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アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2021年10月27日号より
Googleが、今後は広告の評価はデータドリブン アトリビューション(DDA)に移行していきますよ!(「The future of attribution is data-driven」)とアナウンスしました。
今まではラストクリック評価が、基準でした。コンバージョンが発生した直前にクリックした広告で、効果を評価していました。
これからは間接効果を加味した測定と入札に、大きく変わることになります。
もちろん、今までの基準も選べますので、無理に移行しなくてもよいわけですが、より正確な手法ですので、今後積極的に対応を検討していくことをお勧めします。
そこでDDAについて、知ったかぶりではありますが、少し解説をしていきたいと思います。
最初にこのDDAモデルが発表されたとき、かなり深く調べたことがあったのですが、どうやら、その初期の実装から、統計手法も大きく進化しているようです。
改めてDDAですが、これは間接効果も加味して、より正確に広告の貢献度を評価する統計手法です。サッカーに例えれば、ゴールが決まった2つ前ぐらいのパスの貢献度をちゃんと評価してくれるわけです。これがわかれば、できるだけあの選手に早めにパスを出そうと、戦術が変わっていきます。
広告の間接効果を見る手法はいくつかありますが、DDAでは「生存分析」という医薬の世界でよく使われる手法が使われています。
たとえば癌に抗癌剤などの治療法があるとして、その治療を行なったときの生存期間への効果がどの程度あったと評価するか? いくつかのケースを比較しながら算出していきます。
通常の統計手法では、10人に薬を投与して、2名が5年生存したら、その件数だけで、10分の2で、20%の割合で貢献したと算定します。
「生存分析」の統計手法は、これに時間軸を加えます。
薬を投与してから、観察期間がどのくらいだったか、その時間も母数に加えます。これを投与していない10名と比べて、どれだけリスクの割合が減ったのか数値化していきます。
広告に当てはめると、コンバージョンした経路を分析して、単純にA広告をクリックした割合だけを見るのではなく、コンバージョンまでの時間も解析します。
大雑把に言えば母数を、「件数 x CVまでの時間」とした上で、さらに他のグループに比べて有意な差があるか、また、どの程度の割合で貢献したかを見ていきます。
単純にCVの前のどこかで広告Aをクリックしていたからと、そんな理由だけでは貢献度を加えたりはしません。
もし、CVしていない経路でも同じ広告をクリックしている人がいたら、広告Aの貢献度は高くないなと判断します。併せて貢献度が高くなるCVまでの時間も算出します。
ゴール2本前の早いパスで、しかもハーフラインより前なら効果を見るけど、4本前に同じ人に遅い横パスを出しただけなら貢献度は見ないよ、とそんな感じです。
ブログ記事を見ると、広告のフォーマットなどの変数も加味しているようです。時間軸以外にも多くのシグナルを加えて、貢献度を算出しているようです。それだけ正確なパフォーマンス値が期待できます。
入札単価も、DDAで算出された値をもとに、広告ごとに最適化していくことができます。
たとえば、具体的には、商品指名キーワードの入札単価が上がったり、店名キーワードの入札単価が下がったりして、より効率化が進みます。
ただし、長期間、より多くの経路を計算するため、反映に少しだけ時間がかかります。また、最低でも30日間で3千件以上の広告クリックと、3百件以上のコンバージョンが必要となります。今はまだ、ある程度大きな入札投資金額が前提ですね。
今後は機械学習も駆使して、より少ないデータでも、CV貢献度の推測値が出せるようにしたり、Google広告だけでなく、Googleアナリティクスにもこの機能が追加される計画です。
大きな流れとして、広告のトラフィック評価と入札の最適化は、統計モデルと機械学習によって、どんどん自動化されていきます。
ブラックボックスですから、中身を知る必要なんかない、と言ってしまえばそれまでなのです。私の説明も、あくまでGoogleのブログやヘルプから推測した内容なので、かなり怪しい点もあります。統計や機械学習でよりアトリビューションを進化させたい意気込みがGoogleにあるので、その取り組みを理解するヒントになればと思います。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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