コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2024年11月27日号より
ChatGPT searchが、一部のユーザーにリリースされています。
私はTeamsプランで契約があるためChromeのデフォルトサーチに設定して、リリース直後からいろいろ試しています。
ChatGPT searchの売り文句は「速くてタイムリーな回答が得られる」ことです。質問への答えを「情報源のリンク付き解説文」で、スラスラすらっと提供してくれます。その検索結果の画面はすっきりしていて、潔い感じさえします。
最初は「ほほー、なるほど」と思うのですが、しばらくデフォルトの検索として使ってみると、わずらわしさと物足りなさを感じてしまいます。
まだまだ変わっていくことはわかっていますが、回答にたどり着く効率性を求めた先に、どんな未来があるかはまだわかりません。
ひとつの例です。当たり障りのない真剣な質問、「スムージーを作る機械は何がいい?」と入力してみます。
ChatGPT searchはブレンダー、ミキサー、ジューサーと一般的なメリデメを解説し、いくつか製品を紹介すると「ご自身のライフスタイルや使用目的に合った道具を選んでみてください」と無難な回答を返します。
無難すぎて、もう一歩掘り下げて聞こうかなという気になれません。
Google CEOのスンダー・ピチャイが生成AIの検索サービスに対して、こんなことを語っています。
「人々は時として答えを求めますが、同時に世界に存在する豊かで多様な情報も求めています。そしてそこには良いバランスが必要です」
このスンダーの発言は、検索の本質的な一面を語っていると思います。
ステレオタイプな二項対立の図式を使えば、Googleは旧来型の10個の青いリンクを基本とする検索サービスです。
一方、ChatGPT searchは(情報源のリンクを提供しつつ)単一のすっきりした効率的な回答を提供してくれます。
Googleに同じ質問をしてみます。
「スムージーを作る機械は何がいい?」
一番上に分類がタグで表示され、ショッピング広告が出て、ベストバイ的なリンクに続いて「ブレンダーとミキサーどっちがいい?」という質問が表示されます。もう少し行くと動画がありますが、その前に「ブレンダーで大根おろしはできますか?」という質問があって、思わずクリックしてしまいます(相方には確実に笑われます)。
Googleが提供している検索画面は、もはや「10個の青いリンク」ではありません。検索エンジンは、単なる正解を提供するサービスではないんだなと改めて思います。
たとえブレンダーで作った大根おろしがイマイチでも、知的好奇心をくすぐり続ける馬車でもあったのです。
目的の答えにたどり着いても構わずにどんどん寄り道をし、その過程で新たな発見が連続し、しばらく時間を浪費します。Googleとの対話の調子がいいと、軽く知的興奮で満たされます。
「探索の喜び」があり、効率性だけでは測れない価値があります。
もうひとつの検索サービス、Perplexityは探索の楽しみを提供してくれます。私は正直、ChatGPT searchより、こちらの方が楽しいです。
Perplexityに同じ質問をしてみると
「スムージーを作るのに最適な道具はミキサーです」
と断定的に答えを出してきます。
「いやいやいや、あなたにとってはそうでしょうけどね」と文句を言いつつ、ただ、それと同時に、「スムージー作りのポイント」や「甘みをプラスするアイテム」といった連鎖する質問が提示されます。
探索好きの私は、しばしばPerplexityのくすぐりに乗って、不安定な馬車に揺られて時間を浪費してしまいます。
生成AIが提供する検索サービスがどう進化していくか? 果たして人々に受け入れられていくのか? Googleのシェアを奪っていくのか?
この設問は、来年2025年の私の大きなテーマです。
私はこれら検索サービスに持続性が維持できるのか、その点がポイントだと考えています。
生成系AIの検索を支えるビジネスモデルは何になるのか? 広告かサブスクリプションか?
ひとつの解説文を提供する生成系AIと、広告は相性がよいのか?
効率的な回答を求めるユーザーが増えたら、コンテンツをウェブに発信するインセンティブが失われてしまうのではないか?
そして、ビジネス面での持続性以上に、人々の知的好奇心をくすぐり続ける持続性があるのか? という点は大事だと思います。
効率的な回答の提供と、探索体験価値の提供のバランスをどう実現していくのか?
来年の進化がとても楽しみです。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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