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アマゾンはじめ商品レビューやレストランのレビュー、あるいは満足度調査の評価について、日本が他の国に比べて点数が低くなる傾向がある。そのような経験をしたことはないでしょうか?

私自身は、グローバルなIT企業で技術サポートを行っていた時期があり、そのとき、この「日本人の評価が辛いぞ」問題にぶつかった経験があります。
満足度調査の場合、特に欧米と比較すると、一段低い点数になります。
5段階的評価であれば、欧米で5が多いのに比べ、日本では3や4が多く返ってきます。7段階の評価も実施しましたが、この場合はさらに低くなり、欧米では7が多い中、日本の満足度は5や4が中心になります。NPS (ネットプロモータースコア) でも11段階評価で8-9がつきがちです。これはNPSの基準では低いため悩む担当者が多いようです。

5月に出版された「Amazon最強バイブル 2019 最新版」という雑誌(ムック版)に、アマゾンの商品レビュー各国比較という興味深いデータが掲載されていました。

その雑誌記事では、「Amazon Echo Dot」の商品レビューを各国比較しています。
その結果、米国、イタリア、英国、オーストラリア、カナダでは5が圧倒的に多い中、日本とフランスだけは平均でも4以下になっています。
例えばアメリカ人の商品レビューは「音楽やラジオを聴くには不満があるが、それ以外の機能面ではバージョンが進むごとに確実に良くなっている」と、足りない点にバランスよく言及しつつも、全体に改善しているので評価は5となります。
これが日本人の場合は「音質、音声認識の改善、コスパをいい感じに調整したモデルではあるが、USB給電じゃなくなって残念」なので4となっています。
日本では「欠点があるのでそこを改善すれば5にしてあげる」という姿勢です。1点の差ですが、まったく真逆の評価姿勢です。

日本には「松竹梅」文化があり、一番上の5はわざと選ばない傾向があります。また「通信簿」で育ってきたせいで、5がつくのはかなり優秀な100点の人の評価で、4でも十分上位という感覚があります。レストランのレビューで時々見かけるのは「美味しいし接客も完璧」とコメントして4が付いているという風景です。
それ以上に、常に「改善点」や「反省点」を見つけて「頑張り」を求める気質があるのでしょう。

この「日本人の評価が辛いぞ」問題に、あまり良い解決策はありません。
1.日本の評価が辛い傾向を説明して、(紹介した各国のレビュー比較は参考になるかも)日本だけ平均の満足度を1点低くしてもらうなど日本基準で運用する。
2.一番上の選択肢を「非常に満足」からただの「満足」に文言を変える。
3.満足か不満の2段階での評価軸に変える。
などの取り組みが考えられます。しかし、果たしてそれが本当に良いのかは疑問です。
私も一度日本だけ独自基準に運用を変えることに成功しましたが、必死の工作も、新しい外国人の上司に変わった途端「評価基準は統一」とリセットされてしまいます。「日本だけ特別」は通じにくいですし、あまり強く主張し続けるのも健全ではありません。

もちろん、細部にも決して手を抜かない姿勢が、日本製品の品質を高め、海外からも高く評価されている。これは日本人が誇るべき文化なのだという意見もあるでしょう。
職人同士、師匠と弟子の関係のように密な場であれば厳しく接する文化は良いかもしれません。ただネットなどオープンな場での評価やグローバルな中で比較される機会が増えると、減点主義の文化は悪影響が多くなると思います。

解決策がない上に、「文化」だと言えば問題ですらないのかもしれません。
ただ、私個人は、減点主義的姿勢を変えて、いい点を第一に評価しつつ改善点も指摘する、という姿勢を心がけ、少しでも広げていこうと思います。
そうした変化を求める声がゆっくりとしたものでも広がっていけばよいと考えます。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

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