コラムバックナンバー

生成AI検索が俄かに話題になっています。それに合わせて、LLMOだとか、AIO、GEOと新たな用語が飛び交っています。でも、発売したばかりのゲームの薄い攻略本ですから、今は本屋で斜め読みする程度でよいでしょう。
今回のコラムでは、カメラを引いた視点から、生成AI対策を考えてみたいと思います。

生成AIの進化:記憶力のいい秀才児から頼れるリサーチャーへ

まずは生成AIが、どう進化したか、検索行動に関連する視点から、ざっくり見ていきます。
目まぐるしい進化を遂げているので、すっかり忘れてしまったかもしれませんが、初期のChatGPTは、ちょっと難しいことや、新しいことを聞くと、すぐいい加減な答えを返していましたよね。
あの頃の生成AIは、記憶力のいい便利な秀才児でした。なんでもスラスラ答えてくれるのはいいのですが、記憶は少し古くて、おまけに知らないことを、もっともらしく答えました。役に立たないことも多かった。

最近の生成AIは、すっかり別人です。
私たちのちょっとアバウトな質問でも、正確に意味を汲み取ってくれるようになりました。「ええと、あなたの聞きたいことは、こういうことですね」と、密かに意味を分解した上で、内部的に新たにプロンプトを組み立てます。そして、ちゃんと最新の資料をその場で大量に調べて答えてくれます。何を情報源にしたのかも、きっちり揃えてくれています。

AIは、もはや記憶力が良いだけの友人ではありません。最新の論文や新聞まで揃えた図書館に住んで、関連する大量の資料を瞬時に調べて笑顔で答えてくれる、そんな頼れるリサーチャーに生まれ変わっています。

私は、ChatGPTだけの話をしているわけではありません。
Google検索も、AI OverviewやAI Modeを発表しています。それはつまり、私たちが何かを知りたいと思った時に呼び出すあの検索窓が、どんどん気が利く相棒になっていくわけです。

AIに選ばれるコンテンツの3つの条件

では、私たちは、こうした世界で、どんなコンテンツを提供していけばいいでしょうか?
簡単に言えば、賢いAIが参照する本や論文、ニュースになるということです。もう少し言えば、ユーザーの発想する文脈世界の中で、指名される対象になればいい、ということでしょう。

いくつかの方向が考えられます。

ひとつ目は、皆が知りたいと思う文脈で、必ず参照される権威、オーソリティの本や著者になっていることです。
もうひとつは、ニッチで狭い質問に採用される、専門性の高い独自コンテンツを提供していくことです。
三つ目は、皆が欲しいものを尋ねた時、比較選択で選ばれるトップ3の想起ブランドになっていることでしょう。 大量の雑誌を調べた上で「この中から選べばいいみたいです」と答えるわけなので、そこに含まれる必要があるということです。

AIが情報を選別し、要約し、提示する過程で、「信頼できる情報源」「専門的な知見」「認知度の高いブランド」が優先的に参照される。生成AIは間違いなくその方向で、どんどん賢くなっていくでしょう。

具体的にどの方向で取り組んでいくか、そして戦略と戦術をどう選択するか?それは、企業規模やサービス、ターゲットの顧客や業界に合わせて決めていくことになります。

これは、もう従来のSEOなどという狭い世界の話ではありません。
最近になって、特に海外のSEOの人たちが、盛んに「ブランドが大事」と言い始めているのは、こうした流れを捉えているからだと、私は理解しています。

ブランド戦略を再定義する絶好の機会

より想起され、指名されるブランドになる。そのためには、まずPRやソーシャルにも力を入れていくことが大切です。
そして、検索広告をはじめとするネット広告も同様です。直接のコンバージョンやCPAだけ見て刈り取り中心で予算を消費していると、気づかないうちに認知度が低下しているでしょう。この切り替えは簡単ではありませんが、ある程度の予算を認知を高める広告に投資していくことが大事になってきます。

そして、これは総合格闘技です。
SEO、広告、PR、ソーシャル、それぞれ独立で取り組むのではなく、全体のブランド戦略、マーケティング戦略の中で集約していく。個人であろうと企業であろうと、自分の強みを高めて、指名検索を多く得ていく、クロスマーケティング、まさに総合的なマーケティング活動になっていきます。

でも、それって決して目新しいものではありませんね。
オーソリティの確立、専門性の追求、ブランド想起の向上――これらは従来のマーケティングやブランド戦略の基本中の基本です。

生成AI検索の時代、従来のマーケティング手法が通用しなくなるのではありません。新たなマーケティング手法なんて必要ありません。実は基本中の基本、王道のマーケティングの価値が、より明確になる。そんな時代がきたということです。
生成AI時代を絶好の機会と捉え、改めてブランド戦略と戦術を再定義する時です。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

一つ前のページに戻る

a2i セミナー風景イメージ

あなたも参加しませんか?

「アナリティクス アソシエーション」は、アナリティクスに取り組む皆さまの活躍をサポートします。会員登録いただいた方には、セミナー・イベント情報や業界の関連ニュースをいち早くお届けしています。

セミナー・イベント予定

予定一覧へ

コラムバックナンバー

バックナンバー一覧へ