コラムバックナンバー

本日3月8月は国際女性デー、女性の社会的・政治的・経済的な地位を強化するために世界中でイベントが行われています。データサイエンス、Technologyの領域でも多くのイベントが実施されています。私も3月5日にデータサイエンス領域における女性活躍推進の活動であるWiDS(Women in Data Science)のシンポジウムを主催しました。この活動も国内で始めて4年目、少しずつ手応えも感じています。今日は「なぜデータサイエンス領域にGender Parity、多様性の推進が必要なのか」について論じてみたいと思います。

実は「多様性の推進がなぜ必要なのか」の理解が日本ではまだまだ足りていないと思います。また、多様性推進というとまず女性活躍といわれることがなぜなのか -ジェンダーの問題に数値的な格差が大きいこと、世界中で男女間の給与格差や管理職比率の格差があることが報告されていること、女性活躍が進むと他の多様性推進もしやすいということが理由として挙げられますが、このこともあまり理解がされていません。そして、データ×AIの領域においてGender Parityが保たれていないことによる不利益も認知がされにくいと思います。私が考える不利益とは、下記の3つです。

(1)AIモデルの結果に偏りが生じる
AIのモデル開発のシーンなどにおいて、偏りのあるデータセットが使用される(たとえばアノテーション [データに正解をインプットしたり、情報のタグ付けを行う作業] 時に多数派の価値観だけでデータが作成されてしまう)と、これを用いた機械学習モデルは男性中心のバイアスを持ち、女性に対して不当に差別的な意思決定を下す可能性が生じます。Amazonの採用のAIの例が最も有名ですが、翻訳ソフトの主語の偏りや、住宅ローンやクレジットカードの与信の審査などもよく知られています。過去に人類が歩んだ歴史として蓄積されたものに、あらゆる偏りは存在していますが「果たしてその偏りは公正なのか」という視点は忘れずにいたいものです。

(2)他方のメリットが見逃されてしまう
もし万人に利用する可能性のある製品開発のシーンでデータ解析の結果を用いて行う場合、女性が製品開発チームの一員として参加していないと女性特有のニーズや要望を反映した製品が開発されない可能性が生じます。本来であればその製品の成功が見込めた領域において不利益が生じることになり、効率的ではありません。あらゆる視点からの開発はイノベーションに不可欠であり、その視点の確保には多様性のある組織で臨むのが理想的です。

(3)キャリアの機会への影響
あるセグメントのみポスト・地位やキャリアアップの機会を持っている場合、少数派のキャリア形成のチャンスが制限されてしまうことになりかねません。「このポストに女性が就いたことはない」「○○大学出身者は採用の前例がない」といった振る舞いは、データサイエンスの業界全体の進歩に悪影響であることは間違いありません。(2)の理由にも通じますがデータサイエンスのプロジェクトは多様な組織で行うと良く、キャリア形成・キャリアアップのシーンにおいてはより意識されるべきことです。

一方で、データ×AIを用いた課題解決は、今やすべての領域において求められています。多様性のある組織で課題解決に臨むと成果につながるという事例は世界中で多く報告されています。総合的に見て、ジェンダーパリティの欠如は、データサイエンスの世界のみならずイノベーション推進の全体に悪影響があります。そのことについて、今日は世界中で数多のイベントが行われており、あらゆる層の方々にとって勇気づけられる1日であるはずです。国際女性デーを心からお祝いいたします。

コラム担当スタッフ

菅 由紀子

株式会社Rejoui
代表取締役

株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。
統計ソフトRやPythonを活用した分析入門講座をはじめ、学生、企業、官公庁へ向けた統計・データサイエンス学習講座を提供。日本行動計量学会、WiDS TOKYO @ YCU、日本RNAi研究会等、数々の学会およびシンポジウムに登壇。自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、2021年度日本統計学会統計教育賞受賞。

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