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平成30年度の情報通信白書を見ていて、ICTイノベーションについて日米比較の調査が目にとまりました。
ICTイノベーションのためにツールを導入するだけでは変革はできず、利活用につなげなければいけない。そのためには「組織の変革」が重要であるという記述がありました。
興味深い調査結果として、ICT人材の日米比較のデータがありました。ICT人材の絶対数に大きな差があり(日本: 105万人 米国: 420万人)、特徴的なのは日本のICT人材がベンダー側に偏在している(日本: 72%がベンダー 米国: 35%がベンダー)ことが挙げられていました。
また、日米のソフトウェア比率の調査結果で、日本ではパッケージの活用比率が低く、逆に受託開発率が極端に多い(日本: 受託88% 米国: 54%)データも提示されていました。

これはICTのお話ですが、データ分析やデータサイエンスに置き換えても、おそらく状況は似ていると想像します。
つまり 1) 分析人材が少なく、2) ベンダー側に偏在し、3) 個別なカスタマイズ依頼が多く、4) 組織に影響を与えないで改善に取り組もうとする、という状況です。

アナリティクスアソシエーションで参加者や講師と話す機会があると、「分析から改善提案をしても組織や人が動かない」という苦労話が多く聞かれる印象があります。
どうも日本では、データ分析にも、組織を動かすために必要以上に激しい努力が必要なのではないでしょうか? タダでさえ少ない分析人材に、他部門を説得する高い負荷がかかる。そういう状況で改善が思うように進まずにストレスが大きくなる。これは少し理不尽な感じがします。

外資系企業を3つ経験してきた私の拙い経験から組織のあり方を振り返った時、そこには根本的な違いがあります。

例えばIBMでは「会社名のIBMは “I’ve Been Moved”の略だ」という典型的なジョークがあります。常に組織変更をしている会社というわけです。
IBMに限らず、私の経験した米国企業はかなり頻繁に、それこそ毎年組織が変わっていきました。それも小手先の変更ではなく、レポートラインが米国から日本に変わったり、事業部ごとのカンパニー制にした翌年に「私たちは一つになる」と宣言して、カンパニーの枠組みを解消したり、一つ一つが大きな方向性の変更を伴います。

もちろん、これは褒められた話ではなく、現場は確実に混乱します。新しい組織と上司に慣れてきたし、よしこれから成果を出すぞ、と思った途端に上長が変わってしまうのですからたまりません。

一方でいい面もあります。人事評価は、以前の業績や評価、たとえ失敗をした悪い結果が直近にあっても、以前のイメージはリセットした上で、純粋に今期がどうだったかという面を評価する傾向があります。

パッケージ導入でも似たような違いが出ます。
米国はパッケージの標準機能に運用の方を合わせていき、使う側が変わっていきます。むしろパッケージの導入は、組織や運用を効率的に変えることが目的です。

逆に日本では、使っている人たちの変化を最小限にして、パッケージを変えようとカスタマイズに多大な工数をかけます。「人」に及ぶ変化を極力避けようという力が働きます。結果的にパッケージの良さが引き出せず、誰にとっても使いにくいシステムになる。これはSIの現場ではよく聞く話ですね。

ある時、私なりに気が付いたのですが、要するに「変化」自体が「文化」というか彼らのエンジンなんだとそう思い至りました。人も組織も変わっていくもの、上位マネージメントの仕事の一つは組織変更による変革だと、ほぼ無意識にそう思って動いている節があります。
だからと言って、いい加減かというとそうではなく、組織を変えるための理論武装はきっちりとしています。その根拠にはデータが重要なので、データの果たす役割が大きくなります。変化の川の中をデータという水が流れています。

逆に日本では、変化を伴う改善には相当の抵抗があります。データ分析をして、成果を出すためには、組織や運用を変える必要があります。変化を嫌がる相手をどう説得するのか、無理なお願いを考えはじめます。データより、個人の意見など言葉の方が威力を持ちます。

日本と米国を一般化して比較するのは安易すぎる面もあるでしょう。
ただ、データ分析やデータサイエンスによる事業変革を進めるなら、組織や人の変化が文化として定着していく必要があるでしょう。別の言い方をすれば失敗を受け入れて流していく、データの根拠がある変革なら積極的に進めていく。根底にはそんな文化が必要だと考えています。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
主な会社経歴は、日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google、コニカミノルタジャパン。
Googleでは、2011年から7年間、Googleアナリティクスの技術サービス・マネージャとしてアナリティクスの普及をリードした。コニカミノルタジャパンでは、デジタルマーケティング戦略部の部長として、事業会社のデジタルマーケティング戦略を支援しつつ、ソリューション戦略をリードする役目を担っている。
その他、2000年には自らSEO企業を創業、また数々のSEOやアナリティクスの書籍も執筆してきた。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM検索連動型キーワード広告 Web担当者が身につけておくべき新100の法則』。
2008年に代表として協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」を設立し、現在に至るまで10年以上、その企画運営を行っている。2015年6月に協議会アナリティクスアソシエーションから『新しいアナリティクスの教科書』(インプレス)を出版

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