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Googleタグマネージャの新しい機能、サーバーサイドタグ (Server-Side Tagging) がリリースされました。
先日a2iで、アプリ+ウェブプロパティというGAの新しいバージョンについて、セミナーを開催しました。それに引き続き、大きなアナウンスです。よりによってこんなお盆休みにリリースしなくても、とぶつぶつ文句を言いつつも、早速導入してみました。
私の場合、導入に要した所要時間は約2時間半でした。Googleの導入ガイドはいささか不親切なのですが、先人が何人かセットアップの手順を動画やブログに詳細に記載してくれています。それに従って完了することができました。

“Server-side Tagging In Google Tag Manager”

そもそもサーバーサイドタグと言われても「いったいなんですか?」と思う方も多いでしょう。私なりに手短に説明してみます。とても重要なアナウンスですが、かなりハードルが高めです。

[ サーバーサイドタグとは何か? ]
サーバーサイドタグの機能自体は、GTMの機能ですので、GAに限らず他のタグでも利用可能な機能です。現在テンプレートとして、2つのGA、ユニバーサルアナリティクスと、アプリ+ウェブプロパティ用の2つのタグが用意されています。

一言で言えば、Googleタグマネージャ(GTM) のコンテナを2つ持つイメージです。クライアント側とサーバー側の2つで一つのタグを制御します。
一つは、今設置しているGTMです。これをクライアントコンテナと呼ぶことにします。
もう一つは、全く新しいコンテナで、Googleクラウドサーバーの上で動かしします。これをサーバーコンテナと呼ぶことにします。

クライアントコンテナで発行したGAのタグに、新たにサーバーに転送してね、という機能がつきました。これをオンにして転送先を指定します。
これを受け取るのがサーバーコンテナです。これを新たに設定しました。サーバーは、Googleクラウド上に作成します。
しかし、このGoogleクラウドに自社サイトのサブドメインを割り当てます。ここがミソです。アナリティクスアソシエーションのサイトに例えれば、a2i.jp というドメインでホームページを運用しています。これに(名前は好きな名前でよい)collect.a2i.jp とか、data.a2i.jp など、新たなサブドメインを作成し、ドメイン設定をちょいちょいといじって、Googleクラウド上の住所(IPアドレス)を指定します。
2つのコンテナが連携して、ブラウザからいったん自社のサブドメイン(実態はGoogleクラウド上)に送ったGoogleアナリティクスのデータが、最終的にサーバー経由でGoogleのGAサーバーに転送されます。

わかりやすく言うと、G社に支払うはずの訳ありの物件を、適当な子会社(サブドメイン)を作ってこっそり裏で支払う仕組みです。あれ?なんだかわかりやすく書こうとすると、悪巧みを説明している感じになってしまいました。困りました。でも、自社のサブドメインをクラウドに置いて受け取るので、何も悪いことをしていません。

[ なんでワザワザこんなことするんですか? ]
Googleの公式ブログは、サーバーコンテナの意義を3つほど挙げています。
1) ページ表示が速くなる
2) スパム送信を防げる
3) その他、サーバー経由なので自分で色々設定、変更できる

うーん、なんだかちょっと歯切れが悪いようです。ブログには一言も書いていませんが、3)の意味するところは、ITP対策です。Cookieによる計測が、プライバシー保護の観点から、AppleのITPの制限でブロックされつつあるので、それを防ぐメリットがあります。

詳しい方向けに少し技術的な補足です。これまでも、計測データの送信先に、自社サブドメインを割り当てる仕組みは、AdobeやKARTEなどが ”CNAME” という仕組みで提供してきました。この仕組みはアップルが取り締まるようですが、今回のGoogleクラウドを使った仕組みは、”AレコードやAAAAレコード” を使っています。ITPがどう対応するかはこれからです。個人的には、制限は難しいのではと考えています。

GTMの新たなサーバーサイドタグは、色々な症状によく効くとてもよくできた薬です。
この薬の効能は、主に以下の症状によく効きます。
ページ表示が遅い症状とか、計測タグのふりをしたスパムに偽のデータを送られ続ける症状とか、Safariブラウザの時だけCookieがリセットされちゃうとか、そんな症状によく効きます。

でも副作用もあります。
一つ目は、お金が少しかかります。Googleクラウドの費用はあなた持ちです。基本料金と送信データ量に連動して費用が発生します。多くの企業にとっては安価ですが、トラフィック量に依存します。
二つ目は、初期設定時、ドメインやサーバーを管理している情報システム部を巻き込むので、ここで手間取ります。大企業ほど時間がかかりそうです。
三つ目は、導入や問題判別に、クラウドの知識が必要になってきます。従来のマーケターのスキル範囲を超えます。

サーバーサイドタグは、本当によく考えられた機能です。
安定した正確なデータが活用できるのですから、Googleクラウドの費用を払っても、十分お釣りが来ると考えます。企業は積極的に導入するべきでしょう。
それでも、この仕組みは、従来のマーケターの守備範囲を超えた取り組みになります。そのため実際の導入がどれだけ進むか、正直未知数でしょう。アプリ+ウェブプロパティも同様です。

全体に技術が進歩すれば、どんどん楽になるはずだったのですが、実際にはカバーするスキル範囲が広がり、ハードルが高くなって、難しい世界になってきています。そこが気がかりです。ビジネス改善、マーケティング、データ分析、JSなどタグ設定に加えて、GCP/BigQueryなどクラウドの知識が技術面、分析面でも不可欠になってきました。
新しい時代の幕開けなのですが、一人ががんばればある程度結果を出せる時代はすでに終わっています。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表  
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。

主な講演

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