コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2024年5月15日号より
ChatGPTが新たな改良バージョンとしてChatGPT-4oを発表しました。この新しい生成AIは、テキストだけでなく、音声、画像、動画も含めてリアルタイムで処理できる能力を持っているとのこと。レスポンスは平均330ミリ秒で、人間の会話とほぼ同等のスピードです。
GoogleのGeminiも負けない処理速度になっているとの話もあるようですから、生成系AIの速度を巡る進化は、リアルタイム処理の世界に入っているようです。
この影響は、特に日本にとって非常に大きな、あるいは深刻なものになると思います。
“Realtime Translation with GTP-4o”
生成系AIが出現した後、日本企業も独自の生成AIを開発する動きがありました。その多くが「日本向け生成AI」というふれこみで報道されています。
私は「日本向け生成AI」は幻想だと考えています。
生成AIは本質的にグローバルな技術であり、特定の国や言語に限定されるものではありません。日本語処理の精度も速度も、言語の優位性はないのではないでしょうか?
レベルはかなり違いますが、やや似た感覚(日本語でもグローバル企業に勝てない)を、ずいぶん前に味わった記憶があります。
2010年、ヤフージャパンとGoogleが検索エンジンで提携し、Yahoo Japanの検索サービスをGoogleがOEM提供するという発表がありました。
これに対して、日本市場の日本企業、楽天やNTTなどが反対の声を上げました。
当時、日本の検索サイトのシェアはヤフージャパンが50%、グーグルが40%弱だったので、両社を足すと90%になる、これは独占状態であり問題だということです。
その危機感は理解できるものの、私は「遅すぎる」とため息をつきました。その時点で、Googleに匹敵する品質の検索エンジンはありませんでした。
「NTTや楽天が、本気で検索エンジンに投資していれば」
というため息でした。
日本独自の検索エンジンの開発を目指した人たちもいたはずですが、検索サービスに言語の壁などというものは存在しなかったのです。
AIの開発に日本がキャッチアップすることはすでに難しい、という論点は生成系AI以前からも言われていました。日本ができることは、むしろ、AIを活用する側として、新たなサービスを生んでいくことでしょう。
ただ、活用する側に立つとしても、「国内市場向け」という狭い視点ではなく、世界中が使うサービスとして取り組むべきなのだと思います。
生成系AIがリアルタイムになる影響、それは通訳がいらなくなる、という単純な話ではないでしょう。
日本人が接客していない日本人向けのお店で、サービスやカスタマーサポートを受ける日が、もう目の前に来ているのだと思います。
日本は著作権の規制が、比較的緩やかなため、生成AIの発展には好都合な環境とも言われています。生成AIを進めるグローバル企業の視点に立つと、日本こそが「言語の壁をなくしたサービス提供の理想的な舞台」となり得ます。
ChatGPT-4oはすでに私も使えるようになっています。まだ、触れはじめたばかりで、やや拙速ですが、ChatGPT-4oの登場は、いよいよ日本に根本的な発想の転換を迫っているように思えています。
私たちは常にグローバルな視点から、価値の提供を求められそうです。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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