コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2019年6月12日号より
「シグナル&ノイズ」というデータ分析の書籍に以下のような記述があります。
「情報の量は急増しているが、それに比例して有益な情報が増えているわけではない。ノイズに対するシグナルの比率は低下していると言ってもいいかもしれない。私たちは、この2つを区別できるようにならなければいけない」
上記はデータ分析における普遍的なお話です。
私自身は、ウェブ解析の取り組みにも、この「ノイズ」への意識を強く持つ必要があると考えています。
これまでウェブデータはGoogle アナリティクスがデータを取ってくれるので、素直に全量解析でデータを把握し、そこからセグメントなどで絞り組んでいく、という取り組みで進めています。「ノイズ」についてはあまり気にせずに、全量データをもとに切り口を変えていくという取り組みでした。
しかし、Google アナリティクスなどウェブ行動ログデータの元になるCookieを基礎としたデータの信頼性が不安定になる中、解析の姿勢そのものを変更する必要があるかもしれません。
背景としては、昨年から何回か触れてきたように、1) モバイルユーザー急増によるユーザー行動の断片化、2) GDPRはじめ個人情報保護の高まりからデータ取得にユーザー許可を求める動き、そして3) アップルのITP(Intelligence Tracking Prevention) 強化によるCookieデータ収集の制約、といったことがあげられます。
それらの動向が進んできた今、Google アナリティクスで私たちが見ているデータは、必ずしも長期のユーザー行動を正しく反映しているとは言えなくなってきています。
Google アナリティクスそのものは、まだまだ必要なツールですが、一方でそのデータへの向き合い方を変えていく必要があるのではないでしょうか?
たとえば、Google アナリティクスに記録されるデータのうち、確実にユーザーがつながっていると考えられる会員IDを記録したデータだけを抽出する。あるいはアンケートなどと併用して許可を取ったデータと結合してユーザー層を分類するなどです。
「全量データ」の行動分析から「より確実な顧客行動の抽出分析」への転換です。
こうした取り組みにはもちろん良し悪しがありますが、もし、その分析がお店や企業の愛好者(ファン)を育てていく、という取り組みならビジネス効果を期待できるでしょう。
まとめると
1. データの中からノイズを除去する
2. 本当に大事なお客様のデータに絞り込む
3. 数値データ以外の他の情報と合わせてお客様の声に向き合う
今後のデータ分析においては、こうした取り組みへのシフトが求められているように感じています。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
2024/10/30(水)
オンラインセミナー「コンテンツのKPIと評価~GA4を使った効果分析~」|2024/10/30(水)
オウンドメディアを運営し、コンテンツマーケティングに取り組む企業が増えていますが、「どのように評価すればよいかわからない」「コンバージョンが …
2024/10/10(木)
オンラインセミナー「GA4でアプリ計測の基本 アクセス解析担当者向け」|2024/10/10(木)
GA4導入が進み、WebサイトをGA4で分析することに慣れてきた方が多いのではないでしょうか。 しかしアプリについては「まだ手を付けられてい …
2024/09/25(水)
オンラインセミナー「Microsoft Clarityで深める真のユーザー理解」|2024/9/25(水)
Microsoft Clarityを使っていますか? データ計測がこれまでより不十分になることが懸念されるなか、ユーザー理解に活用できるMi …
【コラム】最終的に固有名詞で指名検索されるにはどのようなコンテンツマーケティングに取り組むべきか、と考える
株式会社真摯 いちしま 泰樹生成AIの急速な展開にやや戸惑い気味です。普段の業務や調べ物に生成AIを利用する機会が増えましたが、コンテンツ制作やアウトプットの課程が変わ …
【コラム】ブラッド・ピットと阿部慎之助監督 どちらのデータ改善策が勝負強いのか?
アナリティクスアソシエーション 大内 範行巨人がリーグ優勝を果たしました。巨人は今年から阿部慎之助が原監督に代わって20代目の監督になりました。監督の最初のシーズンで、阿部慎之助監督 …
【コラム】ダッシュボード依存症からの脱却:データ活用で本当の価値を生み出す方法
Option合同会社 柳井 隆道データ基盤やCDP(顧客データプラットフォーム)を導入したものの、ダッシュボードを作るまで、データを見るだけで満足してしまう、燃え尽きてしま …