コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2025年5月14日号より
日本でも、Googleの検索エンジンで、AI Overviewの表示が増えてきました。
AI Overviewが表示された検索クエリで、クリック率が大幅に下がったという報告も出てきました。
クリック率が減るのは大問題なので、今後はAI Overviewを前提にしたSEO対策、AI Overviewに選ばれるコンテンツ作りなどが盛んに議論されるでしょう。
ただ、私はこの変化は、とてもよい流れと捉えていて、言葉は悪いですが、人間の「AI Overview対策」は無駄なあがきに終わると考えています。
GoogleのAI Overviewは、Googleの生成AI Geminiを基盤技術とし、複数のウェブページから情報を収集・分析して、簡潔な回答を返します。
AI Overviewは、検索クエリ、検索フレーズという極めて少ない情報から、その背後にある真のニーズを探り当て、ユーザーが本当に知りたいことを瞬時に簡潔な文章に要約しています。
では、生成AIが好むコンテンツの型はあるのでしょうか?それがわかれば、AI Overviewにピックアップされやすいコンテンツが作れるはずです。
おそらくヒントは、生成AIが出す文章そのものにあるでしょう。
生成AIの出す文章は、検索者の疑問や課題の意図を理解し、明確な要点を優先して答えるスタイルです。これを仮に「質問駆動・結論先行型」と呼ぶことにします。
これに対し、私が書くこのコラムの文章は、より文章全体の流れを重視し、私の言いたい結論に誘導していきます。さらに昨今のコンテンツマーケティングは、クリック重視のあざとい見出しを使うスタイルです。こちらを仮にクリック駆動・結論誘導型と呼ぶことにします。
A)クリック駆動・結論誘導型
– 見出しや出だしなど起動の共感ではじめる
– 読み物の流れ、雰囲気を重視する
– 発信側から伝えることが主目的
– 発信側の結論や思惑、個性が出る
B)質問駆動・結論先行型
– 聞き手の意図の確認ではじめる
– 回答・結論を先に書くことを重視する
– 相手の問題解決が主目的
– 簡潔さ、わかりやすさに終始
たとえば、住宅ローンの説明をする文章を書いてみましょう。
A)のタイプの例を挙げてみます。
「住宅ローン 多くの人が勘違いしているポイント」など、引きつける題名を用意し、日銀の利上げのニュースに不安に感じる文章で共感を与えます。
次に「住宅ローンには様々な種類があります」と、全体像の確認から陥りやすい勘違いの本論につなげていきます。発信側の結論や目的まで誘導して終わります。
一方、B)の質問駆動・結論先行型スタイルの例を次に挙げてみます。
「住宅ローンはどのように選べばよいか?」という質問形式の題名で、いきなり「住宅ローンは固定金利を選ぶべきか?答えは、長期的な安定を求める人は固定金利、当面の返済額を抑えたい人は変動金利です」と結論ではじまります。そのあと、理由をライフプランごとに説明し、まとめで結論を繰り返します。
この2つの型は、決して新しいものではありません。
生成AIやAI Overviewの利用が増えれば、その分私たちが、「質問駆動・結論先行型」の文章に接する時間も増えていきます。
今後、コンテンツをAI Overviewに最適化していくと、さらにネットのコンテンツが生成AIに似たスタイルになっていくと思います。
これは、悪い方向でしょうか?
クリックが減ることは大問題ですし、個性のない文章が量産されていくのはよい流れではありません。
そういった問題を認識しつつも、私はよい流れだと考えています。
クリックが減ること、これは検索する側からすれば、クリックの前に問題が解決することを意味します。検索体験の快適さが増します。
生成AIの個性のない文章が増えますが、逆に言えば見出しに誘導されて、質の悪いコンテンツにがっかりするような、あの後味の悪い体験が減ることになります。
全体として、Googleの検索体験は、より快適になるのではないでしょうか?
ちょっと前まで、Googleの検索の品質が悪くなったと批判がおきました。
冷静に見れば、それは品質の悪いコンテンツがネットにあふれたからです。無駄なクリックを、アルゴリズムが評価してしまった結果だったのです。
生成AIの品質は、驚異的なスピードで改善されていますから、私たちの検索体験は、今後より快適になっていくでしょう。
検索の利用は減らないでしょうし、もしかすると増えていくのではと思います。
問題はコンテンツを作る側です。
こちらも、よい方向に進んでいくと考えていますが、その話はまた次回にしたいと思います。
――と、次回に誘導して終わります。すいません。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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