コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2025年2月19日号より
ここ数年で個人情報保護などプライバシー保護の法律面の理解を深めて、いくつかのプロジェクトに関わるようになりました。
今では法律理解は、マーケティング担当者に必須と考えるようになりました。
一方で中途半端な法律知識の危なさも体感していて、常に謙虚でありたいと感じています。
本日はそのあたりを共有したいと思います。
プライバシー保護の高まりから個人情報保護法など法律に関する情報も増えてきています。
どこから学び始めればよいか?
信頼できる方が書いた最新の書籍を読む方法と、個人情報保護士など資格を取得する道があると思います。
ウェブ検索だけで知識を得るのは、法律や判例、周辺情報が日々更新されていますのでオススメできません。
私は昨年、とりあえず「個人情報保護士」の資格を取得しました。
しかし、実際に資格を取得し、予想通りとはいえ、資格で得た程度の知識は何の役にも立ちません。
合格率は41.5%とされていますが、一ヶ月間、週末と隙間時間を使って過去問中心に取り組めば、十分合格できると思います。そして、その程度のものでしかありません。
そもそも日本の個人情報保護法だけで、デジタルマーケティングに必要な法律はカバーできません。
国内法だけでも、電気通信事業法の外部送信規律や、特定電子メール法と呼ばれる電子メールについての法律も必要です。
さらに海外からのアクセスを想定する場合、GDPRなど欧米の法律や判例の理解も必要になります。
資格を得るメリットは、そのレッテルに恥ずかしくないようにちゃんとしようと覚悟を決めることぐらいです。
本当に最低限の心構えと、簡略化された地図を持った程度で、本格的な山登りをするのは極めて危険な状態です。
重要なのはその後の実践です。というか実践がなければ、何もないのと同じです。言うまでもありません。
私は積極的に、プライバシーポリシーの策定や、個人情報活用のプロジェクトに複数関わるようにしてきました。まずはガイド付きの山登りです。プロジェクトを通じて、弁護士、司法書士、企業法務の担当者の方々と、真剣に取り組む機会を重ねることができました。
これによる収穫は、これも予想通りでしたが、法律の専門家とデジタルマーケティング担当者の間に、ボールが落ちる溝が多くある、そのことを肌感覚でつかんだことです。
私が関わってきた法律家の方々は、デジタルマーケティングと周辺技術に詳しい方々でした。Cookieやタグ、サーバーなどデジマの知識も十分ですし、GA4やGoogle広告の利用規約にも精通してくれています。
それでも、やはりボールが落ちる溝は出てきます。
そもそも、サイトに貼られているタグやCookieが何で、どんな情報を取得しているかさえ、整理把握できていません。そのタグを提供している会社や国の、プライバシー保護のレベルを確認することも必要になります。
個人情報やその関連情報がどこで取得され、他のどんなデータと結びつき、どこに保管されるか。
同意を取る必要があれば、同意を取るためのサイトの改修や記録方法の確認などもそのひとつです。
この手のプロジェクトが遅れるとしたら、その原因は法律のせいではありません。
むしろ、私たちデジタルマーケティング担当者が、法律家の質問に回答できなかったり、提示された対応策の可否や優先順位付けの判断が遅れたり、そんな理由がほとんどです。
一方、逆のケースも経験しました。
表面的な知識と確認状況のまま見切り発車をして、法律違反をしたまま個人情報の活用を進めてしまうケースです。私自身も、ひやりとした場面を経験しています。
たとえば、ECサイトで商品を購入する際、プライバシーポリシーへの同意を取る必要があり、フォームを改修する必要がありました。
けれども、そこに外部のサードパーティ決済やソーシャルログインのプロセスがあり、そちらのパスを通るユーザーの同意は十分に取れていない。そんなケースです。
こうした状況を見極めて、期限のあるプロジェクトを勇気を持って止めたり、さらに新たな費用をかけて修正対応を行うには、やはりデジタルマーケティング担当者の十分な理解と決断が必須になります。
上記のケースは、実際に発覚すれば、プライバシー情報の外部漏洩のインシデントになりえます。
法律の罰則だけでなく、報告や公表のプロセス、それに伴う企業ブランドへの影響、要は誰の名前で謝らないといけないか、ニュースに載ったらどんな見出しになるのか、発生した際のリスクを十分に理解しておくことも必要でしょう。
やはり面倒なので山登りはしないと考えるか、まずはガイドをつけて登りはじめるか?
今後もデータ活用をしてデジタルマーケティングを推し進めていくなら、道は一つだと思います。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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