コラムバックナンバー

今月a2iメンバーがピックアップした記事の中から、マーケターやアナリストが「DEEPな視点」で再考すべき5つのトピックを厳選してご紹介します。

2026年8月は、「生成AIを使ってデータ分析をする」というテーマにおいて、大きな潮目の変化が感じられた1か月でした。
「AIに質問すればすぐに改善施策が出てくる」といった初期の幻想や、プロンプトの小技を競い合うフェーズは終わりました。
現在の現場の関心は、
「自社の分析業務やグロース施策のワークフローにAIをどう組み込むか」
「実際に自律ループを回すとどこで破綻するのか」
「人間のアナリストは何を判断すべきなのか」
という点へとシフトしています。そこにあるのは、極めて生々しく泥臭い『実装と運用のリアリティ』です。

今月は、現場での試行錯誤と失敗から得た貴重な知見を深掘りし、AI時代におけるデータ分析の実務とアナリストの役割を再考します。

【1】【エージェント開発と運用】エージェントは「作って終わり」じゃない ── ADKで会話分析エージェントを自作してみた

Web上のチャット画面で単発のプロンプトを投げる段階から一歩進んだ実践例です。Agent Development Kit(ADK)などのフレームワークを用いて、BigQueryと連携するデータ分析エージェントを自らコードで構築・運用しています。

◆詳細記事
エージェントは「作って終わり」じゃない(前編)— ADKで会話分析エージェントを自作してみた(kazkida.com)

◆DEEPなチェックポイント
この記事が示唆している最も重要な点は、AIエージェントを業務に導入する際、最大の難所は「プロンプトの作成」や「最初の構築」ではなく、その後に続く「運用と精度の維持」にあるということです。

UI上で提供される汎用のAIツールを使うだけでは、自社固有のデータ構造やビジネスロジックに対応しきれず、結局は手動での修正作業に戻ってしまいがちです。コードベースでエージェントを構築することで、BigQueryなどのデータ基盤と直接対話し、複雑な条件分岐やツール呼び出しを柔軟に制御できるようになります。

しかし、いざ稼働させると、予期せぬSQLクエリのエラーやコンテキスト肥大化による精度のブレ、業務要件変更に伴うプロンプトの陳腐化などが次々と発生します。従来のソフトウェア開発以上に、泥臭いメンテナンスが必要になるのです。「エージェントは作ってからが本番である」という視点は、これからAI導入を進めるすべての組織が肝に銘じるべきポイントです。

【2】【自律運用の失敗と教訓】AIに改善ループを回させて分かった「壊れた6つと直し方」

SEO記事の分析・改善・法令チェック・適用・効果測定・ロールバックという一連のサイクルをAIに自動実行させた、32日間の本番稼働の記録です。その中で実際に発生した6つのトラブルとその対策を、生々しく記録した実験レポートです。

◆詳細記事
SEO記事をAIに自動改善させた32日間で、壊れた6つと直し方(Zenn)

◆DEEPなチェックポイント
「生成AIに記事を書かせる」こと自体は最も容易です。真に困難なのは、「生成された内容の品質を評価し、悪化した場合に安全に戻し、書いてはいけないことを書かせないこと(ガードレール設計)」です。この指摘は、データ分析やマーケティング自動化の全領域に共通する本質と言えます。

記事内で報告されている失敗例は示唆に富んでいます。

  1. 安全のために設けたロールバック判定が重複カウントにより誤作動し、パイプライン全体を止めてしまったこと。
  2. 改善余地が大きい記事を優先するロジックにした結果、1本の記事に27回も改訂が集中してしまい、唯一の手動差し戻し案件になったこと。
  3. GA4起点の改善提案ロジックの条件が厳しすぎて、エラーも出さずに32日間1件も提案を出していなかったこと(動いていることと機能していることは別であるという教訓)。

AIに自律的なループを任せる場合、どこまでを機械に任せ、どの段階に人間の目視やクールダウン期間、しきい値検証といった安全装置を挟むべきでしょうか。その「境界線の設計」こそが、エンジニアやマーケターの腕の見せ所となります。

【3】【分析の型化】GA4×AIは「集計して」で終わらせない ── 今日から試せる8つの型

GA4のデータをAIに渡して分析する際、「集計の代行」にとどまらず、現状把握・要因分析・設定点検・施策の壁打ちという4領域・8つの具体的なパターンに昇華させる方法を解説した実践記事です。

◆詳細記事
【ウェビナー振り返り】GA4×AIは「集計して」で終わらせない|今日から試せる8つの型(JADEブログ)

◆DEEPなチェックポイント
GA4のCSVデータをチャットAIに貼り付けて「分析して」と頼んでも、返ってくるのは表面的な数値の要約ばかりで施策につながらない、という悩みを抱える実務者は少なくありません。

本記事の優れたアプローチは、AIに対する指示を「集計」ではなく「思考の補助(壁打ち・仮説出し・異常値検知・設定点検)」として構造化している点です。さらに、MCP(Model Context Protocol)などを活用してデータ基盤とAIを直接つなぐ手法も紹介されています。加えて、AIに回答を出力させる際に「どのような集計ロジック・計算式を用いたか」を同時に出力させる設計も推奨しています。

