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「ユーザー」あるいは「人」単位の行動分析。もっとも大事なアナリティクスの軸はこの点にあります。デバイスを複数使うユーザーが増えているとしたら、クロスデバイスでのユーザー行動を知ることはとても大切です。
最近、Googleアナリティクスで、クロスデバイス計測の新しい機能がリリースされましたので、改めてクロスデバイスの計測技術を追ってみます。

まず、Googleアナリティクスの新しいクロスデバイス分析レポートが発表されました。まだ全員にはリリースされていませんので、一部の方のみ確認できているようです。
これまでもGoogleアナリティクスには、クロスデバイスレポート機能がありましたが、あくまでサイトの会員ログインなどを「User ID」機能で実装する仕組みでした。実装の手間もかかり、会員ログインを持つサイトしか使えない機能となり、利用範囲が限定されていました。
(この機能がリリースされた当時は、なんでこんな中途半端な機能をリリースするんだ、と悪い意味で驚きました)

今回リリースされたクロスデバイスレポート機能は、「User ID」機能を使わなくても、クロスデバイスの行動が分析できます。管理画面で「Google signals」設定を「オン」にするだけなので、ほぼすべての人が使えます。本来あるべきクロスデバイス機能が、ようやくリリースされたと言えるでしょう。
下記の記事に詳しく書かれていますが、全体のアクセスの中で、デバイス間の重なりを確認したり、「目標」に至るデバイス経路が確認できるレポートがリリースされるようです。
【GA速報】自動クロスデバイストラッキング機能が新登場!User ID設定不要!」(株式会社プリンシプル)

Googleアナリティクスの他にも、いくつかの企業が、このクロスデバイス機能を提供しています。
注目している一つはDrawbridgeという会社です。米国カリフォルニア州のベンチャー企業で、クロスデバイスのデータを、DMPや広告ツール会社へ提供しています。日本では三井物産が販売していて、昨年末には、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)が自社DMPで、このDrawbridgeのデータを提供すると発表しています。

このDrawbridgeの技術を公開されている文書で読み解くと、基本はIPアドレスとCookieのデータを基礎に個を特定し、デバイスをまたいだ行動は、機械学習を使った独自アルゴリズムで認識しているようです。
ユーザー特定率は97.3%とありますので、正確性や網羅性も高いようです。日本では7000万人強のデータの紐づけができているとのこと。モバイルウェブだけでなく、モバイルアプリとウェブのユーザー特定も行っているようです。

もう一つの注目は国内企業です。広告計測ツールを提供しているアドエビスが、この8月にクロスデバイス機能をリリースしました。アドエビスの集計データに加えて、他社の提供データも組み合わせて、やはり機械学習を使って実現しています。
すでに会員ログイン機能などを使って、クロスデバイスの行動がわかっているデータが基礎(教師データ?)になり、ウェブ行動上のシグナルを判定して、同じユーザーを特定する仕組みを実現しているようです。
(あくまで推測ですが、短い時間にPCとモバイルで同じページを見れば可能性は高いでしょう。たとえばそんな時間軸と行動データ、そこに場所のデータも組み合わせることができれば重要なシグナルの一つになるでしょう)

この3社ともに、デバイスやブラウザをまたいだ行動を特定するために、機械学習を使用しています。ウェブ行動データのシグナルの中から、同じユーザーを示す根拠となる関連性の高いデータを導き出しています。

しかし、意外に落とし穴となるのが、そもそもの基本のユーザー認識の仕組みです。当たり前ですが、デバイスをまたぐ前の、同じデバイスやブラウザの行動データがきちんと取れていないと、話になりません。
その部分のユーザー特定に何を使うか、で精度は大きく変わってしまいます。
Drawbridgeは、その部分でIPアドレスやCookieを使っているような記載が中心ですので、昨今のアップルのSafariブラウザのITPの急速な動きを考えたとき、iPhoneユーザーの動きをきちんと追えているのか、その部分でのキャッチアップが気になるところです。

同様にアドエビスでも、これまでのアドエビスのウェブログは 3rd Party Cookieが中心でしょう。これまでの過去のユーザー行動のシグナルは十分に効果的に使えても、今後精度がどうなるのか? 提携しているデータも大量に使っているようですので、精度が維持されるのか今後注視していきたいと思います。

Googleアナリティクスの場合、個の認識はGoogleアカウントへのログイン情報が中心になっています。これに加え、非ログインユーザーの特定や、データの正確性を補正するために補助的に機械学習が活用されていると推定されます。
Googleアカウントへのログインが今後も安定して増え続けていけば、信頼性は一番高まっていくことが予想されます。

一方で、Googleはどこよりも個人情報保護を厳しく管理する企業です。個人個人の行動を深く見たい、あるいは外部のCRMデータと統合して見ていきたい、という深掘り分析の要件には、対応が遅い可能性があります。

もう一つ、そもそも今後クロスデバイスの行動が、増えていくのか?減っていくのか?という点も気になります。
手元のスマートフォンで閲覧から買い物まで、あらゆることができてしまえば、PCと行き来することも少なくなるかもしれません。あるいは、サービスによっては、デバイスの一方がPCではなく、テレビになるかもしません。
そうなった場合、クロスデバイスレポートの重要性は相対的に低くなり、むしろスマフォユーザーにどうコミュニケーションを取っていくのか、その施策に集中した方が、懸命かもしれません。

まずはGoogleアナリティクスのクロスデバイスレポートで全体の重複度合いを確認し、あなたのサイトが、クロスデバイスの施策を重視すべきか、モバイルにフォーカスして施策を強化するべきか、その点を判断していくのが第一歩だと思います。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
主な会社経歴は、日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google、コニカミノルタジャパン。
Googleでは、2011年から7年間、Googleアナリティクスの技術サービス・マネージャとしてアナリティクスの普及をリードした。コニカミノルタジャパンでは、デジタルマーケティング戦略部の部長として、事業会社のデジタルマーケティング戦略を支援しつつ、ソリューション戦略をリードする役目を担っている。
その他、2000年には自らSEO企業を創業、また数々のSEOやアナリティクスの書籍も執筆してきた。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM検索連動型キーワード広告 Web担当者が身につけておくべき新100の法則』。
2008年に代表として協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」を設立し、現在に至るまで10年以上、その企画運営を行っている。2015年6月に協議会アナリティクスアソシエーションから『新しいアナリティクスの教科書』(インプレス)を出版

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