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私たちは、これまで、Google アナリティクスでかなりの分析をこなしてきました。レポート画面で直接セグメントが駆使できたのはとても便利で、ユーザー行動の深い知見を得ることができました。サイト改善やトラフィックの評価の際、メインの分析ツールは、Google アナリティクス、という方も多いと思います。

では、GA4ではどうなるでしょうか?
GA4で深掘り分析がしたい、アドホックな分析がしたい、でもBigQueryは使えない、あるいは面倒だ、という場合、「探索レポート」が候補になります。

探索レポートは、機械学習が抽出した予測セグメント、経路分析、ユーザーレベルのファネル、セグメント比較など、メリットが多くあります。
ただ、現状は、本格的に深掘り分析するにあたって、注意すべき点があります。時間をかけて分析しても、思うような結果が得られない、もしくは分析結果を信用できない、ということが発生しかねません。事前に注意しておくべき点を知っておくだけでも生産性は違うと思いますので、主なものを挙げてみます。
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1. 「探索レポート」内で完結しない
探索レポートには、コンバージョン率がありません。
それ以外にも、KPIとなる指標は、ユーザーあたりやセッションあたりの割合で比較したいところですね。KPIとなるイベント数、トランザクション数、収益などがその典型です。
しかし、この場合、いったんCSVファイルをダウンロードして、Googleシートやエクセルにインポートして、そちらでユーザーごと、セッションごとの割合指標を加工して作成する必要があります。
有用なレポートを期間や対象を変えて分析しなおす場合は多いので、かなり面倒です。いちいち手順を繰り返したり、思い出さないといけなくなります。
ぜひ、計算指標が使えるように、あるいはデータポータルのようにSQLを呼び出せるようにしてほしいです。

2. データの限界と不正確さ
まず、探索レポートは分析期間指定が、データの保持期間(2ヶ月または14ヶ月)に限定されます。この期間より前の日付は、指定できません。
これでは、昨対比を駆使したい場合、すぐに限界がきてしまいそうです。
現在はGA4を導入して間もないので、あまり気にならないかもしれません。でも、2年後3年後には、もううんざりしているはずです。

また無料版の探索レポートは、サンプリングがかかります。
このサンプリングですが、ユーザー単位で間引かれず、イベント単位で間引かれます。したがって、session_start などセッションをイベントで取得しているGA4の場合、不正確さが増します。

また、GA4設定で Google シグナルを有効にしている場合「しきい値」というやっかいなロジックが適用されます。この説明は省きますが、デバイスID関連のユーザーが少ない場合、データの一部が表示されない、という場合があります。
サンプリングやしきい値が適用された場合(画面でアラートが出ています)、セッション単位の分析は不正確になります。

上記二つは改善案を要望しようにも、保持期間やサンプリングは「有料版を選びましょう」という結論になると思います。しきい値の問題は、有料版でも解決ができません。

3. 勘違いが起きやすい
似たデータに、複数の微妙に違う名前が存在しています。
ユーザー数にあたる名前が2種類、購入数にあたるものは3種類あります。どちらを選んだら良いのか、迷いますし、レポートごとに異なる選択をすると、比較がおかしくなります。
「ユーザーの合計数」は全ユーザーですが、「利用ユーザー」はアクティブユーザーのみとなり、1秒以上ブラウザ上でフォーカスされたユーザーになります(アクティブユーザーと名前変えてほしいです)。
「トランザクション」「購入」「eコマースの購入数」は、基本「トランザクション」が注文番号に値が入っているものだけを数えますのでベストです。「購入」と「eコマースの購入数」はpurchaseのイベントを数えていますが、注文番号が none なども含まれてしまいます。

4. その他の不便さ
設定したセグメントの共有が、探索レポート全体でできません。
たとえば、一つの探索レポートで作成した複雑なセグメントを、今度はセグメントの比較で使いたい、といったケースがありますが、いちいち設定する必要があります。
これはさすがに改善されるのではないかと思いますが、ちょっと泣きそうになります。

また、これは有名になりつつありますが、カスタムイベントのパラメーターは、デフォルトで選択できません。いちいちカスタムディメンションに指定する必要があります。
すべてのイベントとパラメーターを素直に「探索」できるようになぜしなかったのか? これは謎ですが、本当に面倒です。

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実際にここしばらく深掘り分析をしてみて、上記の注意点を承知しながら、ある程度意味のあるレポートが作成できています。
ただ、同時に時間がかかったり、結果に疑問が出る場面もありました。今後改善される点があるでしょうが、まず現状は共有しておきたいと思います。
その上で、データ量が多い企業サイトが、GA4で分析をごりごりしたいなら、BigQueryをマスターにするか、GA4の有料版の360にしましょう。

「じゃあ、GA4とデータポータルでいいですよね」となりそうですが、現在のGA4のデータポータルにも注意点があります。今は、サンプリングがかかっていることさえわからないようですし、探索ともBigQueryとも、それぞれ値が違う場合も発生しています。

お使いのGA4のデータ量や設定にもよりますが、データポータルも、BigQueryにエクスポートしたデータからレポートを生成した方がよいという可能性もあります。

GA4は、分析のケースによっては、時間を浪費します。
とくにサイト分析が目的の場合は、ユーザーテストやヒートマップツールなど、他の選択肢も合わせて取り組むことが必要だと考えます。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

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