コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2022年9月28日号より
9月14日、村上佳代氏による「マーケッターの必須スキル「KPI」の基礎理解と攻略」というセミナーがあり、非常に好評でした。GA4のことばかりでなく、こうした基本に立ち返る時間がとても大切だと感じました。
そこで私の拙い経験から、KPIを実践するポイントをまとめてみました。
短いコラムですので、5つほど挙げてみます。
1. KGIを改善する仮説を立てておく。自分たちで制御できる指標を選ぶ。
2. 割合を使わずに、できるだけ実数で管理する
3. 売上に直結しない指標は割り切って信じて継続する
4. 部分最適化で終わらないようKGIや全体との擦り合わせを行う
5. 客観的に検証する体制を継続して維持する
KGIとKPIをあらためて定義する場合、それを定義するだけで相当エネルギーを使います。
1つ目の改善のための「仮説」はすべての肝になります。
KPIはKGIを改善できる指標ですので、自分たちで制御できる指標であり、改善するための仮説がチームで共有されていることが鍵になります。これがそのまま組織やチームの戦略や戦術になっていきます。
こうしたKPIの定義プロセスは、比較的元気に取り組めます。
2つ目の「割合を使わない」は疑問もあるかもしれません。これはKPIを運用していく中で、ごまかしや、安易な方向修正から守る目的があります。
たとえば、CVRがセッション数とコンバージョン数だった場合、セッション数を少なくすると、CVRは高くなる傾向があります。頭のいい人はすぐにこういったことに気が付きます。
そして、プロジェクトの途中で、母数を変えたり定義を変える人が出てきます。
セッション数ではなく、参照元を限定したセッション数に変えたり、ユニークユーザー数に変えたりするなど、まさかと思うかもしれませんが、分母の定義そのものを変えてしまう、というのは割と起こりがちです。
ただ、実際に運用してみてわかることもあり、本当に変えた方がよい場合もあります。そうならないように、1.のKPI選びと仮説が大事です。
3つ目の「割り切り」は、ソーシャルやYouTubeチャネルの運用など、KGIの売上などとストレートに連動しない場合を想定しています。
計測がそもそも難しい場合も多いなか、KGIと連動する数字を無理に追いかけると、継続が難しくなってしまいます。
こういった場合は、KGIとの連動はあきらめて、投稿数などの数で運用していくのがよいと考えています。長期に続けていけば、きっといいことがある、と信じるしかない活動もあります。
4つ目の「部分最適化」は、新型コロナがひとつの例ですが、感染者数だけに着目してしまって、経済、若年層や子供たちへの負の影響を見逃してしまう場合です。
ある部門やタスクチームの熱心な活動が、社員の時間を浪費したり、やる気を削ぐ場合もあります。長期的には、離職者を増やしている場合もありえます。
転入者でやる気のあるリーダーに起こりがちです。
KPIを運用していくには、部門やチームに落とし込んで最適化していきますが、定期的に組織の高いレベルから全体を俯瞰して確認できる人と体制が必要になります。
KPIの定義ができても、それを運用に乗せて改善していくのは並大抵ではありません。
5つ目の「検証する」ですが、小さな組織や部分的なタスクなら、KPIとそのPDCAを回していくことができます。ただ、組織が大きくなり、指標が重要になるほど、振り返りも大変ですし、一段と勇気が必要になります。
ひとつの弊害は、人事異動や方針変更の影響です。ビジネスの変化が激しくなった影響もあり、KPIを継続的に管理していくことが難しい現実もあります。
力を入れて定義したKPIですが、いつの間にかうやむやになるケースを、それなりに見てきました。
また、そのKPIを達成できないと、たとえば部長などの偉い人の顔に泥を塗る場合も大変です。KPIをレポートする人が「これ、このままじゃレポートできないよ」と顔色が暗くなるような組織の場合、振り返りそのものを避けたりします。
二番目にあげた、母数の変更や定義の変更も、こうした場面で起こります。
KPIの達成がノルマ化しているのに、実は「仮説」がなかった、あるいは非現実的だったという場合に起こります。
一番最初に戻ります。「仮説」を立てておき、でもそれがあくまで「仮」の「推定」であり、人の評価とは連動しない、というコンセンサスが重要です。
KPIを達成できない場合、あるいはKPIを達成してもKGIが上向かない場合、リーダーや部門長が、その振り返り検証を前向きに取り組めることが理想です。
アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
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