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巨人がリーグ優勝を果たしました。巨人は今年から阿部慎之助が原監督に代わって20代目の監督になりました。監督の最初のシーズンで、阿部慎之助監督がなぜ優勝できたのか、という記事をいくつか読みました。

阿部監督は、投手を中心とするチームの守備力の改善に注力したようです。昨シーズンのジャイアンツの防御率がリーグ5位の3.39、特に救援陣は12球団ワーストの3.81だったので、投手力の改善は急務だったようです。目標のひとつに「四球1割減」を掲げたようです。

これは有名なマネーボールの逆だな、と思いました。
映画では、ブラッド・ピットが主演していましたが、特にマネーボールを象徴するのは、出塁率という指標でした。
打率ではなく、四球やデッドボールも含めた塁に出る確率を重視し、他球団が獲得しない太り気味だが選球眼のよい選手を起用します。
マネーボールは、低予算のチームが、長いシーズンを効率よく勝っていくため、苦肉の策で他球団が注目しないKPIを追求したデータドリブン戦術でした。
打率より出塁率の高い選手、打点やホームラン数より塁を進める盗塁数が多い選手を重視しました。

さて、日本野球の阿部慎之助監督は、四球1割減を実現するため、どんな改善策を打ったのか?
科学的なものも含め様々な改革に取り組んだようですが、印象的だったのは投手にかけた言葉です。
「迷ったらど真ん中に投げろ」

実はアメリカのマネーボールの方は、その後いろいろな角度から評価されています。獲得した選手たちがその後どうなったのか? そんな分析も出されています。
マネーボールで、特にもてはやされた選手がジェレミー・ブラウンでした。
他のスカウトが「太って使い物にならない」と否定したのに、選球眼の良さからマネーボールを象徴する選手となりました。
ただ、そのジェレミー・ブラウンは、その後あまり思ったような活躍はせず、他チーム移籍後は、マネーボールのイメージに苦しみ続けたようです。

「迷ったらど真ん中に投げろ」
この言葉を見ると、マネーボールと巨人の阿部慎之助監督の違いは、改善策を選手にどう伝え浸透させるか、という点にあったように思えます。

監督がデータの改善を掲げると、データが悪くなると、投手とキャッチャーが萎縮してしまうことも考えられます。ボールが先行すると、思わずベンチのサインに頼ってしまい、選手たちが本来の力を発揮できない、ということもあるでしょう。

阿部慎之助監督は、選手時代、若手の正キャッチャーとしてメディアやファンに叩かれたこともあるようです。
投手が悪いのは、キャッチャーのせい、というわけです。そのせいで、メンタル面での苦しみも抱えたのでしょう。
監督として、選手たちがいかに自信を持ってプレーできるかという点を重視して、言葉がけを行ったのではないか、と考えました。

データドリブンで改善に取り組んでも、それを実行するのは感情を持った選手たちです。
接戦を演じたシーズン終盤で、いかに勝負強さを発揮できるか?
そうしたチーム全体の心理面が、実はデータ野球の本当に大事な部分なのかもしれません。

さて、マネーボールを実践したオークランド・アスレチックスは、プレーオフに何度か進出しています。しかし、短期決戦にはセイバーメトリクスと呼ばれるデータドリブン野球が通じず、ワールドシリーズには出場できませんでした。
阿部慎之助監督のジャイアンツが、日本シリーズに向けてどんな戦い方をするのか?
その点に注目していきたいと思います。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

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