AIの出力結果をブラックボックスにせず、人間が検証可能な状態にしておくこと。そして、単なる数字のまとめではなく「なぜその数字になったのか」「次に何を試すべきか」という仮説の壁打ち相手としてAIを位置づけることが、分析の質を大きく引き上げます。

【4】【アナリストの存在意義】「自分ではもう分析しない」ってホント? Web解析の未来とアナリストの価値

生成AIの普及によって、Web解析の業務プロセスやアナリストに求められるスキルの定義がどう変わっていくのか、業界の先駆者へのインタビューを通じてアクセス解析の将来像を描いた記事です。

◆詳細記事
「自分ではもう分析しない」ってホント? Web解析のレジェンドに10問10答!(Web担当者Forum)

◆DEEPなチェックポイント
SQLの記述やデータの集計、ダッシュボードの作成といった「作業」は、AIによって急速にコモディティ化しつつあります。では、作業から解放された人間のアナリストは何に価値を発揮すべきなのでしょうか。

本記事が提示する答えは明確です。それは「ビジネス課題の正しい定義(適切な問いを立てる力)」「事業や組織のコンテキストをデータに反映させる翻訳力」、そして「AIが導いた複数の選択肢からリスクを引き受けて意思決定する力」です。

どれだけAIが進化しても、自社のビジネスモデルの力点や、組織固有の背景、顧客との長期的な関係性といった暗黙知を完全に理解することはできません。集計作業者から「AIを使いこなして事業の意思決定を後押しするパートナー」へと自己変革できるかどうかが、アナリストの分水嶺となっています。

【5】【組織への定着】個人のプロンプトから「社内利用1位の仕組み」へ

個人の思いつきや偶発的な出会いから始まったAI活用の工夫(Skill)が、試行錯誤と改善を経て組織全体で最も利用されるツールへと成長していったプロセスを紹介する登壇資料です。

◆詳細記事
ふとした出会いで生まれたSkillが、社内利用1位になるまで(Speaker Deck)

◆DEEPなチェックポイント
AI活用の推進において、多くの組織が「一部のアーリーアダプターだけが使っていて、全社に広がらない」という壁にぶつかります。

この資料で語られているのは、ツールを一方的に導入するのではなく、現場の業務フローの中にある具体的な痛み(面倒な作業や確認コスト)に徹底的に寄り添うアプローチです。小さな成功体験を積み重ねていく、泥臭いプロセスがそこにはあります。

使いやすいインターフェイスの工夫、利用者の声を取り入れた迅速なフィードバックループ、そして失敗を恐れずに改善を続けるカルチャーの醸成など、学びは多岐にわたります。AIを個人の便利ツールで終わらせず、組織の競争力へと転換するための実践的なヒントが詰まっています。

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今月は「生成AI×データ分析の現場のリアル」というテーマで5本のトピックをお届けしました。

今月取り上げたトピックに共通しているのは、AI分析の成否を分ける要因が、最新モデルの性能そのものではなく「人間とAIが協働するためのワークフローと仕組みをどう設計するか」にあるという点です。

AIをただの集計代行として使うのか、それともビジネスの意思決定を加速させる強力なパートナーとして組織に組み込めるのか。いま私たちは、その分岐点に立っています。

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【a2iからのお知らせ】

まさに今月のメルマガで取り上げた「生成AIを使ったデータ分析の現場のリアル」「自動化の壁とワークフロー設計」について、先駆者たちが本音で語り合うリアルセミナーを開催します!

a2i DEEP Connection セミナー
「生成AIのデータ分析 現場のリアルとこれから」

日時:2026年9月15日(火)15:00~17:40
会場:インプレスグループ セミナールーム(東京・神保町)

【登壇者・プログラム】
第一部:エキスパートによるショートセッション

  1. 小川 卓 氏(株式会社HAPPY ANALYTICS)
    「GA4×生成AIで誰でも成果を出せる仕組みの作り方」
  2. 井上 洸太朗 氏(株式会社LIFULL)
    「LIFULL HOME’Sが体験した「3つの壁」、AIワークフローを組織に根付かせる現場のリアル」
  3. 西 正広 氏(株式会社月曜日のトラ/株式会社MOLTS)
    「データ分析支援会社のデータ分析の業務プロセスはどう変わったか?AI Firstなデータ基盤と自動化」

第二部:ディスカッションセッション
「生成AIのデータ分析 現場のリアルとこれから」

  • 先駆者はなぜそのAIを選んでいるのか?
  • AI Readyなデータ基盤と人間とAIの役割分担
  • 組織現場での導入障壁と解決策
  • (※アーカイブ配信なし・会場限定)

第三部:名刺交換&意見交換会(ラウンジでの交流会)

AI分析を「絵に描いた餅」で終わらせず、現場で成果を出すための生々しい知見を直接聞ける絶好の機会です。ぜひご参加ください!

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