきた全量データを元にした正確なデータ分析とは程遠いんじゃないでしょうか?
そうかもしれません。確かに、私たちのアナリティクスは退化していくでしょう。
でも、私たちの目的は「施策」を行って「検証」することです。限られた時間と費用の中で、分析から結果を出していくには、人間の研ぎ澄まされた感覚やストーリーを助けにする方が、費用対効果と効率の面では正しい場合も多いのです。
顧客を描き出す「データ」を広い視野で把握して、あくまでアクションからの逆引きで施策につながる分析を行う。今後の10年のアナリティクスの取り組みは「正しい退化」に向かっていくと思います。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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