コラムバックナンバー
アナリティクスアソシエーション 大内 範行
発信元:メールマガジン2019年5月15日号より
サッカーの話をします。
ヨーロッパのチャンピオンズリーグの準決勝で、稀に見る大逆転劇が展開され、大いに盛り上がりました。
バルセロナとリパブールの準決勝は、バルセロナホームの第1試合(ファーストレグ)が3-0でバルセロナ圧倒的勝利の状況でしたが、リパブールホームの第2試合(セカンドレグ)をリバプールが4-0で勝利、二試合合計スコア4-3の大逆転でリバプールがひっくり返すという奇跡がおきました。
この試合のリバプールのコーナーキックで面白い事件がおきました。通常コーナーキックは、皆が準備した上で「さあ蹴るぞ」と始まるのですが、バルセロナが文句を言ってダラダラとしているスキをついて、リバプールがコーナーキックをすばやく蹴り、ゴールを入れてしまいます。
「何が起こったんだ」と呆然とするバルセロナの選手たち。彼らはまったく準備ができていませんでした。コーナーキックを蹴ったのはアーノルドという選手。表面的には彼の咄嗟の機転が生んだ賢いゴールのように見えました。
しかし後日談として、その場面の裏に実は詳細な分析があった、という話が出てきました。
過去のバルセロナの試合の映像分析をした結果、バルセロナは相手チームのスローインやフリーキック、コーナーキックの場面で、たとえそれが正当なジャッジであっても、必ず文句を言ったりしながらダラダラしていることが発見されていました。
分析担当者はそのことに気が付き、セットプレーで途切れたその瞬間がチャンスだ、とチームに伝えました。
そのメッセージは、試合当日ボールボーイを担当するリバプールのアカデミーの少年たちにまで、対策として伝えられていました。
ボールボーイは試合中、常にすばやくリバプールの選手にボールを渡していましたし、選手たちはコーナーキックの場面で常にスキを狙っていました。
アーノルドは、自分もダラダラとするふりをしつつ、味方とのアイコンタクトですばやくフィールドにボールを送り込みました。
サッカーのデータ分析というと、パスや選手の位置、走行距離などの数値データを考えがちですが、実際には過去のプレーの映像分析で、選手の動きを見続けた中から、洞察が得られ、チームに共有されることも多くあります。
私たちアナリティクスの世界でも、顧客ひとりひとりの動きを、何人も追いかけて見ていく分析手法に取り組む人々がいます。また、カスタマーサポートのお客様の声や満足度調査のアンケートコメントをつぶさに見る人たちもいます。
そうした「個」をつぶさに見ていく分析は、お客様の気持ちを察する形で、接客の改善につながっていきます。
いささかこじつけですが、勝利を信じて顧客の行動を見続けた人に、分析の神が、洞察を授けるのではないでしょうか?
その洞察をチームにうまく共有し、チームの総合力でエクスペリエンスを改善していく。
顧客分析の神はディテールに宿る。
【参考記事】
Liverpool vs Barcelona: The ball boy who helped Reds complete a Champions League miracle
アナリティクスアソシエーション代表
個人情報保護士、専門統計調査士
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Googleなどを経験。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスとダブルクリック広告のマネージャなどを歴任。
2019年からはJellyfish 副社長 VP Analyticsとして参画し、2021年からはアユダンテ株式会社でCSOに就任。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてデジタルマーケティングのデータ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
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