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今回は重要で難しい決断を下す際のポイントについて、あくまで私の考えではありますが、書いてみたいと思います。

たとえばアナリティクス関連でも、大企業で全社の解析ツールをAdobe AnalyticsにするかGoogleアナリティクスにするかなど、重要な決断があります。かかわるチームや人が多くなるほど、その決断は難しくなっていきます。

と、いかにもビジネスの話のように書きはじめましたが、本音はサッカー日本代表の監督解任という決断について、もやもやが納まらないので、この文章を書いているところがあります。すいません。

決断の中には「直感」に従った方がよいものももちろんあります。
転職や彼女への告白はもちろん、ビジネス上でもサービス名の変更といった前例が有効でない決断、自分ひとりで決めるべき決断には、「直感」や「心の声」がもっとも大事でしょう。今回の話からは除きます。

そうではなく複数の組織がかかわり、多くの人が影響を受ける決断の場合、一人が「直感」や「エモーション」だけで押し切ると、あとあと周囲の「もやもや」が「疑念」に膨らんでいき、チームを壊してしまいます。
特に自分がそのエリアの第一人者だという思いが強いと、周囲に十分な説明をしないで決断を先行させてしまいがちです。
決断の純度が低ければ、あとあと説明の場面で、外部へのメッセージが意味不明になり、「単なる思い込みでしょ?」と言われてしまいます。

決断の純度を高めるために、またその決断を後から検証するためにも、決断までの「プロセス」は重要です。

まず私が取る最初の手段は関係者への聞き取り調査、インタビューです。
決断の手前には「変えないといけない」という誰かの問題意識があります。最初はどうしても「直感」や「エモーショナル」な状態が先に来ます。本当にその直感は正しいのか? 現状を客観的に把握する上でも欠かせないプロセスです。
できるだけ現場に近い人たちの多様な意見を、偏りなく集めることが大事です。
多くの人にインタビューをすると、同じ問題でも想定と違う意見、解釈が異なる意見が出てきます。このプロセスそのものが自分の経験値を向上させ、最初の決断に違う角度から光を当てることになります。

次に行うのは、ある程度定量的な評価と定性的な評価をバランスよく積み重ねる作業です。
複数の評価軸を決めて、周囲と一緒に「どちらに進むべきか?」「何を選ぶべきか?」を決めていきます。

決断のプロセスに、それなりにファクトや定量評価を加えることは、後からの検証のために欠かせません。
ただ、実はこうしたインタビューや客観的な評価のプロセスは、決断の本筋ではありません。
周囲をできるだけ巻き込み、変化を大きな力にしていくプロセスを通じて、決断を自分ごとから、チームの共通の思いに変えていくための作業です。

一方で、周囲を巻き込むことでノイズが増えて決断がぶれる恐れもあります。そうならないよう、こうしたプロセスの中心に本当に大事な解決すべき課題を定義しておくことです。
あなたの決断がソリューション会社のサービスの決定なら、やはり「お客様のもっとも重要な課題解決」を決断の芯におくのがよいでしょう。
「上がそう言ったから」や「すでにお金がかかっているから」「お客に言ってしまっているから」といった本筋ではない「本当は重要ではない1000のことを排除する」(スティーブ・ジョブズの言葉)のにも役立ちます。

さて、ここまで決断にはプロセスが大事、という説明をしてきて、それをひっくり返すようですが、結局は決断でもっとも大事なのは「タイミング」です。人生はタイミングにはじまりタイミングに終わると言っても過言ではありません。

どんなにちゃんとしたプロセスを経ても、タイミングを間違えれば、すべてが台無しになってしまう可能性すらあります。
そういえば解任された代表監督の最初の叫びは「なぜこのタイミングなんだ!」でした。

最後は決断するタイミングの見極めこそが、トップの役目だと言えます。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
『ケイキ君と一緒!: 幕末 最後の将軍 徳川慶喜「もしも」の物語』
幕末沼 徳川慶喜よくある質問

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