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7月18日、特別セミナー「顧客が見えればビジネスが動く – Adobe、GA360、Tableau」が開催され、最初の講演はピクシブさんによる「サービス横断のデータ解析」がテーマでした。
ピクシブには、本体のpixiv以外にもe-Commerce やコミック販売など複数のサービスがあります。それまでサービスごとにバラバラだったデータ分析環境を統合して、ユーザー単位でビジネス改善ができる横断データ環境を構築したというのがストーリーです。
講演後に活発な質問があり、その中で「横断的なデータ統合環境構築に、どのくらいの期間がかかったのですか?」という質問がありました。
「3ヶ月」というのが副社長の清水千年さんの回答でした。事業会社がDMPを構築する期間としては、結構短期間です。司会の私は思わず「3ヶ月。なぜ短期間で実現できたのですか?」と聞いてしまいました。「Googleタグマネージャ(GTM)が入っていましたからね」というのが清水さんの回答でした。

事業部やサービスを横断したウェブデータの取得には、計測用のJavaScriptタグの設定やカスタマイズが必要になる場合が多いです。サービス横断の共通タグを新たに導入する場合もありますし、外部のユーザーを紐つけるためCookieのIDと会員IDを取得するためのカスタマイズなども必要になります。
しかし、私の経験上、この全社サイトへのタグ導入設定で、プロジェクトがいったん止まってしまう場合がままあります。

事業部横断のプロジェクトの場合、事業部間の調整が大変と言われますが、その要素は「調査」や「作業」を依頼するからです。サイトのカスタマイズ作業の場合、外注先の制作会社やCMSを導入したSI会社も絡んでくるかもしれません。
日々の作業の中で、新たなプロジェクトのために作業工数を割くのは、なにかと難しく「横断プロジェクト」の優先順位はなかなかあがりません。

GTMがすでに全サイトに導入されていれば、確かにタグの設定カスタマイズの作業への抵抗は相当軽減されますので、「事業部横断プロジェクト」のスピードを早める大きな要因になりそうです。
データ統合プロジェクトに取り組む場合、「GTMの全社導入」というのは、その後の円滑な進行のためにも必須だ、という思いを強くしました。

でも、GTMを入れれば安泰か、というとそう簡単ではありません。そもそも、GTM自体、事業部ごとに別々のコンテナIDのGTMが設置されている場合もあります。GTMを誰が実際に管理運用するのか、というのも新たな課題です。
実際、私が確認した限りでは、ピクシブさんのサイトも、GTMはサービスごとに別々のコンテナIDのGTMがはられていたり、サービスによってはGTMが設定されていないサイトもあるようです。
それでも、タグを全ページ洗い出して、直張りでタグを導入テストしていく作業と比較すれば遥かに楽になるはずです。
昨今のGDPRなどに対応した個人情報保護への対応にも、Cookieを発行するタグのスムーズな管理運用という面から、やはりGTMが不可欠でしょう。

もしあなたが事業部のデータ統合プロジェクトの担当になったら、真っ先にするのは、サイトのタグの状況の確認、そして全サイトへのGTM(あるいは同等のタグマネージャ)の導入が必須だと言えそうです。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
『ケイキ君と一緒!: 幕末 最後の将軍 徳川慶喜「もしも」の物語』
幕末沼 徳川慶喜よくある質問

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