コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2020年9月16日号より
9月29日に柳井隆道さんと「プライバシー保護とITP」についてセミナーを開催します。
本日のコラムでは、セミナーで触れない視点でコラムを書いてみます。
あらためてITPは Intelligent Tracking Preventionです。アップルのSafariブラウザのエンジンであるWebKitの協議会が進めているプライバシー保護の取り組みです。このITPによって、Cookieの規制が厳しくなり、広告だけでなくGoogle アナリティクスの計測データも影響を受けています。
このITPですが、調べれば調べるほど、個人的には首を傾げたくなるというか、本音をいうと「なんでこんな仕様なの」とイライラしてくるところが多くあります。
一つ例をあげれば、1st Party Cookieの期限をケースによって7日間や24時間にしている点です。
Google アナリティクスは、ITPがなければ本来、そのCookieの保持期間は2年間です。つまり2年間は匿名ユーザーの行動を認識し続けます。ですが、ITPの制限でSafariの場合、Cookieは7日間もしくは24時間で消去されてしまいます。期限内にアクセスがなければ、別の新規のユーザーとして計測されてしまいます。
これは困った事態なのですが、でも、そもそもなぜ7日間なのでしょうか?あるいは全部7日間じゃなくて、場合によっては24時間になるのでしょうか? あるいはひと思いに全部スパッと取れなくすればいいじゃないですか?
実はここにあまりすっきりとした答えはありません。それはただただアップルが決めたからという状況です。(WebKitはGoogleや他の企業も参加しているオープンソースの協議会ですが、実質的にはアップルが中心です)
こうした仕様のブレと繰り返される仕様更新のせいで、私たちの時間が浪費されてしまっている状況です。
自社サイトの分析データが、私企業であるアップルが決めたITPのせいである日突然、おかしくなり、しかもわかりにくい仕様で右往左往するのは、とても理不尽に感じます。
インターネットという広い世界の規制なのですから、もっと公的な第三者機関や国が決めるべきではないでしょうか?
そう考えたくなりますが、「国」ごとに違う規制がかけられても、それはそれで困るので、よい解決策はなさそうです。
そしてiOSの14という新しいリリース以後は、さらに状況が悪くなりそうです。これまでは Safariだけが影響範囲でした。今後は、Safari以外のブラウザやWebViewもこのITPの規制が適用されていきます。
ブラウザといえば昔はマイクロソフトのIEでした。やがてGoogleのChromeがシェアを伸ばしました。しかし、気がつくと、モバイル時代になり、アップルがブラウザのエンジン部分で、実質的なブラウザ覇権を握り始めています。
iPhoneで動くブラウザエンジンは、WebKitを使わないといけない決まりになっています。結果として、特に日本のトラフィックの6割から7割は、アップルが握る状態になっています。
そのアップルはネット広告が主力事業ではありません。ブラウザの仕様が自社のビジネスに影響しません。規制によるネガティブな影響を、あまり気にしないまま、ITPの仕様追加がずんずんと推進されていくのです。
正直、データ分析の立場として、頭の痛い状況がまだまだ続きそうです。
混乱するわかりにくい現状ではありますが、きちんと把握して、どう取り組むべきか、柳井さんと一緒に、できるだけわかりやすく説明していきたいと思います。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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