コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2021年2月17日号より
Eテレ夜放送の「ヒャダ×体育のワンルーム☆ミュージック」という番組が好きで毎回見ています。今や、楽譜やコードなど音楽理論を知らなくても、音楽スタジオに入らなくても、簡単にアレンジまで完成したプロ並みの楽曲が自宅で完成できます。
YOASOBIなど最近のミュージシャンは、音楽を学んだ経験がなくても、ゲームを楽しむように自分の部屋のMacやiPhoneで曲をつくっています。音楽の「ノーコード」の世界は、明らかに今までと違う次元に飛躍しています。
オンラインショップやアプリ制作でも、「ノーコード」が盛り上がっています。最近の「ノーコード」ツールは、選択するテンプレートも充実し、決済機能はもちろん、データ管理もGoogle Sheetやエクセルでできます。GoogleやTwitterなどソーシャルログインの機能も簡単に設置でき、Google アナリティクスの拡張eコマースも自動的に設定されるなど、外部ツールとの連携も充実してきました。
オンラインショップや社内用業務アプリは、ほぼノーコードで問題ない世界になってきました。最近は、アップルストアにリリースするアプリでも、「ノーコード」で作成されたものが出はじめています。
サイトやアプリ制作は、チームにエンジニアがいなくてもよい世界が来ています。アイディアやコンテンツだけでも勝負できる世界です。
一方で、プログラムコードを簡略化した「ローコード」もあります。AppleがリリースしたSwiftUIが代表的な例ですが、従来に比べかなり簡単なコードで、本格的なアプリが作成できます。
ただ、ローコードは、関数やクロージャーなどプログラミングの知識が依然必要です。その割に、ひとたびエラーが起きると判別が難しいなど敷居は高い印象です。
あまりいい例えが浮かびませんが、「ローコード」は車でいえばオートマ、「ノーコード」はレベル3の自動運転でしょうか? ローコードは簡単になったとはいえまだ開発=運転に集中が必要ですが、ノーコードの世界は「運転」の操作を忘れさせます。「運転」は「移動」に近くなり、解放された脳みそを、目的地の調査など本来の楽しみのために使えます。
データ分析やデータサイエンスの世界ではどうでしょうか?
ウェブの生ログを見ていた世界から見れば、Googleアナリティクスそのものがノーコードといえるでしょう。複雑なセグメント分析を、UIだけでできるので、分析の生産性は大幅に上がりました。
機械学習を使ったデータ分析は、ローコードのR言語が出てきたことで、かなり間口が広がりましたが、それでも敷居は高いままでした。
GA4がリリースされて、無料版でもBigQueryとの連携ができるようになり、SQLの需要が出てきました。SQLもデータ抽出に特化した「ローコード」ツールの代表例だと言えます。
データ分析は、まだまだローコードとノーコードの境界線にいます。部分的にかなり楽になってはいますが、全体には、導入設定やカスタマイズに大きく時間を取られ、本来のビジネス改善に集中できるレベルではありません。
今後もう一つ上の次元に飛躍するためには、サイトの目的をテンプレートから選べば、タグの設定やカスタマイズはGoogle シートから半自動で設定し、ファネルなどのレポートは自動生成、分析に時間をかけなくても、改善すべきリストを機械学習で抽出する、そんな世界になってほしいところです。
GA4がBigQueryにデータを吐き出す機能をもったことで、Google以外の企業が、データ分析のノーコード化に参入できる環境が整いました。これはデジタルマーケティングで飛躍しようと考えている企業にとって、ビジネスチャンスです。
ここから数年で、ウェブとアプリのデータ分析の生産性が飛躍的に進化する。そんな世界は決して夢物語ではないのです。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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