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本日のコラムはデータといってもスポーツ観戦の観客動員数のお話です。

サッカー日本代表のアジアカップは準優勝という結果に終わりました。とても残念な結果でしたが、気になったのは歴代日本代表で最高のクオリティを誇るチームにもかかわらず、視聴率が若干低迷気味なことです(2011年 準決勝 35% 決勝 33% 、2019年は準決勝 15% 決勝 21%)。森保監督が、素晴らしいチームでよいサッカーをして勝ち続けても、一般の人々の関心は高まりません。

スポーツの世界で人気は大事で、視聴率同様、スタジアムの観客動員数は大事な指標のひとつです。
「チームが強くなればお客は増えるのか?」
果たしてチームの勝率と観客動員数に相関関係はあるのでしょうか? 誰しもそんな疑問を持ったことがあるでしょう。
実際にネットを検索しただけでも、調査論文は、日本でも世界でもたくさんあるようで、サッカーに限らず、野球やバスケットボールなどプロリーグの世界でいくつもの論文や調査結果が見つかりました。

こうした調査に共通した答えは、「勝率と観客動員数に相関があるチームが多いが、そうでないチームもある」というものです。
勝利と動員数が連動しないチームの代表は、サッカーなら浦和レッズ、野球なら阪神タイガース、メジャーリーグならシカゴ・カブスといったところが代表例のようです。
野球の阪神タイガースは「巨人に負けて優勝しない方が都合が良い」つまり、観客が入って、選手の年俸を上げなくてすむのだ、とオーナーが不都合な真実を発言して問題になりました。
Jリーグ初期の浦和レッズは、下位が指定席のチームにもかかわらず、熱心なサポーターに支えられ、観客動員数は常にトップでした。むしろ弱いから観客が入るのか? 強くなると観客が減ってしまうのでは? と錯覚してしまう印象でした(ちなみに近年の浦和レッズはすっかり強くなりデータ上も別チームです)。

一方で「強すぎるのもどうなの?」という新たな疑問が登場します。
勝率と観客動員数の相関を知らなくても、一部のオーナーはお金に物を言わせて有名選手を高い移籍金で買いまくります。もちろんチームを強くして人気や価値を上げたいからです。
これも調査している論文がいくつかありました。いずれも「強すぎて早々と優勝が決まってしまう場合、チームだけでなくリーグの価値もかえって落ち、観客動員数も減少してしまう」という結果のようです。
勝率ばかり追求し、身の丈に合わない無駄使いをすると、強すぎて観客が減るという結果もありえるのです。

「じゃあ、勝負が拮抗したリーグの方が観客動員数が増えるんじゃない?」
これについてもサッカーのJリーグで調査結果が見つかりました。
確かに勝負が拮抗したチームほど、あるいは優勝争いが最後までわからないシーズンの方が、観客動員数が増える傾向が顕著です。
しかし、面白いことに、この相関が見られるのはJ1の場合だけなのです。二部リーグのJ2では、この相関は当てはまりません。

私ももっぱらスタジアムに行くのは万年J2のチームです。そして勝率とかはあまり気にしていません。そのチームに愛着があったり、スタジアムそのものが好きだったり、勝てない日が多くてもスタジアムには足を運びます。二部以下のリーグではそんなファンも多いのでしょう。

「強いチームを作れば、観客も増える」
誰もが納得しそうな法則も、こうしてちゃんと調査すると、違う風景が見えてきます。観客動員数を増やすことと、チームの強さは必ずしも連動しない。
昨シーズンのJリーグでも、名古屋グランパスエイトはマーケティングに力を入れて大きく観客動員数を伸ばし、史上最大の観客動員数を記録しました。しかし、肝心のチームは降格争いをしているひどい状態でした。

似たような話はスポーツ以外でもありそうです。
店員の生産性を上げれば売上が上がるわけではなく(いるだけで売れるという不思議な店員がいたりします)、給与を上げれば成果が高くなるとも限らず(離職率が高まるケースもあります)、広告予算を投じればコンバージョンが増えるわけではなく(率はむしろ減る場合が多いですね)、高い売上目標を達成するために安易な安売りを重ねるのは悪手だったりします。
何より他社の成功法則は、ターゲットや市場規模、成長ステージが違えば、当てはまらない場合が多いのです。

来年度の計画を立てる時期にいる方は、安易な法則で数値を積み上げたり、他社事例を追いかけて計画を立てる前に、自分たちの仮説を調査する方法と予算を検討してみるのも大事ではないでしょうか?

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
主な会社経歴は、日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google、コニカミノルタジャパン。
Googleでは、2011年から7年間、Googleアナリティクスの技術サービス・マネージャとしてアナリティクスの普及をリードした。コニカミノルタジャパンでは、デジタルマーケティング戦略部の部長として、事業会社のデジタルマーケティング戦略を支援しつつ、ソリューション戦略をリードする役目を担っている。
その他、2000年には自らSEO企業を創業、また数々のSEOやアナリティクスの書籍も執筆してきた。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM検索連動型キーワード広告 Web担当者が身につけておくべき新100の法則』。
2008年に代表として協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」を設立し、現在に至るまで10年以上、その企画運営を行っている。2015年6月に協議会アナリティクスアソシエーションから『新しいアナリティクスの教科書』(インプレス)を出版

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