a2iコラム
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2020年2月12日号より
データ分析、特に複数のデータを統合する分析を進めるプロジェクトをいくつか見ていく中で、企業(この場合は事業会社限定の話)ごとに顕著に進むスピードが違ってきます。
その違いがどこにあるのか?
表面的には、ネット専業の事業会社の進みが速く、伝統的な日本の大企業で進みが遅いように見えていました。ところが最近逆のケース、伝統的な企業でも進みが早いケース、ネット企業にも関わらず遅々として進まないケースの両方を見て、もう少し要因を深掘りしないとダメかな、と考えはじめています。
以下は経験に基づくフィクションで、実在する団体などとは関係がありません。念の為。
A社のネットビジネスのマネージャは営業出身ながら、長らくウェブビジネスを引っ張ってきて、その後チームを拡大しています。フォーカスするエリアや施策を具体的に定めて、あとはチームのメンバーが前のめりに成果を出すために取り組んでいきます。
こういうプロジェクトに関わると、外部のコンサルとして参加する私も、自分が助けるべきエリアと線引きが明確です。必要な手続きの後、データにすぐに触ることができるので、試行錯誤を始めることができます。
一方B社は新製品営業のデジタル支援という取り組みをスタートしますが、ふわっと「これからはデジタル」「社内のデータを統合」という感じでスタートします。会議では関係する部門の誰を呼ぶべきか、誰と誰が仲が良いかといった人事の話が延々と話されて会議が終わります。データについて議題を向けても「聞いてみます」と言ったままです。その割にはいろいろ社内説明用の資料作成のお手伝いをさせられたりします。
両社の違いは、会議に出てくるスペシャリストの割合の違いです。
A社にもプログラマやデータサイエンティストはいませんが、それでもウェブ広告や解析、Cookieやらコンバージョンといったことは理解している少人数のメンバーが中心で会議が進みます。
一方B社では会議にそういった人材がいません。技術に詳しそうな方は、情報システム経験者で、ソフト選定やサーバー選定には妙に熱心でも、データには一切触れません。それと、B社ではなぜか出てくる人数が多いのです。毎回会議を調整するのに苦労しますが、振り返ると議題も多かった割にデータにはさわれません。
たぶん、このまま行くと両社には数年後、相当の差が出るだろうなと思う次第です。
トップの掛け声という面では、どちらもしっかりしています。しかし、一目でわかるのは、人材の育成や採用にかける投資が、お金の面でも熱量の面でも圧倒的に違います。
ここで「スペシャリスト」と言っていますが、外部からネットの専門家を雇え、と言っている訳ではありません。日本企業の社員は優秀な方が多いので、比較的短期間でも、実践が伴えば学んで行く素地があります(一方で実践が伴わないと試験勉強で終わります)。
問題は実践の場を積極的に与えられるかです。事業側のマネージャ/リーダーが、取り組むエリアと施策を早く決めて開始できることが必要です。これができるのは内部で育ってきたリーダークラスの方が多い印象です。そして社内の協力体制をしっかり作っていく。それも実データと成果を重ねながらコミュニケーションが進みます。
あとは安易にローテーション人事を行わないこと。せっかく育った人材がデジタルマーケの現場から消えてしまうと、多くがやり直しになります。
欧米ではスペシャリスト人材が、デジタルマーケティングのプロジェクトを引っ張っています。IDCなどの調査結果を見ると、日本はアジアの中でも、とりわけ、このエリアでの人材投資が少ないようです。その代わり、ツールにはお金を出しています。
2020年代になりました。ここから5年ぐらいの間に、スペシャリストの採用と社内育成に向けて、人材投資ができるかどうか? 結構その差は大きいのではと考えています。
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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