コラムバックナンバー

今年、あなたはどんな分析ツールに興味を持ち、触れてきましたか?

私自身を振り返ると、Google アナリティクスが新しくなったのでそちらをいじり、BigQueryでクエリを叩き、Tableauを触ったと思ったら、データポータルのテンプレートを探していて、Pythonの教科書を横目で見つつ、結局、Google データシートにAPIで取り出したデータをまとめていたりしました。
先日の集中ゼミ「半日で徹底的に学ぶ データ分析もやっぱりエクセル」では、山崎由愛さんの講義でエクセルの進化に目を見はり「なんだこれは。VLOOKUPを使わなくてもこれだけできるなんて。やっぱりエクセル最強!」と月夜の銀座で叫んでいました。

しかし、はたと我に返ると、目まぐるしく変わっていく分析環境とツール群に、自分を見失っていることに気づき、「こんなことじゃいけない。本当の分析をしなければ」とベッドの中で密かにこぶしを握って決意を新たにしていましたが、気がつくともう12月になっていますね。

どちらかといえばツールに振り回されがちな分析者として改めて思うのは、「人」が運ぶ情報がやっぱり大切だというお話です

データ分析で答えを出すぞと意気込んで、ずっとデータを見ていたり、ツールと向き合っていると、本質的な目的や課題を忘れがちです。分析は現状の課題を解決し、ビジネス改善や改革をもたらすための作業です。
課題や改善の価値は「顧客」と「社員」が向き合う活動の中で発生しています。データはあくまでそんな人の活動が映されてできた影のようなものです。
データや情報を見る際に、必ず言われる「一次情報にあたれ」というアドバイスがあります。そのアドバイスの意味するところは、加工されたり、バイアスがかけられた情報だけを見ていると間違った答えを出してしまうぞ、という警告なのです。しかし、考えてみれば、本当の一次情報はデータを生み出した「人」にあるわけです。屁理屈のようですが「一次情報」の源流はまさに顧客であったり、顧客の活動と向き合う社員が持っているはずです。

しかし、単純に分析の前に会議を設けてヒアリングをすればよい、というわけではありません。
もちろん、それは大切な作業ですが、やっかいなのは、その「人」の選び方や、ヒアリングの仕方も、間違えると分析を捻じ曲げることになりがちなのです。大事なのは顧客の声や反応をよく知っている人の本音に触れることなのです。

たとえば、日本の会議では、現場を一番知る人に限って、発言を控えて黙っている風景をよく見かけます。声の大きな人に気を使って、本音ではないことを発言していることもあるのです。
会議の席では、声の大きな人と向き合いつつ、背中についた触角で、静かな現場よりの人にセンサーを伸ばすことが必要なのです。
会議とは別の席で、その人と一対一の場を持ったり、時にはランチを食べる、夜の飲み会をセットするなどして、本音を引き出していきます。面白いことに、会議の進む方向とは別の本質的な課題がそういう場所で出てくることがあります。

そうした作業を通じて、自分がデータに向き合って立てた自信満々な仮説が、打ち砕かれていく経験を何度も重ねてきています。「分析者は自分が立てた安易な仮説を打ち砕かれた数だけ成長するのだ」
偉い分析者になったら、若者にちょっと言ってみたいセリフです。

でもこれは大事なことだと信じています。
データ分析の工程には、現場を知る人と本音で向き合う時間を必ず組み入れることが大切です。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
『ケイキ君と一緒!: 幕末 最後の将軍 徳川慶喜「もしも」の物語』
幕末沼 徳川慶喜よくある質問

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