コラムバックナンバー
株式会社Rejoui 菅 由紀子
発信元:メールマガジン2022年3月23日号より
今年も春を迎え、東京都の標本木の桜も開花しました。新たな場所や立場や変化のときを迎える方も多くおられると思います。始まりの季節に際し、データ分析のスキル習得を始めたいという方も多く、私自身はそういった機運が高まっていることをとても嬉しく感じております。そして、データ分析のスキル習得に際し「どのような方がデータ分析に向いているか?」という質問をよく受けます。これについてはいくつかありますが「論理思考である人」「思考を厭わない人」であるとお答えしています。
データ分析には論理思考とそのベースとなる思考体力が必要であり、その思考体力を鍛えるのには、多様なことに関心を持つこと、対立関係にある事柄を意識すること、フェルミ推定的なことを考えてみることなどが効果的であると以前から提言してきました。フェルミ推定のプロセスはデータ分析のプロジェクトにおけるプロセスとほぼ同じで、とくに分析のスコーピングというスキルを鍛えることができるものです。
今回はそのなかでもフェルミ推定について、もう少しお話ししてみたいと思います。
フェルミ推定とは「東京都内に桜の木は何本あるか」など、なかなか正解を知ることの出来ない、大規模に調査して初めて得られるような数量を、論理的思考能力をベースとして概算するというものです。桜の例のように身近なものであれば、パッと思いつくアプローチだけでも「東京都をある面積単位で区切り、単位面積あたりで何本あるかで算出できるか」「東京都に八丈島などの島しょ部を含めるか?」「桜には河津桜や八重桜などを含めるか?」などが思い浮かぶのではないでしょうか。
「課題の定義」に不可欠な”観点の整理”
東京都内にある桜も様々です。品種による違いや桜によく似た花もあります。「桜の木」の分類を考えてみると、品種による違い、自生/野生の違い、生息している地域による違いなど様々な”観点”が存在します。「東京都内」を捉えてみるとどうでしょうか。都心部とそれ以外、23区とそれ以外、島しょ部、住宅地と商業地など、こちらも同様にいくつもの”観点”が存在します。「東京都内の桜の木」としては、これらの観点を組み合わせて様々なアプローチが検討できそうです。この”観点”をいくつ持てるかによって、結果は当然ですが異なってきます。
いかに”MECE”に観点を持てるかは対象への理解・興味関心
観点をできるだけ沢山、理想をいえばMECEに持つことができれば推定はよりアプローチしやすく正確性を増します。これには、その対象となる事象、あるいは類似した事象への理解と興味関心が影響してきます。データ分析の対象テーマについて理解を深めるのと同じです。たとえ畑違いのことであっても、類似したものを自分の引き出しからアプローチできれば良いですが、実はそのためには「自分自身はこれには詳しい」「これについては好きだといえる」と思えるものが1つでもあるとやりやすくなります。また「箇条書きにしてみる」「カテゴリを3つ挙げてみる」「2×2のマトリクスにあてはめてみる」といった構造化も有効です。
ベースとなる数字の把握は検索だけでは不十分
観点が整理できれば、今度はその観点ごとの統計量や数値を探すことになりますが、今度は「いかに正確な数字を手に入れることができるか」が推定において重要になってきます。政府や自治体による統計が取得されているものであれば調べれば済みますが(と申し上げつつ、不適切な統計もあるので要注意ではあります)、容易に手に入れられない数値の場合はどうでしょうか。この場合は、その数値が大きくは外れていないという感覚、いわゆる「勘どころ」が重要になってきます。これには、世の中一般に広く知られた代表的な数値や世の中の事象、世相、時には教養とされるものも把握していると大きく外すことはないでしょう。また、一方で統計や情報を鵜呑みにしない姿勢も忘れずにいなければなりません。
たった少しのことですがビジネスパーソンとしてたいへん重要なエッセンスがフェルミ推定の実行には潜んでいます。ちょっとした時間を有効活用した思考のトレーニング、ぜひ行ってみて下さい。
私がここ最近で考えているのは「東海道新幹線に乗ると見える727 COSMETICSの看板は、東京-新大阪間でいくつあるか」というテーマです。桜も好きなテーマですので、どこかでしっかりと推定してみたいですね。
株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。
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