コラムバックナンバー
株式会社Rejoui 菅 由紀子
発信元:メールマガジン2020年1月15日号より
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
2020年は5Gの提供が始まる年です。取得できるデータが劇的に増えることから、分析者は備えておかなければならないことがたくさんあります。それについては昨年の6月にコラムで触れていますので、是非ご参考ください。
このような変化もあるなかで、今回のコラムでは言葉として浸透してきたなと感じる「People Analytics (ピープルアナリティクス)」についてお話ししてみたいと思います。
People Analytics とは、企業や組織で働くスタッフ・社員や組織に関連する「データ」を収集、可視化・分析し、組織づくりに生かす分析全般のことを指します。以前「HR領域のデータ分析」としてよく用いられるデータ、最も多かった事例などをご紹介しました。それから1年半ほど経ちますが、その頃すでに人事領域でのデータ収集・精査・結合などに取り組んでいた企業が、現在People Analyticsに活発に取り組み始めたことから、言葉自体も浸透してきたのではないかと感じています。今回のコラムでは、People Analyticsの取り組みにおいて代表的なものをご紹介したいと思います。
People Analyticsといっても、その活用のしどころはHR/人事の担当者、経営層がどの部分の課題を解決したいのか、といったことによって異なります。今回は「HR/人事業務担当職務」別に整理をしてみました。
■採用 ー 採用を効率的に / より良い候補者を採用したい
この領域で主に行われる解析は、新卒人材の採用・中途採用のシーンで今後の社内プロジェクトや経営方針にマッチする人材を候補者から見出すものです。
この領域は以前よりデータ活用が活発で、人材紹介会社の仕組みを活用したり、複数の人材採用サービスを横断的につなぐことのできるATSと呼ばれる採用管理システムを活用する企業は多くありました。ここ1~2年は、そういったシステムを用いて得られたデータと各社が内部で保有しているデータを結合し、人事担当者が自ら分析を行うというケースも出てきました。最もよく行われるのは「ハイパフォーマー」と呼ばれる方と似ている候補者は誰かという分析ではないかと思います。よく用いられるデータとしては、レジュメや適性試験などのデータです。
■人事企画 ー 組織編成・人材配置
この領域では、特定のプロジェクトにふさわしい人選を行いたい、組織改編に際して配置を最適化したい、という目的が多いです。また、この領域はタレントマネジメントとも言われ、シミュレーション出来るツールが多く提供されていることから、人事の担当者が取り組みやすい領域でもあります。活用されるデータとしては、過去に携わったプロジェクトや評価の情報、適正診断や勤怠などのデータが多いかと思います。
■労務管理 ー 社員のパフォーマンスを最大化したい / 効率よく働けるよう支援したい
「働き方改革」によって最も注目されたデータ利活用の領域はここではないかと思います。特に代表的なものとしては「メンタルヘルスの罹患者を未然に検知したい」「社員のパフォーマンスが改善するように促したい」などが挙げられます。分析には勤怠情報や属性情報、ヘルスケアのデータなど多種多様なデータが活用されます。
■教育・研修 ー 誰にどのような研修が必要か?
スキルの育成や企業カルチャーの浸透のために分析を実施したいというニーズです。「どのスキルを、いつ、誰に」を分析することで見出せれば、組織が大きく成長することにつながります。ただしこの領域は、人事担当の方が取り組もうとする例は未だそんなに多くないように感じます。
■全体統括・経営としての役割
人事部門全体、そしてさらに上の経営層においては企業に対するエンゲージメントに何が寄与するかを知りたい、退職しそうな社員を予測したい、というニーズが最も多いです。この領域では行動履歴データと心理的データを組み合わせて分析するケースが多く、特に心理的データはいかに取得するか、人事制度や社のカルチャーを理解して精緻に設計するスキルが求められます。
以上、People Analyticsを人事業務の役割ごとにまとめてみました。上記は代表的なもので、用いるデータは企業・組織によって様々です。目的の整理と分析のプロセスを意識し、適切なデータを用いるための素地ができあがりつつある企業が増えたことは、働く側にとってもたいへん望ましいことではないかと思います。
2004年株式会社サイバーエージェント入社。2006年3月に株式会社ALBERTに転じ、データ分析業務を担当。顧客行動分析やDMP構築アドバイザリー等多数のプロジェクトを担当。
2016年9月にHR&Learning 分野専門の分析会社 Rejouiを設立。
アナリティクスアソシエーションプログラム委員、データサイエンティスト協会スキル委員。
株式会社Rejoui 代表取締役をつとめながら関西学院大学大学院ビジネススクールの非常勤講師としても活躍中。
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