コラムバックナンバー
株式会社Rejoui 菅 由紀子
発信元:メールマガジン2021年3月31日号より
データを取り扱う仕事をしていて問われるのは、何よりも「仮説思考」であると思っています。データが示す「事実」から、データが得られた背景や取得方法などを考慮した上で「何が起きているか」を見抜き、そこから次なる検証方法や検証計画、ビジネスとしての解決策を提示していくことがビジネスパーソンには求められます。もとより、データ解析・データ利活用の「データサイエンスのサイクル」は、下記のような「サイクル」で実行する必要があります。
課題抽出と定式化 → データの取得・管理・加工 → 探索的データ解析 → データ解析と推論 → 結果の共有・伝達 → 課題解決に向けた提案
結果の共有・伝達から課題解決に向けた提案に至るところが最も重要であり、解析した事実を列挙したのみでは「分析」とは言えません。そこから導かれる「考察・仮説」、そのさらなる検証方法や課題解決方法を提示することがデータ活用の本質に求められるものです。
ところが、データの取得・管理・加工や、解析、モデリングなどの「作業」がスムーズに行えるようなツールやソフトウェア、APIが増えた昨今「分析者がおのずから自分ごととして分析課題を捉え、考え抜く」という姿勢が忘れ去られようとしているのではないかと感じるときがあります。集計したのみ、分析のソフトウエアでモデリングを実施したのみでは、価値ある仕事とは言えません。AIや機械学習のライブラリがいかに便利になろうとも「どうしてそのような結果が導かれるのか」「何が起きた結果なのか」を考えるのは、いくらキカイの補助があったとしても意思決定するのは人間です。しかし、そのためには徹底した「仮説思考」が必要で、Why So?とSo What? をくりかえし思考できる体力が必要です。
では、どのようにすれば「思考体力」が鍛えられるか。いくつか方法があるとは思いますが私が心がけているのは下記の3つです。
– 多様なことに興味関心を持つ
– 「反対に」を必ず考える(ポジティブ・ネガティブ両面から考える)
– 日頃からフェルミ推定的なトレーニングを行う
多様なことに興味関心を持つ
分析しようとする課題に対する理解や、ビジネス背景・ドメイン知識は分析者に必須で問われるスキルですが、併せて持っておきたいのが「あらゆる業界にそれなりに適応できる」というスキルです。何か1つ、2つ知っておくと横展開はしやすくなりますが、得意な領域から派生した場合の活用領域を幅広く知っておくと良いと思います。引き出しが増えやすくなります。
「反対に」を必ず考える(ポジティブ・ネガティブ両面から考える)
物事は何事も表裏一体であることが多いです。良い結果が得られている反面、喜ばしくない結果が得られていることもある。データが示す結果から何か仮説が思い浮かんだら、私はノートの半分にそれをメモし、ノートを半分に区切って反対側に「反対に」と頭の中で唱えながら反対の仮説を思い浮かべるようにしています。もちろん「反対に」の仮説が出てきた瞬間「ありえない」仮説であるケースもあります。多様な視点を持つことと類似するところもありますが、ポジ・ネガ両方で考えることは分析のみならずあらゆるビジネスシーンで役立ちます。
日頃からフェルミ推定的なトレーニングを行う
これは無意識にやっておられる方も多いのではないかと思います。私もその一人でしたが、友人のコンサルタントがこれを日常的に行っていると聞いて最近は真似するようにしています。フェルミ推定とは「東京都内に蟻が何匹いるか」など、なかなか正解を知ることの出来ない数量を論理的思考能力を頼りに概算するというものです。いま目にするもの何でも良いのです。数量として捉えたらいくつになるのか?を自らに問うことで「どのような情報からそれが推定できるか」という、データ分析プロジェクトにおいてはデータの選定を行うフェーズに類する体験をすることができます。このとき、推定に使うための情報をいかに挙げられるかということが、結果として思考体力につながってくると思っています。
また「データから特徴やパターン・法則性を見出すだけでなく、そこからしっかりと考察・仮説を携え、検証計画を作り、ビジネス課題に答えを出す」プロフェッショナルとして在るには、時に気分転換のための遠出も必要かもしれません。現況ではなかなか実現も出来ませんが、そんなときにおすすめなのは「読書」であると私は思います。読書は思考体力を鍛え、言語化する能力も鍛えてくれる素晴らしい体験であると思っています。次回は「言語化」について書いてみたいと思います。
株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。
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