コラムバックナンバー

今回はウェブアナリティクスのお話です。でも最後に少しW杯の話をつけています。

あるeコマースサイトで、モバイルサイトのトップページを変更しました。
これまでのトップページはごちゃごちゃしていたので、わかりやすくして、なるべく早く商品を見つけて買い物に至ってほしいと仮説を立てました。A/Bテストを重ねてトップページを新しいデザインに変更しました。
その際、高額商品があり購買に少し時間がかかるという想定もあり、目標は購入の手前、カートに入れた時点に置いて評価しました。

新しいトップページを全ユーザーにリリースした後、その影響度をチェックしました。
A/Bテストの通り、カートに入れるユーザーの割合は確実に増えています。よかったですね。
しかし、よく見ると、売上のデータが下がっています。
テスト改善をファネルに沿って順番に実施した人なら、きっと経験済みでしょう。ある前工程のステップを改善しても、その後工程の数字がかえって悪くなるという「ジレンマ」が発生しました。
よくある例では、集客が増えても売上が減る、あるいはフォームの入力項目を減らして遷移をよくしても、最終コンバージョンが下がるといった事態です。
とりあえずこれを「カートと購買のジレンマ」と名付けることにします。

チーム内でこのジレンマのデータを見ながら、ディスカッションをしてみましょう。
「カートに行っているのだからトップページからの遷移は確実によくなっているよね?」
「でも購買が減っているのは、いい加減な気持ちでカートに入れる人を増やしたってこと?」
「カートに早く行けた分、時間が増えたから、他のサイトを見に行く時間を作っちゃったのかな?」
「ドンキじゃないけど、ごちゃごちゃしたディスプレイで、商品がどこにあるか迷っている方が売上が上がるのかな?」
様々な意見が出ます。
いずれにしろ、新しくリリースしたページで売上が減る、という事態は深刻です。前のデザインに戻すべきか悩み始めます。

こんな事態、いったい皆さんならどうしますか?
ごちゃごちゃページ賛成派なら、前のデザインに戻すべきですね。ちょっと後ろ向きの決断ですが、背に腹は変えられません。
比較時間を増やしたという仮説なら、カート以降のページの課題を見つけて改善し続けるという前向きの決断もあります。比較に行く人を減らす工夫です。

もう一つは、そもそもセッション内で購買に至る人ばかりではない、というユーザー行動に着目した考え方もあります。
細かな設定は書きませんが、Googleアナリティクスにはセッションを超えた行動を順序指定をして見るセグメント設定があります。「シーケンス・セグメント」ですね。
セッションを超えたコンバージョンをシーケンス・セグメントを駆使して比較すると、売上が増えている、という結果が得られるかもしれません。

このように一つの悩ましい結果にはいくつもの見方、仮説がありえます。
ここからW杯の話になります。サッカーに興味がない方はごめんなさい。

日本代表の緒戦コロンビア戦は見事な勝利でスタートしました。しかし、分析好きは「勝ってよかったね」では終わりません。
コロンビアの選手が開始早々にハンドをして退場となりました。相手が10人になって日本チームが有利になったのに、その後かえって日本の方があぶなっかしく見えませんでしたか? あげくに前半のうちに一点を返されてしまいます。「おいおい大丈夫かよ?」とつぶやいた人も多くいたのではないでしょうか?
これはサッカーでは起こりがちな「相手が10人のジレンマ」です。

試合後には案の定、様々な分析記事が出てきました。私が見ただけでも4つの解釈がありました。
1)日本が不用意に攻めたのでコロンビアの狙いにはまった。思う壺だった
2)日本が攻めるのに合わせてコロンビアの監督が細かく手を打っていった。ペケルマン監督の知が上回った
3)あれはファルカオが守備をしていないようで絶妙のポジショニングをとっていたので日本のビルドアップを乱していたのだ
4)いやいや相手が10人になったのに日本は陣形を変えなかった。ファルカオを4-5名が囲んでいる日本が戦い方が未熟なのだ

なるほど。分析好きにはたまらない噛みごたえです。同じジレンマの場面に、いくつもの解釈があるのです。
ウェブの行動分析も、同じデータに様々な解釈がありえます。本当はユーザーが理由を話してくれればいいのですが、そういうわけにはいきません。できるだけユーザー行動に迫る深い分析をしていくしかないですね。

ちなみに例として挙げたトップページ変更の件は、セッションを超えた分析をした結果、購買の割合が増えていることがわかりました。モバイルの世界、「セッション」は分断されてしまっているので、分析データとしてはオワコンなのかもしれません。

起こった事象を振り返り、チームで話し合い、次に修正をかけていく。
こうした「ジレンマ」のデータと真剣に向き合うことで、チームが強くなっていきます。

がんばれ日本。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
主な会社経歴は、日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google、コニカミノルタジャパン。
Googleでは、2011年から7年間、Googleアナリティクスの技術サービス・マネージャとしてアナリティクスの普及をリードした。コニカミノルタジャパンでは、デジタルマーケティング戦略部の部長として、事業会社のデジタルマーケティング戦略を支援しつつ、ソリューション戦略をリードする役目を担っている。
その他、2000年には自らSEO企業を創業、また数々のSEOやアナリティクスの書籍も執筆してきた。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM検索連動型キーワード広告 Web担当者が身につけておくべき新100の法則』。
2008年に代表として協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」を設立し、現在に至るまで10年以上、その企画運営を行っている。2015年6月に協議会アナリティクスアソシエーションから『新しいアナリティクスの教科書』(インプレス)を出版

主な講演

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