コラムバックナンバー

少し前、a2iの「ひとこと茸」で、デジタルマーケティングのダッシュボードについて取り上げました。続いて書かれた渋谷さんのコラムも併せて、じっくり考えさせる内容でした。

▼ ひとこと茸「ダッシュボードは結局見なくなる」という話がよく出ますが、よくある原因あるいは見るようになるポイントがあれば教えてください」

コラム 「ダッシュボードは結局見なくなる問題」再考|渋谷 泰一郎(株式会社ナンバー)

私も、数値と可視化について、かなり悩んでいるひとりですので、悩みながら書いてみます。

ダッシュボードは基本数字の集まりです。数値に弱い私にとって、やっかいなのは「数値」の姿形そのものにあります。

毎週KPIなどの「数値」それだけを見ていても、瞬時に意味を読み取ったり、改善するための行動を思いつくことは、やはり難しいなと感じます。

ただ、一見数値に弱い私でも、日常の中で感覚的に扱える数値はあります。当たり前ですが、毎日の気温や体重などは数値の良し悪しが判断できます。ダイエットに取り組む人は、体重だけでなく、体脂肪や食事のカロリーといった数値は、感覚的に扱える数値でしょう。

こんなふうに数値が自分の感覚と直結した状態を、私は「数値が身についた」と言っています。

デジタルマーケティングのダッシュボードの数値は、「身についた」状態になっていないため、その良し悪しや、アクションが判断できない、と言えると思います。

個人に身近な数値は、自分ひとりが見続けていればそのうち身につくでしょう。ただ、組織が扱う数値は、組織のひとりひとりが、身につける必要があります。

売上と直結した数値なら、組織が身につけるのも比較的容易です。

しかし、GA4の指標などは売上との距離が遠くなります。まして、最近のコンテンツマーケティングやソーシャルメディアの指標などは、売上との距離が遠く、組織として身につけることが難しいでしょう。

もう一度、ダイエットの話に戻りますが、大抵は食事制限や毎日の歩数など、体重と距離が近いところから努力がはじまります。ただ、ある程度改善した先は、もっと根本的なこと、睡眠不足やストレスが多い点を改善しなければならない、という場合もあるでしょう。

この場合に自分が扱う指標やそのダッシュボードは難しくなりそうです。おそらく取り組むべきは、日々の生活改善のための小さな積み重ねです。

今、デジタルマーケティングの世界は、各社の取り組みが成熟してきています。プライバシー保護などの要因もあり、売上直結の指標では、改善が難しい状態が生じていると感じています。

従来KPIは、売上を因数分解してツリー状に描くやり方が王道でした。ただ、そういったKPIは、他社も同様に取り組んでいたり、自社でも相当やり尽くし、改善が難しい数値になっています。

例えば、リスティング広告のCPAなどがそれにあたります。広告運用チームはCPAが身についていますが、そこでできることは少なくなっています。

そしてデジマの世界でも、同様の変化がおきています。ブログ記事を継続的に書く、ソーシャルの発信を続ける、サポートの質を向上させるなど、長期的な継続が必要な取り組みの重要性が相対的に増していると思います。

こういった活動は、数値からなかなか改善点が掴みづらいでしょう。成果が目に見える形で確認できるのは、かなり先のことになります。それまでは辛抱強く施策を継続する必要があります。企業価値を上げるための、チームとして取り組む(たいていは地道で継続的な)「施策」を定義し、まずはそれを続けて、数値は長期的に確認する、といった形になるように思います。

その継続的な施策を何にするか、組織が活発に話し合い、どう効果的に進めるかを試行錯誤する。組織の数値が身につくのは、その先にあるのです。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

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