コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2019年12月25日号より
2020年はCookieやウェブトラッキングに対する規制が、いよいよ厳しくなる年になる。それは確実です。
すでに始まっている欧州のGDPR、アップルを中心としたITPの導入、カリフォルニア州をはじめとするアメリカの新法案の施行開始、そして日本では公正取引委員会が対策を打ち出そうとしています。
これらの動きがウェブサイトのデータ分析に与える影響は、大きなものになるはずです。
ただ、2020年すぐにその影響が出るとまでは言えないかもしれません。
振り返って、2019年の今年、アップルを中心に、ユーザー行動をトラッキングするタグやCookieの活用を制限する目的で、次々にITPの仕様が追加されていきました。これでウェブの行動分析のデータが、ある意味で使い物にならなくなるのではないか、そんな懸念もありました。
しかし、現実には、今のところネガティブな影響を口にする人はあまりいません。例えば極端に新規ユーザーが増えるなどの影響は耳にしていません。Google アナリティクスのデータを元に分析をしていても、問題はない状態に表面的には見えています。
来年、Cookieの規制が厳しくなるとしても、特に日本市場に限れば、ユーザー数が極端に減ってしまう、そんな事態が来るのは2020年の後半以降になると考えています。
しかし、この波は止められません。長期的にはCookieのデータがカスタマージャーニーとしてつながらない、ユーザーの明確な許可が必要なのでユーザー数が大きく減少する、あるいはトラッキングデータをマーケティング施策に活用することが制限されていく、いずれも起ってくるでしょう。
これらのCookie規制の皮肉な面は、一見GAFAと呼ばれる巨大なプラットフォーマーに対する規制に見えて、結果はその逆に作用してしまうことです。GAFAは、ログインアカウントを大量に保有し、生活に浸透したサービスの強制力があります。ユーザーの許可を得たデータを大量に保持することができ、かつCookieに頼らずにある程度ターゲットできるプレイヤーは誰か? 冷静に考えれば皮肉な未来が待っていることでしょう。
匿名でのウェブのトラッキングが難しくなる世界に備えて、どのように顧客分析に取り組んでいくべきか? その方向性を定め準備をしていくことが2020年のウェブデータの分析者に求められるでしょう。
ただ、漫然とDMPにデータを貯めていても、そこにはゴミが溜まり、何も生まれないのは間違いありません。
その道筋は大きく3つだと考えています。
一つ目は人による分析を深めること。
セグメントを狭めて、その範囲で確実に取れるユーザー行動に絞って、個の単位での行動を追っていくことです。その中で課題と改善策を見つけていく作業を慎重に続けていくことです。
二つ目はGAFAに頼った自動化を追求すること。
Googleをはじめとするプラットフォーマーのログインアカウントを元にしたターゲティングに頼り、分析よりはターゲティング広告などのアクティベーションにフォーカスを当てて自動化を進めることです。
三つ目はユーザーテストやアンケートなどユーザーの声と併せて見ていくことです。
これが本質だと考えていますが、私たちが知りたいのは突き詰めれば顧客の姿であり、彼らの声なのです。ウェブ全体の行動データだけから顧客の姿をあぶり出そうとするのではなく、アンケートやユーザーテストでユーザーの声を集め、データはむしろそれを補足する役割にした進め方が、より確実に顧客の姿を見せいてくことになるでしょう。
ウェブデータのアナリストから、顧客を浮かび上がらせるカスタマー分析のプロフェッショナルへ。来年は、その分析データの種類と手法を広げていくことが求められています。
アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
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